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2011/04/09

「想定された宮城県沖地震とは異なるタイプの地震だった可能性が高い」

”宮城県沖“に相当せず? 7日深夜の余震発生メカニズム





 宮城県沖を震源に7日深夜に発生した地震は、東日本大震災の余震で同県北部と中部で震度6強の揺れを観測した。当初、気象庁が発表した観測データは想定された宮城県沖地震に似ていたが、精査の結果、別のメカニズムである公算が大きくなった。日本列島の地殻では何が起き、宮城県沖地震に相当する激震がさらに発生する可能性はあるのか。大震災の余震の状況と今後の見通しをまとめた。(中本亮)


 宮城県沖で発生した東日本大震災の余震に関し、東北大地震・噴火予知研究観測センターの海野徳仁教授(地震学)は「想定された宮城県沖地震とは異なるタイプの地震だった可能性が高い」との見方を示す。
 海野教授によると、金華山に設置した衛星利用測位システム(GPS)の測定値を見ると、地殻は隆起して西にずれていた。宮城県沖地震を引き起こす海と陸のプレート(岩板)境界型とは全く逆の動きだったという。
 加えて宮城県沖と同じタイプなら、震源の東側の海底が隆起することで海面が上昇し、20~40センチの津波が想定される。今回の余震では潮位の変化は観測されなかった。
 ほかの観測データも分析し、海野教授らはプレート内部で起きた地震と判断。2003年に気仙沼南東沖約20キロの深さ72キロで起きたマグニチュード(M)7.1の地震と同じタイプと推測する。
 気象庁は発生直後、震源は牡鹿半島沖約40キロの深さ約40キロ、地震の規模はM7.4と発表した。このデータなら、想定されていた宮城県沖地震とほぼ一致していたが、8日夕に、深さ66キロ、M7.1と改めた。修正後のデータは震源が深いため、プレート境界型の可能性は少なくなった。
 今回の地震が想定された宮城県沖地震でなければ、余震として激しい揺れが襲ってくるのか。海野教授は「現時点では何とも言えない」と述べるにとどまる。3月11日に発生したM9.0の本震の規模が大きすぎたことが、最大の要因だ。
 本震の震源域は長さ500キロ、幅250キロと過去に例がないほど広い範囲にわたり、断層が約20~30メートル滑ったとされる。この領域内で実際にどのように滑ったかについて、十分なデータが集まっていないため、現時点で国内の研究者の間でも一致した見解が得られていない。
 気象庁が発表した余震の震源の分布をみると、想定される宮城県沖の震源域はやや少なかった。このため海野教授は「宮城県沖地震を起こすとされる牡鹿半島沖のアスペリティ(固着域)が既に滑ったのか、まだ滑らず残っているのか、判別できていない」と説明している。

[想定宮城県沖地震]宮城県沖のプレート境界で、およそ37.1年間隔で発生する地震。政府の地震調査委員会による長期評価によると、1978年の宮城県沖地震で滑った領域で地震が起きる「単独型」の場合、規模はM7.5程度で、30年以内の発生確率を99%としていた。前回は、金華山沖60キロの深さ40キロで発生し、地震の規模はM7.4。当時の震度基準で大船渡、石巻、仙台、新庄、福島で震度5(強震)を記録した。



◎関連性の低さ気象台も指摘

 宮城県沖を震源に7日深夜に発生した東日本大震災の余震で、仙台管区気象台は8日、発生のメカニズムについて「精査はこれからだが、66キロという震源の深さから、海側のプレート(岩板)内と考えられる」との見解を示した。
 想定される宮城県沖地震は深さ40キロで、陸と海のプレートの境界付近で起きるとされており、今回の余震との関連性は低いとみられる。
 余震について気象台は当初、牡鹿半島沖40キロの深さ40キロで発生し、地震の規模はマグニチュード(M)7.4と速報したが、検証の結果、深さ66キロ、M7.1に修正した。
 気象台は6日、9日午後3時から3日以内の最大震度5強以上の確率は10%と発表した。川原田義春地震情報官は8日未明の記者会見で「今回の地震で余震が起きる確率が大きく変わることはないだろう」と述べた。


◎M7超は3.11以来

 東日本大震災の余震で震度4以上を観測した地震は、8日正午までに93回に達した。7日深夜の余震は、仙台市宮城野区と栗原市で震度6強を記録。マグニチュード(M)は最大ではなかったが、揺れは最も強かった。
 気象庁の観測によると、7日深夜の余震の規模はM7.1。これまで発生したM7を超える余震は、3月11日の本震直後の1時間に3回あっただけで、規模は4番目に大きかった。
 M5を超える余震はグラフの通り。徐々に減少しており、24日以降は1日5回以下で推移。規模の大きいものも頻度は減ってきている。
 ただ本震が大きければ通常、余震の規模や回数も多くなり、大きな余震に注意が必要な期間も長くなる。
 気象庁は6日の段階で、9日午後3時からの3日間に震度5強以上の余震が発生する確率を10%と予測。6~11日の6日間にM5以上の余震回数は20回程度で、多い場合には60回程度になるとしている。


◎M8級警戒必要/過去の巨大地震で専門家指摘

 世界で過去に起きた地震では、本震から長期間たって最大の余震が発生したケースもある。一般的に、最大余震のマグニチュード(M)は本震から1少ない程度とされている。東日本大震災では、M8クラスの余震が起きる可能性もあり、注意が必要だ。
 2004年のスマトラ沖地震(M9.1)では、約3カ月後にM8.5の最大余震が発生。2月のニュージーランド地震(M6.3)は、昨年のM7.0の地震の約5カ月後に起きた余震との見方が研究者の間では強い。
 東京大地震研究所の大木聖子助教(地震学)は「本震がM9の地震だったので、何が起こってもおかしくない。1年後に最大余震が起こるケースもある」と警戒する。
 直接の余震ではないが、巨大地震が発生した近くで、大きな地震が起きることがある。東日本大震災でも、同じ陸のプレート上にある長野県と新潟県の県境付近や秋田県沖、静岡県東部などでM6クラスの地震が発生している。
 大木助教は「本震が引き金となって力のバランスが崩れ、誘発されている地震と考えられる。同様の地震は、東日本のどこでも起きる可能性がある」と指摘する。


2011年04月09日土曜日