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2011/04/08

日本赤十字社、近衛忠輝社長 「これは大きなチャレンジで、われわれだけで解決できる問題でもない。公平性と迅速性はなかなか両立しない」

インタビュー:義援金の公平な配分は大きなチャレンジ=日本赤十字社
2011年 04月 8日 18:30 JS
 [東京 7日 ロイター] 太平洋側の東北地方を中心に壊滅的な被害をもたらした東日本大震災は、11日に発生から1カ月を迎える。日本赤十字社にはこれまで、約1100億円の義援金が寄せられているが、被災者への配分には乗り越えなくてはならない課題が多いという。
 日本赤十字社の近衛忠輝社長がロイターのインタビューで語った。


 マグニチュード9.0の地震と大津波による死者・行方不明者は約2万8000人に上り、依然として16万3000人が避難生活を強いられている。

 義援金について近衛社長は「寄付した人は、食べる物がなく、何もかも失った人たちに早く配ってほしいという気持ちが当然あると思う」とした上で、「ただ、行方不明者が多くおり、行政も機能しておらず、被災者はいろいろな避難所にばらばらに避難している。こうした状況で公平に配るというのは技術的に非常に難しい」と語った。

 1995年の阪神・淡路大震災の際には、義援金の第1次配分は震災の2週間後に行われた。ただ、東日本大震災の被害は桁違いに広範な地域に及んでおり、地方自治体の多くも壊滅的な被害を受けているため、義援金の配分は難しさが増している。

 近衛社長は「これは大きなチャレンジで、われわれだけで解決できる問題でもない。公平性と迅速性はなかなか両立しない」と述べた。

 枝野幸男官房長官は7日、震災義援金配分のための「割合決定委員会」を設置する方針を発表。「被災者は当面の生活に大変困っているので、できるだけ早く1次配分の基準を決めていただき、多くの国民の善意が被災者に届くようにしたい」と語っている。

 政府は、東日本大震災で損壊した道路や港湾、住宅、生産設備などの直接的な被害額を16兆─25兆円と試算。阪神大震災を上回り、戦後最悪の災害となる。

 被災地では電気や水道といった基礎的インフラの復旧が進んだ一方、近衛社長は避難所の生活環境が「慢性的に苦しい状況」であり、避難者は深刻な健康問題を抱えるリスクがあると指摘する。

 「衛生状態は悪く、寒さとストレスで避難者の体力は消耗する。こうした状況が長く続けば、いろいろな問題が当然出てくる」。インフルエンザやノロウイルスなどの感染症のリスクが高まっており、肺炎になった人もいるという。

 被災地では医療インフラも大きな被害を受けていることで、被災者らの健康問題への対応が難しくなっているが、日本赤十字社としては今後も現地で医療活動を行っていくとしている。

 また、東京電力福島第1原子力発電所の事故は解決の見通しが立っていないが、日本赤十字社には広島と長崎に原爆病院を持っていることから専門家もいるとし、「いざというときには、治療という点でそれなりの備えをしている」と近衛社長は語った。