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2011/05/19

犯人は営業所の外の防犯カメラの死角になるように車を止め、半年以上前に鍵が壊れていた腰高窓からシャワー室に侵入

立川6億円強奪事件 発生から1週間
2011年5月19日
 立川の警備会社の営業所に2人組の強盗が押し入り、国内の現金被害としては過去最高額となる6億400万円が奪われた事件は、きょう、発生から1週間となりました。事件が起きたのはJR立川駅前から車でわずか数分の住宅街です。事件から見えてくるのは現場となった営業所の警備のずさんさと、その内部事情を熟知しているかのような犯人の動きです。



 現場となった「日月警備保障立川営業所」は、多摩地域の郵便局に現金を輸送する中継地点でした。2人組の男が侵入したのは営業所の照明が消えてからおよそ30分後の午前3時5分で、犯人は営業所の外の防犯カメラの死角になるように車を止め、半年以上前に鍵が壊れていた腰高窓からシャワー室に侵入したとみられます。

内部に侵入した男のうち1人はソファで仮眠していた36歳の男性社員の元に直行し、男性を鉄パイプやナイフで暴行して暗証番号を聞き出し、もう1人の男が金庫室にあった現金入りの袋およそ70袋を出入り口に集め、最後に2人で一気に車に詰め込み逃走しました。その間、わずか15分の犯行でした。

 この事件は逃走経路の手掛かりの少なさが捜査を困難にしています。犯人のものとみられる車が確認されたのは営業所の外に設置されたカメラと近くの高校のカメラだけです。犯人の車は白っぽいステーションワゴンかセダンとみられていて、車はJR立川駅方向に逃走しました。

捜査関係者によると、現場から立ち去ってすぐのところにある高校の防犯カメラにはおよそ80キロの猛スピードで走り抜ける車のヘッドライトが映っていたといいます。警視庁は犯行の翌日の深夜、現場周辺を通ったおよそ140人に聞き込みを行いましたが、事件当日に不審者を見たといった情報は得られていません。

 国内の現金強盗被害としては過去最高額となった立川6億円強盗事件を警視庁は捜査員65人体制で、逃げた2人組の行方を追っています。

 捜査幹部によりますと、立川営業所にはおよそ20人の社員がいましたが、シャワー室の窓が壊れていることを知っていたのは2、3人だけだということです。警視庁は犯行の手口から内部事情に詳しい者の犯行とみています。また、きょう夕方から容態が落ち着いた被害者の男性社員から当時の様子を聴くとともに警備会社の関係者からも話を聴いています。




東京・立川の6億円強奪:発生1週間 侵入口の窓、壊れていた鍵 一部社員しか知らず
 東京都立川市の警備会社「日月警備保障」立川営業所で現金約6億円が奪われた強盗傷害事件で、侵入口とみられる窓の鍵が壊れていることを知っていたのは一部の従業員に限られることが警視庁立川署捜査本部の調べで分かった。本社は鍵の故障を把握しておらず、捜査本部は犯人が限られた内部情報を知っていたとみている。国内最高額の現金強奪事件から19日で1週間を迎える。【山本太一、内橋寿明、小泉大士】


 ●内部に精通か

 捜査本部の調べでは、侵入口とみられるのはシャワー室の腰高窓(縦40センチ、横50センチ)で、手袋を使った跡があった。鍵は半年以上前から腐食し、施錠できない状態だったが、営業所の従業員約20人のうち一部は鍵の故障を知らなかった。日月警備保障も「会社として把握していなかった」と説明する。

 防犯カメラの映像や重傷を負った警備員(36)によると、犯人は12日午前3時5分ごろ、カメラの死角になる路上に車を止め、1人が窓から侵入し、別の男を引き入れたとみられる。2人組は仮眠中の警備員を10分近く暴行して暗証番号を聞き出すと、1人が金庫からの現金引き出し役、もう1人が警備員の見張り役を分担するなど手際良さが目立つ。

 犯人は、鍵の故障に加え、(1)事件前日の水曜日に通常より多額の現金が搬入されること(2)警備員が仮眠前に駐車場の電灯を消すこと--などを知っていた可能性も高まっている。捜査幹部は「長い時間をかけて内部情報を集め、計画を練ったのではないか」とみる。


 ●警備にも問題

 夜間、赤外線センサーなどの警報システムが切られていたことも明らかになり、業界関係者からは「あり得ない」という声が漏れる。関係者の一人は「警備員がいても金庫室前にセンサーを設置し、ドアが異常時に開けば自動通報するシステムなど何重もの警備体制が必要だった」と話した上で、「警備状況を確認せずに多額の金を預けた郵便局側にも落ち度があるのでは」と指摘する。

 日月警備保障を巡っては、03年10月にも多摩地区の郵便局から集めた現金約1億5000万円が盗まれる事件があった。

 郵便事業会社は「東京中央郵便局から頻繁に現金を運び出すことは警備上好ましくない」と同社への委託に問題はなかったとの見解を示すが、今後については「検討中」としている。

毎日新聞 2011年5月19日 東京朝刊