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2011/06/03

「鳩山氏と自分の会話は紙に書いてある通りで、それ以外は一切話はしていない」

菅・鳩山両氏 食い違う退陣の時期







 不信任案をめぐる騒動は一体なんだったのでしょうか。今度は「ペテン師」という言葉まで飛び出す対立となっています。

 「口できちんと約束したことは守る、当たり前の話です。それができなければペテン師です」(鳩山由紀夫前総理大臣)



 「ペテン師」・・・前の総理から現在の総理にぶつけられた言葉が3日、波紋を広げました。2日、菅内閣の退陣で合意したとされる2人。ですが、退陣の時期をめぐって認識は完全に食い違っているのです。

 「(鳩山)前総理との会談では、いったい『退陣』という言質は、発言は出たんですか、出なかったんですか」(みんなの党 小野次郎参院議員)
 「何かをお約束するということは、そういう約束をしたのかということで言えば、そういうお約束にはなっておりません」(菅直人総理大臣)





 2人の認識の違いはこうです。鳩山氏は「復興基本法案と2次補正にめどをつけた段階で退陣」、つまり、「今月中にも退陣」という認識。一方、菅総理。2日夜の会見で述べたのは「原発が冷温停止になることがめど」。冷温停止は来年1月までの目標とされ、年明けまでの続投を示唆したともとれます。



 「突然言葉をひっくり返して、そんなことを言った覚えがないみたいな話になったら、そういう人間だったとすれば不信任案に賛成しておくべきだったと思います」(鳩山由紀夫前総理大臣)


 一方の菅総理。「ペテン師」とまで批判されても、震災復興などに当たる意欲を改めて示しました。

 「ペテン師」という言葉がぶつけられるほど大きな食い違いが出ていることに、枝野官房長官はこう述べました。

 「現在の状況は、国民の皆さんに対する政治不信を高める状況に なっていると言わざるを得ない。大変に残念に思っています」(枝野幸男官房長官)

 広がる政治不信。菅総理は3日夜、退陣の時期を重ねて問われ、こんな言葉を残しています。

Q.震災復興にかける思いは強いか?
 「これだけはね、何としても頑張ってやらないと」(菅直人総理大臣)

 事実上、“死に体”とさえ言われ始めた菅総理。野党は参議院での問責決議をちらつかせています。本人が意欲を示す続投は本当に実現するのでしょうか。(03日23:37)










鳩山氏「ペテン師」枝野氏「専権事項」退陣時期で混乱
2011/6/3 11:30 (2011/6/3 13:29更新)
 退陣する意向を表明した菅直人首相が来年1月ごろまでの続投に意欲を示したことを受け、民主党内で3日、対立が続いた。鳩山由紀夫前首相は「ペテン師だ」と批判し、早期退陣を要求。執行部刷新のための党両院議員総会の開催を求めた。枝野幸男官房長官は「(退陣時期は)まさに首相の専権事項だ」と突っぱねた。

 鳩山氏は都内で記者団に「政治家同士だから約束したことを守るのは当たり前だ。できないならペテン師だ」と非難。「人間としての基本にもとる行為をするなら党の規則の中で首相に辞めてもらう」と述べた。党執行部が内閣不信任決議案に賛成した松木謙公、横粂勝仁両氏を除籍(除名)処分したことには「冗談ではない」と批判した。

 鳩山氏は2日の首相との会談で(1)東日本大震災の復興基本法案の成立(2)2011年度第2次補正予算の編成にメドを付ける――の2点を終えた段階で首相が退陣することで合意したとの認識だ。

 鳩山氏は3日、自らを支えるグループの議員約25人と協議し、両院議員総会を執行部に要求する方針で一致した。党代表でもある首相の代表解任決議案の提出を検討中だ。両院議員総会は党大会に次ぐ党の議決機関で、両院議員総会長は党所属国会議員の3分の1以上の要請があった場合、速やかに招集しなければならない。

 首相は同日の閣議で「今国会は事実上の通年国会になる」と表明するとともに、第2次補正予算の編成準備を指示した。退陣時期を巡って鳩山氏と食い違いがあることには「鳩山氏と自分の会話は紙に書いてある通りで、それ以外は一切話はしていない」と説明した。

 この後の参院予算委員会で首相は震災復興や原発事故の収束に向けて「これまで以上に全力を挙げて取り組む。与野党を超えて協力をお願いする」と述べ、続投へ改めて意欲を示した。民主党の舟山康江氏への答弁。

 閣議後の記者会見では閣僚から退陣時期を巡る発言が相次いだ。松本龍防災担当相は「6~7月ではないか」と述べ、早期退陣の見通しを示した。与謝野馨経済財政担当相は「一定のメドがついたら辞任するとはどこにも書いていない」と強調。海江田万里経済産業相は「(首相が触れた)原発の冷温停止の目標は最短で事故発生から6カ月、最長では9カ月だ」と来年1月までの政権継続の可能性に言及した。

