2011年3月24日に撮影された南相馬市長からのメッセージです。物資が不足していること、届いた物資を自宅退避している住民へ宅配する手段がないこと、などについて、市長自ら語っています。
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「市民は兵糧攻めの状態」 南相馬市、海外に訴え
福島第1原発から半径20~30キロ圏内の屋内退避指示が出ている福島県南相馬市の桜井勝延(さくらい・かつのぶ)市長が、動画投稿サイト「ユーチューブ」で「ボランティアも物資輸送も自己責任で入らざるを得ない。市民は兵糧攻めの状態だ」と英語の字幕付きで強調し、曖昧な日本政府指示の理不尽さを国際社会に直接、訴えている。
同市の屋内退避圏内に自宅のある自営業、中田建一郎(なかた・けんいちろう)さんが企画。中田さんは「被災した市民は残るべきか避難すべきかも分からない。非人道的な状態が、日本に今あることを知ってもらいたい」と憤っている。
防災服姿の桜井市長は動画で、東日本大震災による津波や原発事故で「市民が受けた被害は甚大」と指摘。政府や東京電力からの情報不足に人手や物資の不足も加わり、屋内退避圏内には「交通手段が確保できない住民がたくさんいる」と窮状を説明している。
また屋内退避圏内には「直接入るメディアは少なく、電話取材が圧倒的で実情が伝わらない」と指摘。「原発事故という見えない恐怖」にさらされる市への支援、協力を求めた。
動画は約11分で3月24日に録画。政府は25日に屋内退避指示圏内に自主避難を促した。(共同通信)
動画のURLはhttp://www.youtube.com/watch?v=70ZHQ--cK40
2011/04/01 10:58
南相馬市長ユーチューブで「SOS」 「兵糧攻め状況だ」に世界から反響
2011/4/ 1 20:29
原発事故で屋内退避地域にもなっている福島県南相馬市の桜井勝延市長が、生活物資が足りない状況などをユーチューブで世界に訴えている。これに対し、米国の大学教授が連絡してきたり、米CNNなど海外メディアからも問い合わせが来たりするなど反響を呼んでいる。
「物資もなかなか入りづらい状況に置かれております」
コメントも英文を含めて100件以上
「政府から、そして東京電力からの情報もかなり不足をしている状況です」
防災服姿の桜井勝延市長が、カメラに向かって切々と訴えていく。「SOS」などと題されたユーチューブ投稿動画のシーンだ。
桜井市長は日本語で語っているが、英語の字幕も付けられている。南相馬市が2011年3月24日に収録した11分ほどの動画は、これまでに4万回ほども再生された。コメントも英文を含めて100件以上に達し、ネット上で話題になっている。
南相馬市は、福島第1原発から北に約25キロ離れたところにある。20~30キロ圏の屋内退避地域に入っており、放射能を恐れた業者が物資輸送を拒否していると騒がれた。
ユーチューブの中で、桜井市長は、ボランティアなども自己責任で入らざるをえないと窮状を訴える。メディアの取材も電話が圧倒的に多く、実情が伝わらないのが現状だという。
同市では、5万人弱の市民が全国に避難したが、現在も2万人ほどが残っている。しかし、コンビニ、スーパーから金融機関まで休業しており、食料などを宅配したくてもガソリンがひっ迫している。政府は、生活面での不自由を考えて自主避難を促しているが、ガソリン不足でそれすら困ってきている状況というのだ。
こうしたことについて、桜井市長は、「市民にとっては兵糧攻め的な状況に置かれています」と支援を訴えている。
米CNNなどから問い合わせ続々
ユーチューブへの投稿は、南相馬市民で現在は秋田県に避難している建築設計業の中田建一郎さん(38)が、桜井勝延市長に持ちかけて実現した。
英語字幕付きの投稿を勧めた理由について、中田さんは、ボランティアなどに頼らざるをえない不安定な現状が海外に伝わり、政府が動いてくれればなどと考えたと説明する。ボランティアを通じた自らの支援活動で市内に戻ったときに、桜井市長に会って快諾してもらったという。
投稿動画に対し、海外からは早速、反響も届いている。
アメリカのある大学教授は、市に電話連絡し、もっと世界に伝えるべきとしたうえで、「ぜひ物資を送りたい」などと言ってきた。日本の知り合いを通じて手配するのではないかという。また、米CNN、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙など外国メディアからの問い合わせも多く、「取材したい」との依頼もあった。
動画コメントにも、英文が多く寄せられている。そこでは、「政府は空から物資を投下すればいいのに」「中国語に翻訳して投稿しましょうか」といった声が出ていた。
窮状の原因について、前出の中田さんは、こう言う。
「屋内退避指示などが住民を翻弄して、2次災害的な状況になっているんですよ。避難指示を出したいなら、出すべきでしょう。そうでなければ、屋内退避を解除して、店舗や物流の再開などを認めなければ、とても生活していけません。解除できないなら、家庭への食料宅配まで国などが面倒をみないといけないと思います」
2011年3月31日(木)「しんぶん赤旗」
屋内退避 物資なき「籠城状態」
福島第1原発から20~30キロ圏内 政府は責任持った対処を
深刻な事態が続く福島第1原発から20~30キロ圏内では、住民に対して「屋内退避」要請が出されています。大部分は30キロ圏外に自主避難しましたが、残った人も南相馬市や田村市、いわき市などで2万人以上に上ります。しかし、生活物資が途絶え、「籠城状態」(桜井勝延・南相馬市長)になっています。
南相馬市では、30キロ圏外に自主避難していた住民の一部が「屋内退避」圏に戻ってくるようになりました。
21日に営業を再開した大手警備会社の支店は、「市内の30キロ圏外に避難していたが、電話回線と電力が復旧したので通常業務を再開した」と言います。
「屋内退避」とはいえ、買い物などの日常生活での移動はかまわない、というのが政府の見解です。
しかし、生活用品を扱う店舗や飲食店のほとんどは閉鎖したままで、市内では食料や日用品がまったく手に入りません。従業員の自主避難に加え、放射能汚染を恐れて、業者が市内に入ってこないからです。
全国チェーンのレストランの従業員は、「一刻も早い再開をめざしているが、『屋内退避』のため本部が食材を届けてくれない」と言います。
郵便物が届かず
郵便局は閉鎖しており、郵便物や宅配便は一切届きません。
市民は隣接する相馬市まで買い出しに行きます。市は移動に不可欠な石油を、市内の業者が茨城県までタンクローリーを取りに行って確保するなど、必死の努力を行っていますが、スーパーはどこも長蛇の列で、食料品はたちまち品切れになります。
桜井市長は「今、住民が戻ってきてもわずかな物資を奪い合うだけだ」と嘆きます。
商業活動の停止
枝野幸男官房長官は25日、「屋内退避」区域の住民に自主避難を呼びかけました。「商業、物流等に停滞が生じ、社会生活の維持継続が困難となりつつある」ことを理由に挙げていますが、そもそも「屋内退避」を要請されたからこそ、住民は商業活動の停止を余儀なくされ、物流も途絶えたのです。
福島第1原発の事故に対する対処の根拠になっている原子力災害特措法は、政府が被災者の救援・救助などに加えて、食糧や医療などの確保を行う責任があると定めています(第26条)。政府は自ら「屋内退避」圏を設定した以上、生活物資の確保に全力を尽くすべきです。
同時に、放射線の濃度が強まり、危険な状態だと思われるのであれば、一刻も早く20キロ圏内と同様、「避難指示」に切り替えるべきです。(竹下岳)