東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発で、政府や東京電力は20日、放水や電源復旧の作業を続けた。2号機と5号機は外部からの送電線を通じて受電を再開した。原発の運転を監視する中央制御室の稼働や冷却機能の回復への第一歩だが機器は損傷しており、復旧は不透明だ。3号機では原子炉格納容器内の圧力が一時急上昇した。枝野幸男官房長官は20日、「(放水で)一定の効果を上げているが、予断を許す状況ではない」と語った。
2号機への通電は20日午後3時46分に確認され、その後5号機でも復旧した。2号機の北西0・5キロの放射線量は19日午後2時の毎時3443マイクロシーベルトから20日午前8時半に同2625マイクロシーベルトに減った。
非常用発電機で電力供給中の5、6号機では、使用済み核燃料プールの水温が40度前後に下がった。格納容器内の水温も100度未満の「冷温停止状態」になった。
3、4号機では建屋外の電源ケーブル敷設は22日ごろまでかかる見通し。3号機では19日、仮設電源をつないで圧力容器周辺の温度を測ると、通常運転時よりやや高い380~390度と判明。東電は同日午後、圧力容器への注水量を2・2倍まで増やし、温度は下がったが、周囲の格納容器内の圧力は1・6気圧から20日午前に3・4気圧に上昇した。炉の安全性が懸念され放射性物質を含む蒸気を大気中に放出することが検討されたが、その後圧力は下がり、作業は見送られた。【江口一、酒造唯、小山由宇】
毎日新聞 2011年3月21日 東京朝刊
2号機の電力復活 福島第1原発
東日本大震災に伴う福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の事故で、東京電力は20日、外部電源からの送電線を通じ、2号機の電力を復活させた。機器を点検した上で施設の制御機能を回復し、原子炉や使用済み燃料プールの冷却を本格化させる。電力が失われた同原発で外部電源を確保したのは初めて。
2号機は、外部電源とは別に、仮設電源を使ってポンプを動かし始め、燃料プールに約40トンの海水を注入した。非常用電源が働いている5、6号機は安定して冷却されている。
政府の対策本部は、損傷が激しい3号機への放水を続け、4号機にも初めて放水。緊張した作業が続いた。3号機では20日午前、炉内の温度が三百数十度に上がり、圧力が上昇した。原子炉を冷やす海水の注水量を増やし、蒸気が増えたためとみられる。東電は放射性物質を含む蒸気を外に逃がす操作を検討したが、その後、圧力が下がったため中止した。
東電によると、外部からの電力が届いたのは2号機にある受電設備。今後は(1)中央制御室の照明(2)原子炉の温度や圧力、放射線量などの測定装置(3)原子炉の冷却機能(4)燃料プールの冷却機能―の順に復旧を目指す。
2011年03月21日月曜日