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2011/03/18

放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)に患者の受診や問い合わせが殺到

被ばく急増で放射線医学研、受け入れ絞り込み



 東京電力福島第一原子力発電所の事故の大きさと対応の長期化に伴い、被曝(ひばく)する作業員らが急増している。

 最重症の被曝患者を受け入れる東日本唯一の3次被曝医療機関、放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)には患者の受診や問い合わせが殺到しており、〈1〉同原発で事故対応に従事した作業員〈2〉同原発から半径3キロ・メートル圏内の住民――などに限定して検査・治療することを決めた。

 放医研は今回の事故で、本来診るはずのない軽症患者の治療や、症状のない作業員らの被曝検査などに忙殺されている。14日に同原発3号機の水素爆発で右ふとももにけがを負った自衛隊員1人をはじめ、受け入れた自衛隊員や作業員らは、17日までに計約100人にのぼる。

 いずれも急性被ばくの症状はなく、「念のため」の検査が大半。同原発から遠く離れた地域からの問い合わせも、1日1000件以上。東日本巨大地震で福島県や隣接の宮城県の被曝医療機関も機能しなくなっており、辻井博彦理事は「近隣の病院などで受診するよう説得しているが、どうしてもとお願いされれば断ることもできない」と、戸惑いを隠せない。

 我が国の緊急被曝医療体制は、茨城県の核燃料工場「JCO」で1999年9月、日本の原子力史上初めて死者を出した臨界事故をきっかけに充実した。それまでの被曝医療では、作業員の被曝は企業任せになっていたが、国が責任を持つ体制に見直された。

 具体的には、日本を東西2ブロックに分け、放医研と広島大を頂点に1次~3次の3段階で治療に当たる体制が作られた。最重症の被曝患者に高度な専門的治療を提供する医療機関に軽症患者が殺到し、高度な医療を必要とする患者への対応が損なわれるのを防ぐのが狙いだ。

 放医研は「いざというときに最重症患者の命を救う最後の砦(とりで)としての機能を維持する」(広報課)ため、受け入れる患者を絞り込むことにした。JCO事故後の被曝医療体制の見直しにかかわった前川和彦・東大名誉教授は、「現在の体制はこれほどの広域災害での被曝は想定しておらず、見直しが必要だ」と話している。

(2011年3月18日09時53分 読売新聞)