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2011/03/26

作業員が大量被ばくする不測の事態に備え「造血幹細胞」の採取を専門医が提言

「幹細胞の事前採取を」作業員大量被曝に備え、専門家が提言



 福島第一原発の作業員らが全身に大量被曝(ひばく)をして「造血幹細胞移植」が必要になるような不測の事態に備え、作業員自身の造血幹細胞をあらかじめ採取して冷凍保存しておくよう、専門医が提言している。

 移植の際、免疫拒絶反応を防ぎ治療の可能性を高めるためだ。

 虎の門病院(東京・港区)の谷口修一・血液内科部長によると、原発事故を巡り事前採取が行われた事例は世界的にもないが、「命がけで作業にあたる人たちを守るために行うべきだ」と訴える。同部長は今回の事故を受け、造血幹細胞の採取にかかる期間が従来(4~5日)の半分程度で済む未承認薬の輸入を計画している。

 東京電力は、今回の事故で、作業員の幹細胞の事前採取は「行っていない」としている。

 全身に大量の放射線を浴びると、血液を作る骨髄の細胞(造血幹細胞)が破壊され、死に至ることもある。治療には、骨髄や血液から取った幹細胞を移植するのが有効だ。だが、他人の幹細胞を使うと拒絶反応が起きて内臓が傷害され、それによって命を落とすことがある。

 1999年に茨城県東海村で起きた事故で、大量被曝後に死亡した作業員の治療にあたった自治医大さいたま医療センターの神田善伸教授(血液科)は「他人の幹細胞移植で拒絶反応が起きたことも治療を困難にした一因」としている。

(2011年3月26日 読売新聞)