5月26日 15時11分
東京電力福島第一原子力発電所の1号機で、地震発生の翌日、水素爆発が起きたあと、原子炉を冷やすための海水の注入が1時間近く中断したとされる問題で、東京電力は、関係者の聞き取りなどを進めた結果、海水の注入は中断しておらず、継続していたことが分かったと明らかにしました。
この問題で、政府と東京電力でつくる統合対策室は、福島第一原発の1号機で、地震が起きた翌日の3月12日午後3時半すぎに水素爆発が起きたあと、東京電力が午後7時4分から原子炉を冷やすために海水を入れる作業を始めたものの、およそ20分後の午後7時25分に停止し、菅総理大臣の指示などを受けて、午後8時20分から再開するまで55分間中断していたと説明していました。
これについて、26日、東京電力が記者会見を開き、その後、関係者からのヒアリングを進めた結果を公表しました。それによりますと、これまで海水の注入作業を中止したとされていた午後7時25分ごろ、総理大臣官邸に派遣していた東京電力の社員の状況判断として「海水注入について総理大臣の了解が得られていない」という連絡があり、いったんは海水の注入を停止することにしたものの、福島第一原子力発電所の吉田昌郎所長の判断で継続したということです。
記者会見で、東京電力の武藤栄副社長は「テレビ会議の通話で、派遣していた職員が総理大臣が判断しないといけないという空気を伝えてきて、いったんは海水注入の停止に合意した。所長の判断で海水の注入を継続したのは、安全に最大限配慮した結果だ」と述べました。吉田所長が今になって説明したことについては「『新聞報道や国会の審議、それにIAEAの調査があり、国際的に今後の教訓とするためにも、正しい事実に基づくべきだと考え、事実を報告したいと思った』と所長は話していた」と述べました。
21日の記者会見で、海水の注入を中断していたと説明していたことについて、東京電力は「これまでは社内のメモや本店の対策本部の職員からの聞き取りで経緯を調べていた。福島第一原発ではおとといからきのうにかけて聞き取りを行って判明した」と説明しました。
この問題を巡っては、関係者の証言が食い違い、事実関係の説明や訂正が繰り返されていて、今後の検証にも課題を残す結果となりました。
これについて枝野官房長官は、記者会見で「海水注入の継続の是非は別として、事実関係を正確に把握して報告・伝達してもらわないと、対応に苦慮するし、国民が不信に思ってしまうので、東京電力には、原子力安全・保安院を通じて正確な報告をするように伝えたい」と述べ、東京電力の対応を批判しました。そのうえで、枝野長官は「具体的に事実を認識している関係者すべてに確認し、『ずれ』がないか実務的に確認するのが重要で、なぜこういう間違いになったのか、東京電力に詳しく尋ねないといけない」と述べ、原因究明に向けて対応に当たる考えを示しました。その一方で、枝野長官は「今回、意図的に違った報告がされたとか、意図的に報告されていなかったのなら対応が必要だが、報告を受けているかぎりでは、しっかりとした情報の共有や意思の疎通が図られないまま発表されたのが原因だと思う」と述べ、東京電力は、今回の問題で情報を意図的に隠したわけではないという認識を示しました。
自民党の谷垣総裁は、記者会見で「事実の説明があまりにも迷走しており、開いた口も塞がらないというのが正直な気持ちだ。日本政府が、本当に包み隠さず正直に語っているのか、隠ぺい体質があるのではないかという疑惑が、海外では広がっている。事実関係がくるくる変わり、何が本当か分からないようなことで、果たして日本の信頼が回復できるのか、極めて憂慮している」と述べました。