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2011/03/12

福島第1原発半径10キロ避難

3万8千人、福島第一・第二周辺住民が避難へ



 政府が12日早朝、福島第一原発のある福島県大熊、双葉両町の住民に対する避難指示を半径3キロから10キロ以内に拡大したことを受け、両町の住民移動が始まった。

 大熊町は、すでに避難している住民を含め約1万1500人の全町民に防災無線で避難を指示。隣接する田村市の中学校体育館を避難先とし、午前7時からバスでの移動を始めた。

 双葉町も約7000人の町民全員に10キロ圏外へ出るよう指示。自家用車などに乗り合わせ、福島市方面へ向かうよう防災無線で呼びかけた。町は避難先として川俣町内の小学校を確保した。また、10キロ圏内に入る浪江町でも約1万7000人が避難指示の対象となった。

 双葉町山田の会社員天野泰行さん(53)は「避難指示を防災無線で聞き、荷物をまとめている。命がかかっているから、急がないと」とあわただしく話した。一方、同町寺沢唐沢の主婦(45)は家族5人と家に残ったまま困惑した様子。「川俣町へと言われても、車のガソリンがない。渋滞になるだろうし、たどり着けるか分からない。だったら家族が安心していられる家の方が避難所よりいい」と話した。

 一方、福島第二原発でも同日午前8時45分、地元の富岡、楢葉両町の住民に対し、半径3キロ以内は避難、3~10キロは屋内退避の指示が出された。避難対象となるのは、富岡町約1000人、楢葉町約1500人で、それぞれ川内村、いわき市に移動した。

(2011年3月12日12時01分 読売新聞)




おびえる住民募る不安、福島第1原発半径10キロ避難
2011/3/12 11:35
 福島第1原子力発電所のトラブルで半径10キロ圏内の住民に避難指示が出たのを受け、12日朝、圏外の小学校などは避難する住民であふれかえった。「原発は大丈夫か」「家族と連絡がとれない」。原発の冷却機能が消失し放射性物質を含んだ蒸気が大気中に放出される予想外の事態。早期収束は難しく、福島第2原発周辺も避難対象となった。住民らは祈るような表情で原発の機能回復を待った。

 福島県大熊町の主婦、阿部真奈美さん(22)は長女(1)を連れて、隣接する田村市の小学校に避難。「慌てて車で来たので身の回りのものをあまり持ってこられなかった。寒いし、子どものおむつが足りなくなるのが心配」と怯(おび)えた様子で話した。

 周辺の道路には、家族とはぐれた人の姿も。建築業、斉藤義則さん(30)は「実家の様子を見るため、早朝に町を出たら規制が強化され戻れなくなった。家族が避難してくるのを待っているが、電話がつながらないので連絡がとれない」と心配そうな様子。

 発電所施設内で施設工事をしているという同町の男性(60)は、早朝に買い出しに出かけ、家に帰る途中に国道が規制され戻れなくなった。「家にいた娘夫婦と連絡が取れない。発電所でいつも仕事をしている仲間とも連絡が取れず心配だ」と動揺していた。

 「家の牛が流されたのを見て、泣き叫ぶ孫を連れて大急ぎで避難してきた」。大熊町の熊川沿いに住む農業、佐久間千代子さん(78)は11日午後、小学校に息子夫婦と避難した。とっさに頭に浮かんだのは家から3キロ先にある原発のこと。「家の様子も心配だが、原発も怖い。どれだけ長くここにいることになるか分からない」と疲れ切った表情で話した。


 周囲では、崖崩れの跡が生々しく残り、家屋の瓦が落ちて散乱したり、路面に大きな亀裂が入ったりと揺れのすさまじさをうかがわせた。

 隣接する同県双葉町では、町民全員が避難対象に。約900人が一夜を過ごした町立双葉北小学校では12日朝から、住民がマイカーやバスで町外へ退避した。目立った混乱は起きていないが、誘導に当たった町職員は「お年寄りが相次いで体調不良を訴えている。一刻も早く退避を終えたい」と話した。

 町役場では、職員が放射性物質の漏洩に備えて白いつなぎの防護服を着用し、住民の安否確認などに当たった。地震で戸棚などあちこちが壊れた庁内を行き来していた男性職員は、「目に見えない危険なので、正直言ってここにいるのは怖い。だけどやるしかない」と緊張した声で話した。

 避難指示は12日午前、福島第1原発の南方に位置する福島第2原発周辺にも拡大。対象となった楢葉町に住む無職、坂本利和さん(63)は「これから自家用車2台に家族が分乗して避難する。一刻も早く離れないと」と青ざめた様子。「昨晩は余震がひどく放射能のことも不安で、寝られなかった」と疲れ切った様子だった。