【ミニ解説:なぜ窒素ガスを注入するのか?】
東京電力福島第一原子力発電所1号機の原子炉が入っている格納容器で、水素爆発が起きることを避けるために、東京電力は、格納容器内に「窒素ガス」を注入する計画を明らかにしました。
なぜ「窒素ガス」を注入するのか?まとめました
格納容器になぜ「窒素ガス」を注入するのか。
目的は、格納容器内にたまった水素によって爆発を生じさせないようにするためです。
水素は閉じた空間で濃度が高くなると、酸素と反応し爆発しやすくなる性質があります。
その濃度は「爆発限界」と呼ばれ、水素が4%以上、かつ酸素が5%以上となっています。
福島第一原子力発電所の場合、その濃度に達しないよう、酸素の濃度を4%以内に抑えることが厳しく求められています。また、今回のような緊急事態に備え、格納容器内の水素と酸素を結合させて水に戻す装置も設置されています。
今回は、化学反応を起こしにくい「窒素ガス」を入れることで、格納容器内にたまっている水素と酸素の濃度を下げて水素の「爆発限界」以下にし、水素爆発を防ごうというのです。
【なぜ、そもそも、そんな危険な状態になったのか?】
今回の東電福島第一原発の事故では、先月、1号機と3号機で一時、原子炉内の水位が下がり、燃料棒が露出した際、燃料棒を覆うジルコニウムと呼ばれる合金と水蒸気が反応して水素が発生。
さらに、損傷した核燃料から出る放射線によっても水が分解して水素と酸素が発生し、最終的に水素爆発が起きて原子炉建屋が壊れ放射性物質が外部に放出される大きな要因ともなりました。
いま懸念されているのは、1号機から3号機の原子炉で長期間にわたって水位が上がらず燃料棒が半分近く露出する状態が続いたことで、水素や酸素が大量に発生しているとみられることです。
さらに、原子炉を冷やすための淡水の注入によって発生した水蒸気が、格納容器内で冷えて水になると容器内の圧力が下がり、外部から酸素を含んだ空気が入ってくることも不安視されています。
東京電力によりますと、現在、1号機の格納容器の圧力は、およそ1.5気圧で、計画では窒素ガスを6000立方メートル、6日間かけて注入するということです。
【窒素ガス注入の課題は?】
しかし、窒素ガスの注入には課題もあります。
事故発生以来、水素や酸素の濃度が計測できなくなっていて、現在どこまで水素や酸素の濃度が高まっているか把握できていません。また電源が使えないため、水素と酸素を結合させる装置も動かなくなっています。
さらに圧力をかけて注入することになるため、今、格納容器の中にある放射能を帯びた水蒸気や気体の一部がケーブルや配管などの容器を貫く貫通部などから漏れ出るおそれがあるとしています。
爆発という最悪の事態を避けるための窒素ガスの注入作業には、安全面に配慮した細心の注意と、徹底した外部への気体の漏えい防止策が求められます。