2011年5月30日 01時02分
東京電力は29日、福島第1原発5号機の原子炉や使用済み燃料プールを冷やす仮設の海水ポンプ1台が故障し、半日以上冷却できなかったと発表した。29日昼に予備ポンプを起動させて復旧したが、原子炉内の水温は一時、安定した停止状態の上限とされる水温100度に迫った。東電は故障を発見してから半日、トラブルを公表しなかった。
5号機では「残留熱除去系」と呼ばれる冷却設備を使い、原子炉と使用済み燃料プールを12時間ずつ交互に冷やしている。この切り替え作業のため現場へ行った社員が28日午後9時14分に故障を確認した。モーターの絶縁不良が原因とみられる。
ポンプは5号機取水口近くにあり、海水をくんで熱交換器へと送っていた。炉内やプールを通って熱くなった真水と冷たい海水を交換器の中で配管越しに接触させ、冷やした真水を再び注入する仕組み。ポンプ故障で冷却機能を失った。
故障発見時の水温は原子炉内が約68度、プールは約41度だったのが、29日午後1時前に冷却を再開するまで、それぞれ94・8度、46・0度まで上昇した。その後、温度は低下傾向になっている。
炉内の水温が100度を超えて放置すれば、炉内で燃料を浸す水が沸騰し水位が低下、燃料損傷につながる危険性もあった。
東電は故障発見から半日後の29日朝まで公表していなかった。松本純一原子力・立地本部長代理は「国と福島県などの関係自治体には28日夜に連絡した。水温はコントロールできると思い、一般へ公表が遅れた。情報公開への配慮が足りなかった」と述べた。経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は「ただちに危険になる心配はなく、広報の仕方に問題はなかった」と述べた。
東電の公表が遅れたことに、福島県の佐藤節夫生活環境部長が29日、東電担当者を呼び「報道機関へ発表することで県民に知らせることになる。報道機関へ速やかに発表してほしい」と注意した。
(中日新聞)
5号機 ポンプ復旧し温度下がる
5月29日 18時6分
東京電力福島第一原子力発電所で、原子炉が冷温停止している5号機で、28日夜、原子炉などを冷やすための海水ポンプが停止しているのが見つかりましたが、29日昼すぎまでに復旧作業が終わり、一時上昇した原子炉の温度も下がっています。
停止していたのは原子炉や使用済み燃料プールを冷やす冷却装置に海水を送り込むためのポンプで、28日午後9時ごろ、施設を巡回していた職員が見つけたということです。
このため5号機では、28日夜から原子炉や燃料プールの中の水の温度が徐々に上がり、原子炉の水の温度は28日午後9時に68度だったのが、28日正午には93.7度に、燃料プールでも41度から46度に上昇したということです。
東京電力は、29日午前8時から予備のポンプに交換する作業を行い、午後0時50分ごろには冷却機能が復旧したということです。
この結果、冷却機能が復旧する時点で94.8度まで上がっていた原子炉の水の温度は、午後2時には76.5度まで下がったほか、燃料プールの温度も安定しているということです。
東京電力によりますと、海水ポンプが停止したのはモーター部分が故障したためとみられ、原因を調べるとともに、原子炉やプールの温度の推移を監視しています。
停止した海水ポンプは原子炉の冷温停止を維持する冷却装置に欠かせない設備でしたが、東京電力は29日朝まで、復旧作業やトラブルの公表をしていませんでした。これについて、東京電力の松本純一本部長代理は「予備のポンプがあったので、安全を考慮し、朝になってから作業をしようと考えた。国や福島県には28日夜のうちに報告していたが、公表ももっと早く行うべきで、今後は適切に対応したい」と話しています。