2011年4月19日19時3分
東日本大震災の大津波は「明治三陸津波」(1896年)と「貞観(じょうがん)津波」(869年)の双方のメカニズムを持つ可能性があることが、東京大地震研究所の分析でわかった。高い波を伴った「明治」と、陸地奥深くまで広がった「貞観」の特徴が合わさり被害が拡大したとみられる。
地震研の佐竹健治教授らは、太平洋に設置された波浪計や水圧計などのデータを解析。今回の津波は太平洋プレート(岩板)と陸のプレートの境界の浅いところから深いところまで広く滑ったことで発生したと分析した。
明治三陸津波は、日本海溝のすぐそばのプレート境界の浅い部分(深さ15キロ付近まで)で起きた地震で、海底が上下に大きく動いて発生した。沿岸から200キロ以上離れており、陸上での震度は4程度だったが、波長が短く上下動が大きい津波が海岸部を襲った。
一方、貞観津波は陸地寄りの深さ15キロから50キロ程度のプレート境界部が大きくずれた地震によると考えられている。津波の高さは明治三陸型に比べて低いが、波長は長いため、長時間、津波が押し寄せ続け、海岸から3キロほど内陸部まで広く浸水した。
二つの津波をあわせもったメカニズムで、今回の津波は過去400年ほど大きな津波被害のなかった仙台平野や、福島と茨城の両県沿岸でも数キロにわたって浸水したとみられる。(松尾一郎)
東日本大震災:貞観型と明治三陸型、複合地震で大津波--東大地震研 /茨城
◇断層350キロに
東日本大震災で猛威をふるった津波は、過去に東北地方を襲った「貞観地震」(869年)、「明治三陸地震」(1896年)という二つのタイプの大地震で発生した津波が巨大化したことが、佐竹健治・東京大地震研究所教授らの研究チームの調査で分かった。津波を起こした断層の長さは約350キロに及ぶ。つくば市の防災科学技術研究所で17日開かれた大震災緊急報告会で明らかにした。5月に千葉市で開かれる日本地球惑星科学連合大会に論文を発表する。
太平洋プレート(岩板)が沈み込む深部のプレート地震である貞観地震(深さ15~50キロ)では、津波による浸水が海岸から3~4キロ内陸まで達するなど被害が広範囲に及び、約1000人が水死したとされる。一方、比較的浅い日本海溝付近のプレート内で起きた明治三陸地震(深さ15キロ以内)では2万人以上が犠牲になった。
研究チームは、これら二つの地震での津波の被害状況などから津波をもたらした原因断層を推測。東日本大震災での海底水圧計などの変化と比べた結果、二つのタイプの地震が合わさった津波だったと確認された。
今回の地震では、三陸沿岸から約40キロ(水深1000メートル)の水圧計が地震発生の6分後から海面の上昇を示し始め、同16分後には振幅が最大3メートルと大津波となった。また、海底も最大で5~6メートル隆起し、津波を起こした断層は長さが岩手-福島沖の約350キロ、幅約200キロで、ずれは最大30メートルに上っていることも分かった。
貞観地震の大津波については産業技術総合研究所(つくば市)が研究成果をまとめており、佐竹教授は産総研時代にこの研究にかかわった。【安味伸一】=一部地域既報
毎日新聞 2011年4月20日 地方版