 自民党の谷垣禎一総裁は総務会で「死に体政権に協力はできない」と明言し、復興基本法案以外の協力には否定的な考えを示した。小池百合子総務会長は記者会見で「詐欺という印象だ」と断じた。民主党内では「不信任政局」の調停役となった鳩山氏について「混乱を拡大させた鳩山さんも責任を取ってほしい」などと批判が広がっている。







再燃した「菅降ろし」 狡猾・首相の延命戦略 閣内からも火の手
2011.6.4 01:15
 菅直人首相に早期退陣する気がさらさらないと知った鳩山由紀夫前首相の怒りはすさまじかった。

 「私の発言でみんな我慢して政党人として行動してくれたのに。不信任案に賛成すべきだった…」

 3日午前、東京・田園調布の私邸前に姿を現した鳩山氏に笑顔はなかった。直後の夕刊フジのインタビューではさらに辛辣(しんらつ)だった。

 「初めからだます気だったとすれば許し難い」「人間としてあるまじき態度だ」「首相で国難は乗り切れない」「退陣しないなら党規約を変えてでも交代させる」

 ただ、周到に延命戦術を練った首相に比べ、鳩山氏の「脇の甘さ」は否めない。

 5月31日夜、鳩山氏は公邸で首相との直談判で退陣を迫った。仲裁に入ったのが、平野博文元官房長官と北沢俊美防衛相だった。信頼する平野氏に確認書の原案を見せられた鳩山氏は「退陣という文言を入れてほしい」と求めたが、やんわり拒否された。

 「そんなもん書かんでええですやろ。身内の話やんか…」

 2日午前、鳩山氏は「文書ができたので来てほしい」と官邸に呼び出された。鳩山氏が「第2次補正予算案の編成のめどがついたら身を捨てていただきたい」と求めると、首相は平身低頭に「分かりました。合意します」。それでも署名には「身内なんだから信用してください」と応じなかった。

だが、代議士会での退陣表明は「一定のめどがついた段階で若い世代に責任を引き継ぎたい」と曖昧だった。一抹の不安を感じた鳩山氏は電話で念押しした。

 鳩山氏「いつまでに辞めていただけるんですか?」

 首相「あなたと会談で話したことに尽きる。それ以上でもそれ以下でもない…」

 その数時間後、首相は記者会見で早期辞任をきっぱり否定する。鳩山氏が怒るのも無理はないが、実は平野氏は1日夜、仙谷由人官房副長官や北沢氏らと入念に打ち合わせていた。つまり確認書に関わった人物はほとんどが首相の“協力者”だったのである。

   × × ×

 3日の参院予算委員会でも首相は「文書以上の約束はない」と開き直った。強気の裏には首相なりの勝算があった。

 国会には同一会期に同一案件を審議しない「一事不再議」の原則がある。12月まで会期延長すれば内閣不信任案は再提出できない。野党は反発するが、復興の「大義」があるだけにいつまでも審議拒否はできない。復旧が進めば解散カードも行使しやすい。加えて内閣改造や連立をちらつかせれば延命は十分可能ではないか-。

 たとえ鳩山氏が党所属議員の3分の1の署名を集め、両院議員総会を開いても党規約に党代表のリコール規定はない。党規約を改定し、新代表を選んでも「首相が代表を兼ねる必要はない」とつっぱね、首相に居座ることはできる。

 「鳩山氏は御しやすい」とみる首相にとって残る危険分子は小沢一郎元代表だけ。首相は不信任案否決直後、岡田克也幹事長にこうささやいた。

 「小沢を除籍処分にしろ」

 岡田氏はすぐ実行に移したが、輿石(こしいし)東(あずま)参院議員会長が「それならば俺はバッジを懸けて戦う!」と抵抗したため断念した。それでも秋まで政権を維持すれば小沢氏の政治資金規正法違反事件の公判が始まる。もはや動けまい-。

   × × ×

 ところが、首相のもくろみは崩れつつある。あまりに狡(こう)猾(かつ)な手口は、不信任案を初めから否決するつもりだった中間勢力までも不信感を強めたからだ。早期退陣論は閣内にも広がった。

 口火を切ったのは松本龍環境相兼防災担当相。3日の記者会見で「一日も早く退陣した方がいい。(退陣は)6月いっぱいだというのが私の頭にある」と断じた。

 松本剛明外相も「6、7、8月というのが常識的な考え方ではないか」と述べ、新首相が9月に訪米すべきだとの考えを示した。玄葉光一郎国家戦略担当相は「首相は地位に恋々とする方ではない。必要なことはスムーズな移行だ」と自発的に退陣を促した。

 ある党幹部はこう嘆いた。

 「せっかく不信任案を否決したのにオウンゴールしているよね」