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2011/05/22

国際的な報告書に東電や政府の一方的な見解が反映される」との批判が高まるのをかわす狙い

原発事故IAEA報告でかん口令 「ノーコメント」統一
 東京電力福島第1原発の事故に関して政府が作成を進めている国際原子力機関(IAEA)への報告書の内容について、経済産業省など関係省庁が、秘密の確保を徹底し報道機関からの質問に対して「ノーコメントと答える」との“かん口令”を申し合わせていたことが22日、分かった。

 報告書は「省庁が分担箇所を作り、まとめ上げる形」(政府筋)で、外部の専門家の検証を経ないという。詳細が判明して「国際的な報告書に東電や政府の一方的な見解が反映される」との批判が高まるのをかわす狙いがあるとみられる。

 政府関係者によると、枝野幸男官房長官が17日に報告書作成チームの設置を公表する前に、共同通信がチーム設置や骨子案を報じたことなどを受け、秘密保持を徹底し、内容は「ノーコメント」と答えることを申し合わせた。

 また、チームの責任者である細野豪志首相補佐官が連日行っている会見で一手に質問を引き受けた方が「省庁の作業がしやすくなる」との方針も確認されたという。

 その後、関係者は「内容は検討中で、今言えるものではない。(外部の検証は)対策本部のことなので承知していない」(高木義明文部科学相)、「(今後の動きが)どうなっていくのか、はっきりしない」(班目春樹原子力安全委員長)などとし、報告書についての明確なコメントを避けている。

 報告書は6月20日からウィーンで開くIAEA閣僚級会合に向け、今月23日に来日するIAEAの専門家の協力を得て事故の評価や現状、教訓をまとめる。骨子案には、放射性物質拡散のシミュレーションが公表されずに厳しい批判を受けたことが記載されないなど、政府や東電の取り組みを前向きに紹介する内容が目立つことが明らかになっている。

2011/05/22 21:35 【共同通信】





東日本大震災:福島第1原発事故 政府報告書、「ノーコメント」で談合
 ◇IAEA提出用 省庁、取材対応に
 東京電力福島第1原発事故の経緯や教訓を国際社会に説明するため、日本政府が作成中の報告書について、報道関係者からの問い合わせがあった場合は「ノーコメント」と答えるよう、関係省庁が申し合わせていたことが22日、明らかになった。

 報告書は、6月20日からウィーンで開かれる国際原子力機関(IAEA)の閣僚会議に提出するもので、今月17日に作成方針が発表された。細野豪志首相補佐官をトップとする「報告書作成チーム」が、今月末の完成を目指して急ピッチで作業を進めている。

 政府筋によると、報告書は経済産業省や文部科学省、外務省などが分担執筆。第三者の検証は経ないという。今回明らかになった「ノーコメント対応」は厳しい日程の中、報道対応に追われて作業が進まない事態を防ぐ一方、検証を経ないなどの手続きに関する批判をかわす狙いもあるとみられる。

 報告書とは別に、IAEAは今月24日、各国の専門家約20人で構成する調査団を日本に派遣。6月2日まで独自に調査を実施し、6月の閣僚会議で結果を公表する予定だ。

 事故の原因究明は、政府が設置する調査特別委員会が第三者的な立場で実施すると決まっているが、現時点ではメンバーすら決まっておらず、6月の同会議には間に合わない。報告書はそれに代わるものだが、十分練られた内容にならない可能性もある。

毎日新聞 2011年5月23日 東京朝刊