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2011/03/28

与党関係者は「首相の視察でベント実施の手続きが遅れた」と言明

保安院 炉心溶融 震災当日に予測
2011年3月28日 朝刊





 経済産業省原子力安全・保安院が、震災当日の十一日夜、東京電力福島第一原発事故に関して、三時間以内の「炉心溶融」を予測していたことが二十七日、分かった。また翌十二日未明には放射性ヨウ素や高いレベルの放射線を検出、原子炉の圧力を低下させる応急措置をとる方針が決まったが、実現するまでに半日も要した。政府文書や複数の政府当局者の話で判明した。

 溶融の前段である「炉心損傷」を示すヨウ素検出で、政府内専門家の間では危機感が高まり、応急措置の即時実施が迫られる局面だった。

 しかし菅直人首相は十二日早朝、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長と予定通り現地を視察。政府与党内からは、溶融の兆候が表れた非常時の視察敢行で、応急措置の実施を含めた政策決定に遅れが生じたとの見方も出ている。初動判断のミスで事態深刻化を招いた可能性があり、首相と班目氏の責任が問われそうだ。

 政府原子力災害対策本部の文書によると、保安院は十一日午後十時に「福島第一(原発)2号機の今後のプラント状況の評価結果」を策定。炉内への注水機能停止で五十分後に「炉心露出」が起き、十二日午前零時五十分には炉心溶融である「燃料溶融」に至るとの予測を示し、午前三時二十分には放射性物質を含んだ蒸気を排出する応急措置「ベント」を行うとしている。

 保安院当局者は「最悪の事態を予測したもの」としている。評価結果は十一日午後十時半、首相に説明されていた。

 この後、2号機の原子炉圧力容器内の水位が安定したが、十二日午前一時前には1号機の原子炉格納容器内の圧力が異常上昇。四時ごろには1号機の中央制御室で毎時一五○マイクロシーベルトのガンマ線、五時ごろには原発正門付近でヨウ素も検出された。

 事態悪化を受け、東電幹部と班目氏らが協議し、1、2号機の炉内圧力を下げるため、ベントの必要性を確認、四時には保安院に実施を相談した。また菅首相は五時四十四分、原発の半径十キロ圏内からの退避を指示した。

 だが東電がベント実施を政府に通報したのは、首相の視察終了後の八時半で、作業着手は九時四分。排出には二つの弁を開く必要があるが、備え付けの空気圧縮ボンベの不調で一つが開かなかった上、代替用の空気圧縮機の調達に約四時間を費やし、排出が行われたのは午後二時半だった。

 与党関係者は「首相の視察でベント実施の手続きが遅れた」と言明。政府当局者は「ベントで現場の首相を被ばくさせられない」との判断が働き、現場作業にも影響が出たとの見方を示した。


◆いずれ回答する
 原子力安全委員会の班目委員長の共同通信に対する書面回答

 現在、事態の収束に全力を傾注している。一方、社会への説明責任を果たすことの重要性も重々認識している。今般の質問には答える立場にないものも含まれているが、プラントの状況は時々刻々と変化し、対応に当たっては予断を許さない状況にあり、正確な見解を申し述べることが必要と考えているものの、十分に吟味し、責任を持った回答を作成できる状況にない。今後、状況が一応の安定を取り戻した状態となり、対応が可能となった段階で対応を行う。ご理解のほどよろしくお願いします。


◆視察と関係ない
 東京電力の広報担当者のコメント

 (応急措置である「ベント」の実施に時間がかかったのは)福島第一原発の現場の放射線量が高かったから(ベント実施を)入念に検討したためだ。ケーブルの仮設など準備作業に時間を要した。(ベントのタイミングと)首相の来訪は関係がない。












初動ミスで深刻化か 首相の現地視察を優先
 放射性物質放出が続く東京電力福島第1原発をめぐり、経済産業省原子力安全・保安院が東日本大震災当日から炉心溶融という「最悪のシナリオ」を予測していながら、菅直人首相が強く望んだ現地視察で、即座に取るべき一連の措置に遅れが生じた可能性が出てきた。また、首相から直接説明を受けた福島瑞穂社民党党首によると、首相に同行した班目春樹委員長はヘリで原発を視察した際、「水素爆発は起きない」と説明したという。政府関係者は「この発言で班目氏は首相の信頼を失った」と明かす。

 性急な現地視察という間違った「政治主導」が目の前に迫る危機への対応を滞らせ、首相と補佐役の専門家の間に、あってはならない不信感が横たわる。危機管理システムが人的要因で機能せず、「有事なのに平時の対応をしている」(与党関係者)のが、今の政権中枢の実態ではないのか。

 これは、もはや人災と言っていい。世界が注視する「フクシマの核危機」を乗り越えられるのか。首相に猛省を促したい。また関係省庁間の情報共有強化、主要担当機関の指導力向上、国民との相互信頼に基づく戦略的コミュニケーションの実践を首相に求めたい。
(2011年3月28日 福島民友ニュース)





「原子力勉強したい」と首相=班目氏が明かす-震災翌日の原発視察
 原子力安全委員会の班目春樹委員長は28日午後の参院予算委員会で、菅直人首相が東日本大震災の発生翌日の12日早朝に福島第1原発を視察したことについて、「首相が『原子力について少し勉強したい』ということで私が同行した」と述べ、首相の判断であることを明らかにした。自民党の佐藤ゆかり氏への答弁。

 首相は12日午前7時すぎにヘリで第1原発に降り立ち、1時間弱滞在し、職員らから状況の説明を受けた。同日午後3時半ごろに1号機で爆発が起きており、首相の視察で現場の初動対応が遅れたとの指摘もある。これに関し、班目委員長は「現地において、特に首相が行ったことによって混乱があったとは承知していない」と述べた。

 原発事故への対応に追われる中、首相は16日、笹森清内閣特別顧問に「僕はものすごく原子力に詳しいんだ」と話している。(2011/03/28-14:36)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011032800484



官房長官、首相の原発訪問「情報把握への問題意識あった」
2011/3/28 17:22
 枝野幸男官房長官は28日午後の参院予算委員会で、菅直人首相が東日本大震災の発生翌日の12日午前に福島第1原子力発電所を訪問したことに関して「首相には現場の責任者、担当者と直接コミュニケーションを取らなければならないとの問題意識があった」と述べた。

 訪問の理由に関しては「なかなか現地の把握ができない。(水蒸気を排出する)ベントを早く進めるべきだと伝えても、東電からなかなか答えがこない。(このままでは)責任を持った対応ができないとの問題意識があった」とも語った。

 これに関連し、原子力安全委員会の斑目春樹委員長は28日午後の参院予算委員会で、海江田万里経済産業相が12日未明の段階から「東電にとにかく早くベントをしろと言い続けていた」と明らかにした。社民党の福島瑞穂氏への答弁。〔日経QUICKニュース〕





平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震について
平成23年3月12日(2:30)現在
緊急災害対策本部
http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/jisin/20110311miyagi/201103120230.pdf




平成23年3月13日 経済産業省 原子力安全・保安院
地震被害情報(第17報) (3月13日 0時00分現在)
http://www.meti.go.jp/press/20110313001/20110313001.pdf