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2011/06/08

閣僚ポスト欲しさに、与党に迎合することを『みっともない』と切り捨てていた。小沢氏についても、『敵にしておくと対立政党のトラブルメーカーになる。(連立などで)引き入れると煮え湯を飲まされる』

大連立“座礁”寸前!変人「小泉」始動で谷垣ナヨナヨ…2011.06.08

 民主党と自民党の大連立構想が座礁寸前だ。菅直人首相の退陣をめぐって民主党内の混乱が続く中、自民党内では「民主党新代表が誰になるかも分からないのに、政権参加を前提とすべきではない」という慎重論が大勢となってきたのだ。背後には、政界引退後も隠然たる影響力を持つ小泉純一郎元首相の存在も。民主、自民両党がにらみ合う中、東日本大震災や福島第1原発事故への対応はどうなるのか。 

「民主党の4K、『子ども手当』『高速道路無料化』『高校無償化』『農家の戸別補償』というバラマキ政策は理念としておかしい。内閣に入れば連帯責任を負うことになる。内閣に入らなくても、政策をつくり法案に賛成する、閣外協力という方法もある」

 自民党の石破茂政調会長は8日朝、テレビ朝日系「やじうまテレビ!」に生出演し、大連立構想に慎重な姿勢を示した。


 前日の自民党役員会でも、「国会が不要になる」「政策合意抜きではあり得ない」といった意見が続出。石原伸晃幹事長は役員会後の記者会見で「客観的に聞いていて、2対1ぐらいで慎重論が多いって感じですかね」と語った。

 民主党の仙谷由人官房副長官と、自民党の大島理森副総裁らを中心に、水面下で協議されてきた大連立構想。自民党が慎重姿勢に転じた理由は、大きく3つ挙げられる。

 第1は、民主党新代表が分からないこと。

 「ペテン師」と揶揄された菅首相は近く退陣し、7月上旬にも民主党代表選が行われる予定だが、「ポスト菅」候補はみな、帯に短したすきに長しで、誰が選出されるか不透明だ。

 現時点で、枝野幸男官房長官や野田佳彦財務相、前原誠司前外相、鹿野道彦農水相、海江田万里経産相らの名前が浮上している。自民党としては「次期衆院選を見据えると、『政治とカネ』の問題を抱えて秋には裁判が始まる小沢一郎元代表の傀儡代表とは組めない」(自民党執行部)。

 第2は、政策の不一致。

 冒頭で、石破氏が指摘したように、民主、自民両党は、外交安保や社会保障、経済政策などで違いがあり、国政・地方選挙で激しいバトルを展開してきた。「被災地復興のためという大義があっても、野党に閣内不一致を追及され、窮地に陥る可能性がある」(同)

 第3は、解散時期が明確でないこと。

 菅政権の敵失で追い風にある自民党としては、一刻も早く解散総選挙に追い込み、政権を奪還したい。石原氏も「大連立政権は3カ月でも半年でもいい」と語っていた。一方、民主党は連立期間を伸ばして劣勢を立て直すため、2年後の次期参院選まで大連立を続ける可能性を示唆している。

 先に大連立という政権の枠組みが固まると、手足を縛られて、民主党に主導権を握られかねない。とても自民党は乗れないのだ。

 こうした慎重論を後押ししているのが、戦後3番目の長期政権を誇った「変人宰相」こと小泉氏だ。旧知の自民党有力議員に電話などをしてアドバイスしたという。

 ■「解散に追い込むのが王道」

 政治評論家の浅川博忠氏は語る。

 「小泉氏は『自民党は、最も野党らしい野党として対応していくべき』『正々堂々と解散に追い込むのが王道だ』というのが持論。閣僚ポスト欲しさに、与党に迎合することを『みっともない』と切り捨てていた。小沢氏についても、『敵にしておくと対立政党のトラブルメーカーになる。(連立などで)引き入れると煮え湯を飲まされる』という見方で、かつて自自公連立にも反対していた」

 ただ、自民党内にも森喜朗元首相や古賀誠元幹事長などのベテランを中心に、大連立を求める根強い意見もある。閣僚経験者は「次の衆院選まで野党として籠城していれば干上がってしまう」ともらした。

 こうした情勢を受け、自民党の谷垣禎一総裁は「どういう協力ができるかは、民主党内の動きを見極めながら国民への責任を果たしたい」と語り、民主党新代表の出方を見守る考えを表明。菅首相に対しては、来週17日にも見込まれる復興基本法成立後、直ちに辞任するよう要求した。

 前出の浅川氏は「自民党としては、大連立でアクセルを踏んできたが、一度冷静になろうということだ」と分析している。