ページ

2011/05/23

班目春樹委員長、「ゼロでないという発言をしたという記憶がよみがえった」

班目氏発言「再臨界、ゼロではない」と政府訂正
 政府・東京電力統合対策室は22日、福島第一原発1号機の原子炉への海水注入を3月12日に中断した際、内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長が菅首相に「再臨界の危険性がある」と進言したとしていた21日の発表を訂正した。

 班目氏の発言について、「首相から再臨界の可能性を問われ、可能性はゼロではないとの趣旨の回答をした」と改めたが、再臨界の問題が注入中断に影響した可能性に変わりはなく、野党はわずか1日で訂正されることになった経緯も含め、国会審議で追及する構えだ。

 発言内容の訂正は、班目氏が22日、首相官邸で福山哲郎官房副長官、細野豪志首相補佐官に申し入れた。出席者によると、発表の訂正を求める班目氏に、福山氏らが「可能性はゼロではない」と発言したとする案を提示、班目氏も了承したという。細野氏は22日夜、記者団に、「(発言内容の)基本路線は変わっていない」と述べた。その後、菅首相に訂正を報告した。

(2011年5月23日01時33分 読売新聞)




東日本大震災:福島第1原発事故 「海水注入で再臨界」 政府、班目氏発言を訂正
 ◇「危険性ある」→「ゼロではない」 調整不足また露呈
 炉心溶融を起こした東京電力福島第1原発1号機で3月12日夜、炉心冷却のため始めた海水注入が55分間中断した問題で、政府・東京電力統合対策室は22日、内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長が「再臨界の危険性がある」と述べたとした21日発表の文書について、発言は「可能性はゼロではない」だったと訂正した。班目氏は22日、首相官邸で福山哲郎官房副長官に発言の訂正を要請。対策室側が訂正に応じたため、矛を収めた。本人に確認せず文書を発表したため生じた混乱といえ、政府内の調整不足が露呈した形だ。

 班目氏の発言は、細野豪志首相補佐官が21日の会見で、文書で発表した。

 臨界は核分裂反応が連鎖して起きる現象。3月12日午後6時から海水注入の検討を始めたが、班目氏の意見を踏まえ、臨界を抑えるホウ酸投入など再臨界防止策を検討。一方で、海江田万里経済産業相が東電に海水注入の準備を指示したという。

 東電は午後7時4分、発電所長らの判断で海水注入を始めたが、官邸で再臨界の危険性についての検討が続いているとして、独自の判断で同25分に注水を中断。しかし、55分後の午後8時20分、菅直人首相の指示を受け海水注入を開始した。

 班目氏は一時「再臨界を言うはずがない。私の原子力に関する知識をばかにしている。侮辱もいいところだ」と批判していたが、要請後、毎日新聞の取材に「(学問の世界では)ゼロでないという発言をしたという記憶がよみがえった。この発言に事務官が過敏に反応していた」と軌道修正。21日の文書の表現を「再臨界の可能性を問われ、ゼロではないとの趣旨の回答をした」と訂正することで折り合ったという。

 多くの専門家は再臨界の可能性は皆無に近かったとみている。住田健二・大阪大名誉教授(原子炉工学)は「原子炉内に真水が大量に入っている状態で海水を入れても、臨界に必要な中性子の吸収量はほとんど変わらない。不純物が混ざれば、むしろ中性子が吸収されて臨界が妨げられる」と分析。「海水注入が(55分間)止まったことで、炉内の温度が上がったり、沸騰したりした可能性はあり、影響はあったと思う」と話す。【岡田英、野田武】

毎日新聞 2011年5月23日 東京朝刊






会見直前、抗議押し切る=細野補佐官、班目委員長発言部分
 福島第1原発1号機への海水注入について、班目春樹原子力安全委員長が「再臨界の危険性がある」と発言したと政府・東京電力統合対策室が発表した後に訂正した問題で、同委員長は23日、21日の同対策室記者会見の十数分前に発表文を示され、配布の中止を申し入れたが、「もう配ったから無理だ」と押し切られたことを明らかにした。

