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2011/05/28

G8サミット 首脳宣言=要旨

G8サミット:首脳宣言(要旨)
 仏ドービルでの主要8カ国首脳会議(G8サミット)で27日に採択された首脳宣言の要旨は次の通り。


1 日本との連帯

▽東日本大震災の犠牲者、災害の影響を受けたすべての人々にお悔やみと同情を表明。日本の人々が示した勇気、尊厳は、人々に称賛と尊敬の念を呼び起こした。

▽日本の首相は国際社会の支援に感謝の念を表明し、原子力事故などの試練を必ず乗り越え、世界に貢献し続けるとの決意を表明した。

▽我々は日本経済の強じんさを確信し、支援と協力を提供し続ける準備があることを表明した。日本の首相は今回の災害が世界経済に与えうる不確実性を最小化するため、あらゆる努力を行うと説明。原子力の非常事態について、すべての情報を適時提供することを約束し、日本の輸出品が安全であることを確保するとした。

▽最高水準の原子力安全性を世界的に推進する必要性を含め、必要なすべての教訓をこの災害から得ることを決意する。



2 インターネット

▽インターネットは社会、経済の成長に不可欠になっている。

▽市民にとって情報・教育の資源であり、自由、民主主義、人権促進の有益な手段。企業にとって商取引、消費者との関係構築に不可欠な手段。イノベーション(技術革新)の推進力であり、効率性を向上させ成長と雇用に貢献する。

▽政府にとっては行政効率化、公衆・企業へのサービス提供、市民との関係強化の確保のための手段である。

▽言論、表現、集会・結社の自由はインターネット上でも保障されるべきだ。検閲やアクセス制限は明らかに容認できない。

▽人権と民主的参加を世界中で進展させる手段として、インターネットの利用を奨励する。

▽知的財産保護に関し、国内法や枠組みを備える必要性を認識。侵害に対して効果的な行動を確保する。

▽テロ、犯罪目的の利用を防止。児童の人身売買や性的搾取のための利用と戦い、子どもが安全にインターネットを利用できる環境を構築する。



3 世界経済

▽世界的な景気回復は力強さを得て、より自律的になってきている。しかし下方リスクは残存しており、国内と世界の不均衡が依然として懸念事項である。商品価格の急騰と過度な変動は、回復に対する強い逆風になっている。

▽我々は構造改革を通じて、財政の持続可能性の向上、雇用の拡大、強固で持続的で均衡ある成長確保のための行動に焦点を当て続けることに合意した。

▽欧州はいくつかの国が直面した債務危機に対処するための広範なパッケージを採択しており、引き続き決意を持って取り組むとともに、成長を支えるため構造改革と財政再建を厳しく追求する。米国は雇用創出と経済成長への配慮と整合的な形で、明確で信頼性のある中期の財政健全化の枠組みを確立する。日本は震災後の復興に資金を供与しつつ、財政の持続可能性の問題にも取り組んでいく。

▽金融セクター改革、商品価格の過度な変動の緩和、国際通貨システムの強化、継続した大規模な世界的不均衡の是正、強固で持続可能な均衡ある成長を促進するため、幅広い政策について相互評価を行うというG20のプロセスを進める。

▽ドーハ・ラウンド交渉の不満足な進展について、深刻な懸念をもって留意する。貿易自由化とルール策定プロセスを前進させるとの公約を改めて表明し、妥結に向けたあらゆる選択肢を探求する。

▽研究、教育、イノベーションといった成長を促進するための政策を優先することを約束する。



4 原子力安全

▽日本での出来事は、G8の議題における最優先事項として原子力安全に取り組むことが極めて重要であることを強調している。日本による関連情報の共有を称賛し、福島事故の説明を歓迎する。

▽各国が、エネルギー・ミックスにおける原子力エネルギーの利用および貢献について、段階的導入または段階的廃止も含めさまざまなアプローチを取り得ることを認識する。

▽日本の出来事によって、安全性の再評価が常に必要であることが確認される。福島事故およびその影響から学ぶことの重要性を認識。既存の原子力施設のリスクおよび安全性に関する包括的な評価を実施するための多くの国々による取り組みを歓迎し、原発を運転するその他のすべての国々に対し、同様の評価を可能な限り速やかに実施することを奨励する。評価には、事故の予防、緊急事態のための準備、危機の管理及び軽減、事故後の対応策が含まれるべきだ。これらすべての措置は、世界的な安全基盤の強化に貢献する。

▽我々は各国に対し、安全性評価の定期的な見直しを完了し、経験に基づき、原子力施設の存続期間のすべての段階で評価を実施するよう促す。新たな原子炉の立地及び設計における安全性への高い優先度、並びにあらゆる場所における事象、事故から継続的に改善点を学ぶ必要性を再認識する。

▽原子力安全に関する国際的な協力の重要性を強調。安全文化を世界的に強化し、透明性を向上させる。

▽国際原子力機関(IAEA)の重要な役割を認識し、IAEAの能力を活用することを各国に奨励。国際的な安全体制にとって極めて重要な国際条約を批准していない国々に対し、これを批准するよう促す。

▽原子力の安全に関する条約に関し、安全上の目的、事故予防および事故管理の適時かつ十全な措置に対する政府の責任などについて、条約を強化し得る措置の検討を行うため、12年8月開催の締約国臨時会合を歓迎。

▽IAEAに対し、福島事故に照らして指針を検討すること、特に、地震が多発する地域及びその他、外的な事象にさらされ得る地域における原発の建設及び運転の付加的な指針の設定、改善を検討するよう求める。

