政府は数時間後に電源が回復し、溶融は起きないとの想定を変えず、今回の事故を防げなかった
事故前、炉心溶融「考え得る」 安全・保安院長が答弁
経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長が昨年5月、電源が失われて核燃料が冷やせなくなって一部が溶ける「炉心溶融」が国内の原発で起こることが論理的にあり得ると国会答弁していたことが、3日までに分かった。
電源喪失に伴う炉心溶融は福島第1原発で実際に起きているとされるが、政府は数時間後に電源が回復し、溶融は起きないとの想定を変えず、今回の事故を防げなかった形だ。
寺坂院長は昨年5月26日、衆院経済産業委員会で、共産党の吉井英勝議員の質問に対し、「外部電源が全部喪失されて冷却機能が失われると、その時間にもよるが、長時間にわたると炉心溶融につながることは論理的には考え得る」と答弁。ただ複数の非常電源を備えたりして「安全性は確保している」とも述べた。
福島第1原発は今回の地震で、運転中だった1~3号機は緊急停止したが、津波で非常用電源が使えなくなり、冷却水で燃料を冷やす機能を喪失。このため燃料が発する熱により冷却水が沸騰、水位が下がって燃料がむき出しになった。燃料の温度は1200度以上に達したとみられ、東電は、1号機で70%、2号機で33%、3号機でも一定程度が損傷したと推定している。
保安院によると、原発の安全設計は、電源が喪失しても数時間後には復旧させると想定。実際に炉心溶融に至ったことについては「従来の想定を超えたことは明らか。何らかの対応をしないといけない」としている。
2011/04/03 20:49 【共同通信】