 この会見に同委員会を代表して参加していた加藤重治審議官によると、会見前の打ち合わせで、細野豪志首相補佐官に「この発言は違うのではないか」と抗議したが、細野補佐官に「一言一句この通りではないが、その場にいた皆が言っていることだ。(当時)あなたはその場(首相官邸)にいなかったよね」と言われたという。

 班目委員長は、この発表文を誰が作成したかや、東日本大震災翌日の海水試験注入の経緯について、「徹底的に調べていただきたい」と述べた。一方で、細野補佐官に対しては「22日に長く話して、水に流そうと決めた」と話した。(2011/05/23-14:04)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011052300375






再臨界発言、対立から一転手打ち
 政府・東電と安全委員長 東日本大震災の翌日に福島第1原発1号機で始まった海水注入が一時中断された「空白の55分間」を巡り、政府・東京電力統合対策室と班目春樹まだらめ・はるき・原子力安全委員長の間で繰り広げられていた対立劇が22日夕、一転して収束した。

 班目氏が再臨界の危険性を指摘したことが中断原因になったとした対策室と、「言うわけがない」と真っ向から否定した班目氏。事故対策そっちのけの泥仕合は、班目氏が発言したとされる「危険性」という言葉を対策室側が「可能性」に訂正することで手打ちという、何とも分かりにくい幕引きとなった。

 「原子力の『げ』の字も知らない素人だと侮辱されたようなものだ」。22日朝、都内の自宅前。対策室が21日の記者会見で示した資料をしばらく見つめると、班目氏は自身が発言したとされる箇所を指さし「こんなことを私が言うわけがない」とつぶやいた。やがて唇を震わせ「勝手にあんな資料を作られるならばやっていられない」と、吐き捨てるように話していた。

 ことの発端は対策室による検証結果。注入中断は当初、再臨界を恐れた菅直人首相の指示で決まったとの見方があった。冷却の遅れにつながりかねない判断ミスを菅首相がしたのではないかとの批判の声も上がった。

 しかし、対策室の結論は違っていた。3月12日午後6時から官邸であった海水注入の検討の場で、班目氏が「再臨界の危険性がある」と発言したのをきっかけに、東電が午後7時4分から自主的に始めていた注入が同25分から8時20分まで停止したと指摘した。

 5月21日の対策室の記者会見で、細野豪志首相補佐官は検証結果を示して「東電や経済産業省原子力安全・保安院からしっかりヒアリングした上で公表しており、これが正しい事実」と断言。「(午後7時4分から水が)入っていること自体を知らなかった」と説明し、菅首相の関与はなかったとして収拾を図った。

 一方、班目氏は「再臨界について聞かれた記憶はなく、事実と違うと公表前に抗議したが、『もう記者会見が始まるので止まらない』と無視された」と対策室の対応の不備をぶちまけた。

 さらに、自分が検証結果を認めていない点も含めて公表するように要請したのに実現しなかったとし、「安全委は対策室(の構成メンバー)から引くことも考えている」とまで言い切った。

 ところが、わずか半日後、班目氏は「水に流した」。班目氏はこの日午後、細野氏に面会。その際、班目氏が事実関係を説明したのに対し、細野氏は「再臨界の可能性はゼロではない」と訂正することを受け入れたという。班目氏は「専門家と(政治家など)そうじゃない人たちとのコミュニケーションが取れていなかったんだと思う」と話した。









統合対策室が21日に発表した3月12日の1号機への注入の経緯

◇統合対策室が21日に発表した、3月12日の1号機への注水の経緯
午後2時53分 真水の注水停止

午後3時36分 水素爆発

午後6時~同20分 菅首相の指示で、原子力安全委員会と原子力安全・保安院が海水注入の実施を検討。班目原子力安全委員長が「再臨界の危険性がある」と意見。海江田経済産業相が東電に海水注入の準備を指示

午後7時04分 東電が海水(ホウ酸なし)の試験注入開始。注入後、東電担当者が現地と連絡

午後7時25分 東電が海水試験注入停止

午後7時40分 海水注入についての検討結果を保安院などが菅首相に説明

午後7時55分 菅首相が海水注入を指示

午後8時05分 海江田経産相が海水注入を命令

午後8時20分 海水注入開始

午後8時45分 再臨界を防ぐためのホウ酸投入開始

 ※下線部分が22日の訂正箇所