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2011/04/21

「放射性物質は海中で拡散するが、半減期の長いセシウムの量によっては太平洋の広い海域に影響が及ぶ可能性がある。沿岸生物への影響は流出が止まっていれば一時的だろうが続くなら心配だ」

東日本大震災:福島第1原発事故 高濃度汚染水、海へ流出4700兆ベクレル
 ◇放射性物質、史上最悪レベル
 東日本大震災で被害を受けた東京電力福島第1原発2号機の取水口付近から高濃度の汚染水が海へ流出した問題で東電は21日、汚染水によって放出された放射性物質の総量は、少なくとも4700テラベクレル(ベクレルは放射線を出す能力の強さ、テラは1兆倍)と推定されると発表した。東電の保安規定で定めた同原発1~6号機の年間限度の約2万倍に相当する。また、流出想定量は約520トンだったという。

 1000テラベクレルというレベルは、史上最悪の海洋汚染とされる英セラフィールド核施設で70年代に放出された放射性廃液の年間の総量と同程度だという。東電は「影響については魚介類のサンプリングなどを通じて調査を続けたい」としている。

 放出されたと考えられるのは、放射性ヨウ素が2800テラベクレル、放射性セシウム134と137が各940テラベクレル。集中廃棄物処理施設(集中環境施設)などから海に放出された低濃度の汚染水に含まれた放射性物質の総量(0・15テラベクレル)の約3万1000倍に当たる。

 流出総量は、4月1日から流出が始まり6日の止水確認時まで一定量が続いたと仮定して試算した。東電は汚染水が海へ拡散するのを防止するため、1~4号機取水口前面や取水口を囲む堤防の隙間(すきま)に「シルトフェンス」を設置するなどの対策を取っている。【藤野基文、山田大輔、八田浩輔】

毎日新聞 2011年4月21日 東京夕刊








高濃度汚染水、海洋流出は4700兆ベクレル 福島2号機
東電推定、通常制限量の2万倍
2011/4/21 13:12
 福島第1原子力発電所2号機の取水口付近から高濃度の放射性物質に汚染された水が海に漏れていた問題で、東京電力は21日、流出総量が推定で520トンだったと発表した。汚染水に含まれる放射性物質の量は4700テラ(テラは1兆)ベクレル。これまでに大気中に放出した放射性物質の推定量に比べ約100分の1だが、通常時の年間流出制限量の2万倍に相当するという。東電は「魚介類などのモニタリングを進める」と話している。

 東電は2日に漏水を初めて確認。1日には周辺の放射線量が高くなかったことから、1日から漏れが止まった6日まで一定の量の漏水が続いたと仮定。漏水の様子を撮影した画像などから合計で520トンが流出したと試算した。

 また放射性物質は、漏水に含まれていた放射性のヨウ素やセシウムの濃度から合計4700テラベクレルと推定。経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会は今回の事故で大気中に計37万~63万テラベクレルが放出されたと推定しており、漏水中の放射性物質の量はこの100分の1に相当する。

 東電の推定について京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は「実際の流出量はさらに多い可能性が高く、ほかからも漏れていそうだ。流出量の正確な把握は難しい」と話している。日本原子力研究開発機構の中野政尚技術副主幹は「放射性物質は海中で拡散するが、半減期の長いセシウムの量によっては太平洋の広い海域に影響が及ぶ可能性がある。沿岸生物への影響は流出が止まっていれば一時的だろうが続くなら心配だ」とみている。

 東電によると、過去には1970年代に英セラフィールドの核燃料再処理工場で年間2500~6500テラベクレルが海に漏れた事故があったという。

 これまで土壌固化剤や鉄板、土のうなどで漏水を止め、カーテン状のフェンスで放射性物質が外海に拡散するのを抑えている。ただフェンス内側の放射性物質の濃度が高まっており、今後は放射性物質の吸着装置を設置し、海水をくみ上げて浄化する予定という。