2011年4月30日 8:16
原子力発電所に関する報道、水や食物などへの影響に関する報道の中で、わかりにくい言葉や気になる情報を毎回1つピックアップし、日本テレビ報道局の担当記者が解説する「原発キーワード」。29日は「水棺」について、原発事故取材班・武藤進一郎記者が解説する。
水棺は、福島第一原子力発電所で燃料棒の入った原子炉圧力容器を冷やすための方法として、ニュースで連日取り上げられている。これまでダムから引いてきた水を圧力容器に少しずつ入れていたが、圧力容器の中に水がたまらず、外に漏れているため、燃料棒が十分に冷やせなかった。そこで考え出されたのが水棺だ。
圧力容器の中に水を入れると、これまでのように水が外側の格納容器に漏れる。これを続けていくと、格納容器の中は水でいっぱいになり、圧力容器そのものが水に浸った状態になる。すると圧力容器は冷やされて、中の燃料棒も間接的に冷やされることが期待されている。
理論的には以前から研究されていたが、実際に行うのは世界で初めて。水棺がうまくいけば、効果的に冷やすことが可能になり、最終目標である「冷温停止」に一歩近づくことになる。
一方で、いくつか懸念事項もある。1つ目は、格納容器から水漏れしないかということだ。水は放射性物質を含んでいるので、漏れた場合、問題となる。
2つ目は、水の重さに耐えられるのかということだ。格納容器は鋼鉄製だが、厚さは3センチとそれほど厚くない上、元々は水を入れるためのものでないため、水を満杯に入れた場合に重さに耐えられるのかという問題がある。
3つ目は、汚染水の増加につながるということだ。格納容器内に入れた水は放射性物質を含む汚染水となる。これをどう処理するのかということを指摘する専門家もいる。
2号機では格納容器の一部に穴が開いていて、水棺ができる状況にはない。2号機、3号機それぞれで最も効率の良い冷却の方法がとられると思われる。