安全にかかる慣行、危機管理及び透明性に関する国際協力の強化を通じ、原子力の安全に関する条約の原則と整合した形で、最高水準の安全性を世界的に促進する。原子力安全に関する閣僚級会議を6月20~24日にウィーンで開催するとのIAEAの発表を歓迎。最高水準の原子力安全を世界的に促進するために有意義な成果を生み出すことを期待する。

▽原子力安全を世界的に強化するための努力に新たに取り組むと同時に、チェルノブイリ事故から25年となる今年、過去の公約を完結させなければならない。チェルノブイリ事故のすべての関係者に対し、予定通りに予算の範囲内で、それぞれの事業を実施するよう求め、また、ウクライナ政府に対し、予算の範囲内において計画を効率的かつ成功裏に実施することを確保するため、制度面及び資金面において十分な貢献を行うよう促す。



5 気候変動及び生物多様性

▽気候変動への対処は、世界的な優先事項。G8は世界全体の気温上昇を産業化以前の水準と比べて2度より下に抑えるため、野心的な措置をとっており、長期的な努力を約束する。

▽2050年までに世界全体の(温室効果ガス)排出量を少なくとも50%削減するという目標を共有する意図を再確認。先進国全体で50年までに80%か、それ以上削減するとの目標を支持する。主要新興国は、対策をとらないシナリオより大幅に排出量を削減するため、数量化可能な行動をとる必要がある。

▽カンクン会議が前向きな姿勢の中で行われ、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の下で進展があったことを歓迎する。透明性、緩和、資金(特にグリーン気候基金の創設)などに関するものを含め、採択された諸規定を支持する。

▽年末のダーバン会議(COP17)は、すべての国々を包含する合意に向け、新たな重要な一歩となる。カンクン合意を具体化し、未解決の諸問題に対処する必要がある。

▽生物多様性の現在の損失速度が容認できないものであることを認識し、多様性の損失を遅らせる努力を強化することを約束する。

▽この文脈で、名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議の成果、名古屋議定書の採択は大きな前進。「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」に関する研究及び「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットホーム(IPBES)」の具体化を歓迎する。



6 開発の説明責任

▽15年までにミレニアム開発目標を達成し、持続させるための途上国の取り組みを引き続き支援し、すべての利害関係者にも同様に行動するよう奨励。今年6月に東京で閣僚級で開催予定のミレニアム開発目標フォローアップ会議を歓迎する。

▽食料安全保障を向上させるための強力で包括的な多国間及び2国間の対応を奨励。小規模自作農家を重視しつつ、持続可能な農業生産及び農業生産性を向上させるための努力を強化していく。



7 平和と安全

▽リビア政府軍が市民への武力行使を即時停止し、民衆への敵意と暴力の扇動を停止するよう求める。市民への攻撃の責任を問う必要があり、犯罪行為の処罰が必要。カダフィ(大佐)は国民を保護する責任を果たさず、すべての正当性を失っており、去らねばならない。

▽リビア市民の意志を反映した政治的移行を支持する。アラブ連盟とアフリカ連合の役割を考慮しつつ、政治的解決を促すため、国連事務総長のリビア特使のアル・ハーティブ氏が中心的な役割を果たす。暫定国民評議会の「リビア・ロードマップ」を歓迎する。

▽シリアの指導部に対し、市民への武力行使と脅迫を直ちに停止し、表現の自由と普遍的権利に対する要求に応えるよう求める。すべての政治犯の釈放を求める。

▽中東地域の歴史的変化で、イスラエルとパレスチナの紛争を交渉で解決することがより重要になった。パレスチナ人が求める持続可能な主権国家、イスラエル人が求める安全と地域統合を留意すべきだ。今こそ和平プロセスを再開する時だ。

▽イエメン情勢を懸念する。平和的な抗議活動への暴力を非難。湾岸協力会議の努力を称賛する。サレハ大統領に対し、約束の迅速な遂行と人々の要求が聞き入れられることを確保するよう求める。

▽イランが民主的な権利を継続的に抑圧していることを深刻に懸念する。イラン市民の命を奪う暴力、メディアへの干渉と不当な勾留・逮捕は遺憾。

▽イランが国連安保理やIAEA理事会の決議に基づく要求を一貫して順守しないことが最大の懸念材料。イランの核計画が軍事的側面を有する可能性があるなどのIAEAの報告を留意する。

▽(朝鮮戦争の)休戦協定や南北間合意に対する北朝鮮の挑発的な行動や、国連安保理決議に反する核・ミサイル開発、ウラン濃縮計画と軽水炉建設を非難する。すべての核計画と弾道ミサイル計画の完全放棄や、拉致問題など人道上の懸念への速やかな対応を求める。6カ国協議再開につながる具体的行動を求める。

▽IAEAの報告で示された、シリアの協力の欠如を深く懸念。義務を履行し、IAEAに完全に協力することを求める。

▽テロと戦い、テロ拡散に対処することは優先事項。ウサマ・ビンラディン(容疑者)の死は国際テロとの戦いで大きな前進だが、テロ集団は引き続き脅威で、パキスタンやイエメンなどへの影響力増大を憂慮する。テロに対する徹底的な非難と、国際法を順守しつつ脅威を根絶するために共に取り組むことを表明する。

▽暴力を放棄して、アルカイダとの関係を絶ち、憲法を順守するアフガニスタン国民のために、和解と再統合の政治的プロセスをスタートさせるアフガニスタン政府と高等和平評議会の取り組みを歓迎する。

毎日新聞 2011年5月28日 東京朝刊