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2011/05/07

トヨタ自動車や関連企業は、夏場に向けて大口電力使用者として節電協力を求められるのは必至。トヨタは7月にも操業率アップを見込んでいただけに、本格生産再開へのシナリオに狂いが生じる可能性が出てきた。

浜岡原発が止まったら…真夏の電力供給、余力わずか
2011年5月7日7時59分
 中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)で全3基が停止した場合、必要な電力に対して供給余力は一気に低下する。中部地方の電力不足も懸念されるが、政府内には計画停電や企業への節電目標の設定を求める必要はないとの見方もある。

 中部電は今夏の電力需要のピークで、2560万キロワットの電気が必要と試算。浜岡原発が3基(計362万キロワット)とも動いていれば2999万キロワットの発電ができるが、浜岡がすべて止まると供給の余裕は77万キロワットだけだ。

 中部電によると、夏は企業や家庭で冷房の使用が多くなり、気温が1度上昇しただけで80万キロワットの電気が必要になる。

 原発停止分を補うには、火力発電所の出力を上げたり、関西電力など他電力からの融通を増やしたりする必要がある。中部電は「(火力発電所の)燃料確保はものすごく厳しい」(水野明久社長)。関電などからの融通にしても、「電力供給の厳しさは定期検査中の原発が立ち上がらなければ同じだ」(関電幹部)という。

 ただ、夏のピークに必要な電気も、震災前にはじいた数字。多くの工場で稼働率が落ちる今夏、試算通りの電気が必要になることはない。実際、浜岡原発は2009年夏にも全3基が停止したが、リーマン・ショック後の生産活動の停滞で乗り切った。

 中部電の供給電力に占める原発の割合は20%に満たず、政府内には「浜岡を止めても何とか電力はまかなえる」との計算も働いたようだ。




トヨタ、復旧に狂いも 生産計画「電力確保が前提」
2011年5月7日

 菅直人首相が浜岡原発の全面停止を要請したことで、東海地方を最大の生産拠点とするトヨタ自動車や関連企業は、夏場に向けて大口電力使用者として節電協力を求められるのは必至。トヨタは7月にも操業率アップを見込んでいただけに、本格生産再開へのシナリオに狂いが生じる可能性が出てきた。

 トヨタは東日本大震災による部品不足で、操業率を5割程度に落として車両を生産中。ただ最大ネックの半導体部品が夏ごろには調達が軌道に乗りそうで、それに合わせて7月ごろから操業率を上げ、11月にも本格生産復旧のスケジュールを描いた。

 そこに突然、浜岡原発停止による電力不足懸念が加わった。「必要な時に必要な電力供給を受けられるのは(生産の)大前提」と、トヨタ関係者は不安を隠さない。トヨタ系部品メーカー社長は「夏場はどうせ部品不足でフル生産できない」と言いつつ、菅首相の決断に「パフォーマンスとしか思えない。産業界のことを中長期的に考えてほしい」と怒りをあらわにした。

 東日本に生産拠点が偏る日産自動車やホンダに比べ、トヨタは大震災による直接被害や、東京電力管内の節電による影響は小さい。トヨタは、不足部品の取り合いにならないよう紳士協定づくりや、節電のためメーカー各社が輪番操業する動きを率先して後押し。業界全体の復旧に向け“音頭取り”を期待され、その役割も自負していた。

 しかし原発問題が中部にも波及。地元で節電を率先垂範するよう心理的圧力が加わる。中部製造業の活性化も求められるトヨタは大きなジレンマを抱えることになる。






代替燃料コスト 中部電業績に重荷
2011.5.7 00:38
 稼働中の原子力発電所の全面停止を要請される異例の事態になった中部電力は、平成23年度のピーク電力をまかなう余裕を失う綱渡りの供給態勢を強いられるうえ、原発停止に伴う燃料などのコスト高で、24年3月期の業績が大幅に落ち込む可能性が出てきた。

 中部電力が今夏に見込むピーク電力の2560万キロワットに対し、供給力の余裕はわずか77万キロワット。同社の試算では、夏場に気温が1度上昇すると電力需要は80万キロワット程度増え、昨夏のような「想定」以上の猛暑になれば、電力をまかなえなくなる計算だ。

 一方で、稼働中の火力発電所でも、今年度に定期検査を迎える設備があり、数カ月間の稼働停止を余儀なくされる。電力需要をカバーできない恐れがあれば、定検の時期をずらすなど「特例措置を求めなければいけない必要が出てくる」(関係者)という。

 愛知県内などに休眠中の火力発電所があり、再稼働させるなどの措置が必要だが、休止中の発電所を再稼働させるには「相当な時間」がかかることから、簡単ではない。

 首相の要請とはいえ、こうした状況は、経営にも大きな打撃になる。

 中部電によると現在、定期検査のための浜岡原発3号機の停止で、1日当たり2億円のコスト高になっている。決算期末の来年3月まで停止が続くと、単純計算で540億円の減益要因。3~5号機すべてが停止すれば、赤字転落も避けられなくなる。