2011/3/20 1:24
枝野幸男官房長官は19日午後の記者会見で、いずれも一部地域で採取された茨城県産のホウレンソウと福島県産の原乳から、厚生労働省が定めた暫定基準値を上回る放射能を検出したと発表した。検出された食品は食品衛生法に基づき出荷できない。枝野官房長官は「直ちに健康に影響する数値ではない」として冷静な対応を求めている。
一方、厚生労働省は同日、福島県川俣町の水道水から17日に、原子力安全委員会が定める基準値300ベクレルを超える1キロ当たり308ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと発表した。ただ、18日には基準値を下回る155ベクレル、19日には123ベクレルと大幅に低下しているという。
食品の暫定基準値は福島第1原子力発電所の事故を受け、厚労省が17日に初めて策定。正式には国の食品安全委員会に諮問して決めるが、想定外の事故のため暫定的に決めた。同法に基づき基準値を超えた食品の販売や加工などはできない。
茨城県は19日、県下の農協と全市町村に対し、ホウレンソウの出荷停止を要請。同時に主な小売業者に対し、既に出荷されたものを販売しないよう求めた。福島県によると、基準値を超えた原乳も出荷先の工場が被災し生産を止めており、市場に出回った可能性はないという。
厚労省によると、茨城県高萩市のホウレンソウからは放射性ヨウ素が1キログラム当たり1万5020ベクレルで、同省の基準値(同2000ベクレル)の7倍強。放射性セシウムも同524ベクレルを検出され、基準値(同500ベクレル)をわずかに上回った。日立市や東海村などのホウレンソウからも基準値の3~7倍程度となる放射性ヨウ素を検出した。
福島県川俣町で採取された原乳からは放射性ヨウ素が同932~1510ベクレルが検出され、基準値(同300ベクレル)の3~5倍だった。一部の原乳からは放射性セシウムも基準値(同200ベクレル)を下回るものの、同18.4ベクレルを検出した。
農林水産省の統計によると、全国のホウレンソウの収穫量は2009年で28万6300トン。茨城県産のシェアは1万6600トンで全国の5.8%。東京都中央卸売市場では年間入荷量の2割を占めている。同市場の10年の統計では、3月に入荷するホウレンソウの29%は茨城産だった。
農水省がまとめた牛乳など乳製品の原料となる生乳の全国生産量(10年)は772万382トン。福島県の生産量は10万1407トンで、全国の1%程度。
Q&A 放射線検出の食品食べたら 通常の量なら健康に害なし
2011/3/19 20:19 (2011/3/20 1:35更新)
Q 基準値を上回るとどうなるのか。
A 食品衛生法に基づき生産者などは基準値を上回る食品の販売や加工などは禁止される。生産者の場合、基準値を上回った農家単位が対象となるが、今回は茨城県が県内のホウレンソウの出荷を停止、厚労省も出荷停止の対象を広げることを検討している。
Q 基準を超える放射能が検出された食品を食べるとどうなるのか。
A 放射性物質が体内に入り、内部から被曝(ひばく)する恐れがある。今回検出された放射性ヨウ素は放射能が半減する期間が約8日で短いが、放射性セシウムは半減期が約30年で長い。
Q 店頭の食品や検出された水道水は安全なのか。
A 食品の基準値は1キロを基準としており、枝野幸男官房長官は「検出された放射能は(今回の原乳を)日本人の平均量で1年間摂取した場合にCTスキャン1回分、ホウレンソウなら同5分の1回分」と説明している。基準値を上回る水道水について、厚労省は原則として飲用を控えるように各都道府県に指示している。ただ、基準値は長期間の摂取を想定しているため「超過した水を一時的に摂取した場合でも、直ちに健康に影響は生じない」としている。