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2011/04/14

東京電力は原子炉の「水棺」冷却を望んでいない。

東電:福島第一原発冷却に3カ月見込む、「水棺」拒否-関係者
 4月14日(ブルームバーグ):東京電力は東日本大震災に伴う津波で冷却機能が喪失した福島第一原子力発電所の安定化には6月いっぱいかかると予想している。東電の説明を受けた関係者1人が明らかにした。この間、余震のリスクにさらされるほか放射性物質放出の恐れが続くことになる。

 メディア向けに発言する権限がないことを理由にこの関係者が匿名で述べたところによると、東電の技術者らは現在、福島第一原発の原子炉格納容器内部を水で満たして原子炉を継続的に冷却する「水棺」の案を拒否している。同関係者によると、この方法を採用すれば数カ月ではなく数日で原子炉を冷却させることができる。東電はこれに代 わり、水を注入して蒸気を逃がす「フィード・アンド・ブリード」という手法をとっている。

 3月11日の大震災後の余震は数百回に及び、今週の余震では送電と冷却システムが1時間近く停止した。仏原子力庁の元職員、ピエール・ザレスキ氏は、福島原発は新たな事故のリスクにさらされていると指摘。「大きな問題なのは余震だ」として、「さらに余震が起こり、封じ込めが機能しなくなる可能性がある。格納容器の構造は弱まっていると解説した。

 東京電力は原子炉の「水棺」冷却を望んでいない。これにより最終的に海に流れ込む汚染水の量が増えるためだと、関係者は述べた。注水量を増やせば格納容器内の水素が圧縮されるため爆発のリスクが 高まることも懸念しているという。

 福島原発の廃炉は、温度と圧力を下げ原子炉を安定させるまでは着手できない。この危機後の除染作業には数十年を要し、1兆円以上がかかる可能性がある。



 工程表

 東電は危機解決の工程表を示していないが、関係者によると2週間前に解決計画の内部文書を作成し、原子炉の安定化の時期を6月末に設定したという。東電の清水正孝社長は今週、危機対策のスケジュールを「近く公表する」と述べていた。

 関係者によると、福島第一の原子炉で最も危険なのは温度と圧力が依然として高い1号機だという。圧力容器とこれを包む格納容器の間を水で満たすことで、温度は数日で下がると関係者は述べた。

 さらに、消防用ホースとポンプで注水する方法では水の量が足りないとしている。13日には内部の温度がセ氏204.5度に達し、注入した水が蒸発し冷却効果が得にくい状態になったという。

 東電の発表データによれば、13日は一号機の炉心の水位が下がり燃料棒が1.65メートル露出した。露出した燃料棒は溶解し圧力容器内に放射性物質が漏れる恐れがある。東電の危機解決計画は燃料棒を水没させることを安定化の1つの目安としているものの、事故後の35日で注水によって水位が20センチ以上上がったことはないという。


 未知のリスク

 米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は今週、水位が上がらないことを1つの理由に福島第一原発の状況は「足踏み」しているとの見解を示した。

 元NRCの安全性指導員で米科学者団体「憂慮する科学者同盟」の物理学者、デービッド・ロックボーム氏は水を満たすことで重量が増し弱っている格納容器が壊れる恐れもあると指摘。一方で、安定化に時間がかかれば余震やその他の未知のリスクにさらされ続けることになるとも述べた。

更新日時: 2011/04/14 17:53 JST







福島第一原発 「水棺」冷却を検討
2011年4月8日
 福島第一原子力発電所の事故で、政府と東京電力の事故対策統合本部が、核燃料棒が入った圧力容器とその外側の格納容器の内部を水で満たすことで、原子炉を継続的に冷却する「水棺(すいかん)」を検討していることが七日、分かった。水棺は原発事故の処理方法として研究されているが、実際に行われれば世界で初めてとなる。

 政府と東電の関係者によると、福島第一原発では大量の高濃度汚染水が建屋内などにたまり、復旧作業が難航している。対策本部は水を循環させて海水との熱交換で水を冷やす「残留熱除去系」の復旧を目指しているが難航している。仮に復旧しても、海水を大量に注入したことで冷却機能が落ちている恐れもあり、水棺による冷却案が浮上した。

 水棺では、圧力容器と格納容器をともに燃料棒の高さ付近まで水で満たし、高い熱を持つ燃料棒を冷やす。燃料棒が破損して放射性物質が漏れるのを抑える狙いもある。熱で蒸発する水は外部から注入。燃料棒が冷めて取り出せるようになるまで、少なくとも数年は続けるとみられる。

 同本部は、現在1~3号機で進めている格納容器への窒素の注入が終わった後で、1号機から作業に入ることを検討している。

 格納容器は厚いコンクリートで囲われており、水を満たしても一般に強度の問題はないが、地震などで損傷していないことが条件。2号機は格納容器の圧力抑制室に損傷の疑いがあり、汚染水が外部に漏れ続ける恐れがあるため事前チェックが必要となる。水棺は、米国でも冷却水を喪失した重大事故時に取り得る手段として研究されている。福島第一原発の事故に関しても、米原子力規制委員会(NRC)が水棺に言及。「水の重さと格納容器の耐震性に留意すべきだ」と助言している。

 一九八六年に原発史上最悪の事故を起こした旧ソ連のチェルノブイリ原発は格納容器がなく、放射性物質を閉じこめるため全体をコンクリートで覆う「石棺」が行われた。