2011/3/30 16:09
過酷な環境の中で日本の命運を背負い、何とか放射能漏れを食い止めようと努力している福島原発の作業員たち。ところが、食事は1日2回。それも朝食は非常用ビスケットに缶入り野菜ジュース1本、夕食はレトルトご飯に缶詰1個という粗食であることが明らかになったが、さらに人権を無視するような東京電力の対応を「とくダネ!」が取り上げた。
原発作業前に造血幹細胞採取
東京・虎の門病院の谷口修一血液内科部長が29日(2011年3月)午後、次のような提案を行った。
「もし私の友人、家族があのような場所に行く場合、間違いなく造血幹細胞を採ってから行くよう勧める」
万が一、作業員が1時間当たり500ミリシーベルト以上の被曝を受けたら、骨髄機能が低下して血液を作る細胞の移植が必要となる。その際、自らの肝細胞を使えば免疫反応が抑えられ、助かる可能性が高くなるというのである。すでに東電の下請け会社からは虎の門病院に2件の申し込みがあったという。
大量被曝の移植に備えるべきだ
では、東電側はどう受け止めているのか。番組が問い合わせに返ってきた答えは、「作業員の放射線限度は1時間当たり250ミリシーベルと定めている。いま提案を取り入れる前に、この限度を超えない範囲で管理していきたい」だった。
これにはキャスター小倉智昭が怒った。
「想定外のことが起こるといけないから医療機関が要請しているわけで、聞く耳持たないようですね」
2号機タービン建屋の外で見つかった汚染水は、15分もたたずに上限の250ミリシーベルトに達する高い放射線量が計測されている。それにもかかわらず、勧告を一顧だにしない東電の冷淡な態度には呆れるほかない。
東日本大震災:福島第1原発事故 「造血幹細胞」の採取保存が可能 がんセンター提言
国立がん研究センターの嘉山孝正理事長らが28日、会見し、事故があった東京電力福島第1原発の作業員が大量に被ばくした場合に備え、センターとして作業員の造血幹細胞を採取・保存することが可能だと提言した。
大量被ばくでは、血液を作る骨髄の造血幹細胞が破壊され、死に至ることがある。他人の幹細胞を移植した場合に心配される深刻な拒絶反応を、本人の幹細胞を使用することで予防することが期待できる。採取には入院が必要で、3、4日かかるものの、嘉山理事長は「事前に自分の血液から幹細胞を取り出して凍結保存しておけば、被ばく後の治療に役立つ」と提案した。
また、祖父江友孝・がん対策情報センターがん情報・統計部長ら4人の専門家が「広島や長崎の被ばく者10万人の解析や旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の研究報告から判断して、子供の甲状腺がんも含めて、100ミリシーベルト以下では、がん増加を示すデータはない。健康への影響を心配する必要はない」との見解を述べた。
一方、虎の門病院(東京都港区)の谷口修一・血液内科部長らが28日、官邸を訪れ、作業員の造血幹細胞の事前採取・保存を仙谷由人官房副長官に要請した。谷口氏によると現場へ作業員を派遣している東電の下請け会社が、2人分の事前採取を要請しているという。【小島正美、青木純】
毎日新聞 2011年3月29日 東京朝刊