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2011/03/28

「電力を供給する企業として東電が消え去る可能性はない」 「東電はただ破綻しないだけでなく、破綻が許されない会社だ」

[FT]それでも東電は生き残る 破綻・国有化の可能性低い
2011/3/28 0:00 (2011年3月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)



 三井住友銀行のバンカーたちは先日、日本の原発危機の渦中にある東京電力に2兆円規模の緊急融資を行う融資団を結成した時、14年前に受けた恩に報いていた。


■アジア金融危機時に20億ドルを預金

 消息筋によると、三井住友銀が1997年のアジア金融危機の最中に資金繰りの問題に直面した時、同行の忠実な顧客企業であり、最高の信用格付けを持つ東電が、欧米の銀行から低利で約20億ドルの資金を調達。その現金を即座に三井住友銀に預け入れ、同行が危機を切り抜ける手助けをしたのだという。(注)

 東電福島第一原発で今月起きた原発事故は大惨事となった。これほど大規模な惨事でこれほど中心的な役割を果たした後に生き残れる企業は少ないだろう。事故による放射能漏れは数百キロ離れた場所まで広がり、食物連鎖と給水設備を汚染した。その結果、多額の損害賠償請求が発生するとみられている。

 だが、東電は自社の潤沢な財源に加え、日本の大手銀行と政府の支援があるため、打撃は受けるものの、おおむね元の姿を保てるだろうと銀行筋や政府関係者は話している。

 「電力を供給する企業として東電が消え去る可能性はない」。政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)で資源ファイナンス部長などを務め、現在は内閣官房参与も兼ねる前田匡史氏はこう話す。



■「東電は破綻が許されない会社」

 23日に東電に対して最大2兆円の緊急融資を実施することで合意した融資団(三井住友銀のほか、三菱東京UFJ銀行やみずほコーポレート銀行などが参画)にかかわっているあるバンカーもこれに同意し、「東電はただ破綻しないだけでなく、破綻が許されない会社だ」と言う。

 東電は多額の費用負担に直面する。破損し、汚染された発電所の汚染除去、失われた発電能力の代替、放射能漏れの被害を受けた住民や企業への補償などにかかる費用だ。漏れ出した放射能は、現地から200キロ以上離れた東京にまで及んだ。

 同社は今後何年も利益面で痛手を受けるだろう。この見通しのために、原発での緊急事態を引き起こした3月11日の大震災以降、東電の株価は60%も下落した。東電がいくら賠償金を払わなければならないかは定かでないが、同社幹部はその額が、政府の規制の下で保険をかけている1200億円を上回るのは「確実」だと話している。

 その額を超えると、「異常な自然災害」の場合には費用を納税者に負担させられるが、法律は曖昧で、実際問題としては、負担を分担することは政治的に難しい。「(補償は)まず東電が責任を持ち、それができない場合は国が責任を持つ」と枝野幸男官房長官は語っている。



■社債償還後も3兆6900億円の負担可能


 補償のほかに東電が負わねばならない費用も多額だ。例えば、福島で失われた発電能力を代替するコスト。2007年7月に起きた地震で東電の別の原発施設が停止した時は、ほかの燃料を買ったために同社の燃料費は予算を4200億円もオーバーした。

 汚染除去と廃炉にも多額の費用がかかるが、この点では、東電は将来の発電所閉鎖費用として取り置いている5100億円の準備金を利用することができる。

 BNPパリバ証券のクレジット調査部長、中空麻奈氏は「東電が破産するかどうか聞いてくる投資家が大勢いる。特に外国人投資家が多い」と言う。だが、中空氏は、東電は首都圏でほぼ独占状態の事業を手がけていることによって守られると考えている。こうした事業は多額のキャッシュフローを生むからだ。

 東電は2010年3月期に営業活動によって9980億円のキャッシュフローを稼ぎ、期末時点で総額7兆5240億円の有利子負債に対して1530億円のネットキャッシュ(正味現金)があった。純資産は2兆5160億円だった。

 同社は今年、約5700億円の社債を償還しなければならない。だが、中空氏は、東電は社債償還費を引いた後でも、最大3兆6900億円の追加費用を負担できると試算している。また、銀行筋は、東電が債券市場から閉め出された場合には、緊急融資を増額できると話している。



■原発事業の国有化の可能性低い


 危機が収まった時、東電は今と違って見えるかもしれない。経営陣は仕事を失う可能性が高く、東電をいかに規制するかについても議論が行われるだろう。だが、ある政府関係者は、東電が原発事業の免許・認可を失い、国が同社の発電所を国有化せざるを得なくなるとの見方を一蹴する。

 政府関係者は、そのような事業をどう運営するのかほとんど見当もつかないうちは、国有化の可能性は低いと話している。



(注)三井住友銀行は2001年にさくら銀行と住友銀行が合併して誕生したため、このエピソードは前身銀行の一方を指している。


By Henny Sender, Michiyo Nakamoto and Jonathan Soble


(翻訳協力 JBpress)


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