新組織「福島原子力発電所プロジェクト推進本部」を設置
2011/4/12 20:10
日立製作所は2011年4月12日、東京電力の福島原子力発電所の事故に対する支援体制を強化するため、「福島原子力発電所プロジェクト推進本部」を設置すると発表した。社長直属の組織として政府と東京電力を支援する。技監の丸彰氏が推進本部長を務める。
日立は、震災発生直後の2011年3月11日に24時間体制の「原子力緊急対策室」を設置。これまでも政府と東京電力の共同対策チームに技術者を派遣しているほか、技術者および作業者約370人で構成される作業チームを結成して現地に約350人を派遣し、所内電源の復旧や原子炉圧力容器・使用済み燃料プールへの注水、タービン建屋や坑道の排水、電源強化、原子炉格納容器への窒素注入システムの設置、汚染水処理設備設置などの作業に当たってきた。
また、原子力発電事業で提携している米General Electric社(GE)と協力して、日立GEニュークリア・エナジー(日立GE)、GE-Hitachi Nuclear Energy社(GE日立)を中心に、1000人以上を投入している。
福島原子力発電所プロジェクト推進本部は、これまでの体制に新たな米国企業を加え、さらに事故対応の支援体制を強化するためのもの。具体的には、米国大手の電力会社やエンジニアリング会社、日立製作所の米国での電力事業を統括する米Hitachi Power Systems America社からなる日米合同専門家チームを新たに立ち上げて支援する。
日立製作所によると、今回、パートナーとなる電力会社およびエンジニアリング会社は、米スリーマイル島の原子力発電所やウクライナのチェルノブイリ原子力発電所における事故復旧対策の実績を持つという。こうした経験を生かして原発の冷温停止、汚染拡大の防止、使用済み燃料プールの機能回復といった事態の収集に協力すると共に、燃料の取り扱いやプラントの除染、廃棄物の処理・処分、中期的なプラント保管、最終的な廃止措置の進め方など、中長期な対策の立案と実行についても協力していく。
(日経ものづくり 吉田勝)
[Tech-On! 2011年4月12日掲載]
東日本大震災/日立、原発事故の対策支援を強化-廃炉含め検討
2011年4月13日
日立製作所は福島第一原子力発電所の事故対策支援を強化する。米スリーマイル島や旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で対策経験のある米国企業と共同作業チームを立ち上げた。事故の深刻度を示す国際評価が最悪の「レベル7」に引き上げられ、冷却機能の回復に全力をあげるほか、廃炉に向けた中長期の対策も検討していく。
12日、社長直轄の「原子力発電所プロジェクト推進本部」を発足させた。推進本部の傘下に総勢30人の日米合同専門家チームを置き、日立と原子力事業で合弁を組むゼネラル・エレクトリック(GE)、電力大手エクセロン、エンジニアリング大手ベクテルなどの技術者が加わった。今後、人数を随時増やす予定。
エクセロン、ベクテルはチェルノブイリ原発事故の処理で豊富な経験がある。冷温停止や放射性物質の汚染拡大、使用済み燃料プールの機能回復など現在行っている短期の復旧に米側の知見を取り入れる。
一方で、廃炉など中長期の対策案も東京電力に提案する。東芝グループも日米の連合チームが廃炉まで約10年の工程表を東電に提出した。日立は8日に燃料の取り出しやプラント除染など1回目の計画案を説明したが、廃炉までの具体的な期間は示していないという。
廃炉までには一般的に30年かかるといわれ、スリーマイル島の事故対策が完了するまでには約15年費やしている。東電は1―4号機の廃炉を明言しているが、日立は現段階で「スリーマイルと福島の事故を比較しても廃炉にはかなりの時間がかかる」という見通しを示しており、東芝案より長めの後処理計画を想定している。
現地の冷却機能回復に向けた関連作業はプラントの主契約者、定期検査などを担当した関係から1号機は日立と東芝合同、2、3号機は東芝、4号機は日立が主に従事している。廃炉までの技術手法は日立グループと東芝グループの計画などから、各工程ごとに政府、東電が適切なものを選択することになりそうだ。廃炉作業をどのプラントメーカーが請け負うかは未定。