ページ

2011/02/13

【目黒老夫妻殺傷事件】 園調布は行き方がわからなかった。目黒には大臣や政治家もたくさん住んでいるし金持ちが多いと思った

計画的?場当たり?増す不可解さ 目黒夫妻殺傷の容疑者
2011年2月13日5時3分




 東京都目黒区上目黒3丁目の無職大原道夫さん(当時87)方で夫妻が殺傷された事件で、殺人容疑などで逮捕された福島県いわき市の自称無職木村義昭容疑者(65)が事件の数日前、凶器の刃物を自宅近くの店で購入した疑いの強いことが捜査関係者への取材でわかった。これまでの捜査で計画性も見えてきたが、「金目的」とする動機は、状況と矛盾もうかがえる。供述が明らかになるにつれ、不可解さが増している。

 捜査関係者によると、いわき市内の店の防犯カメラに、木村容疑者と特徴の似た男が、凶器と同じ型の刃物を買う姿が映っていたという。

 警視庁目黒署捜査本部によると、木村容疑者は1月10日午後4時40分ごろ、大原さん方玄関先で、大原さんの腹などを刃物で何度も刺して殺害したとされる。事件直後、最寄りの中目黒駅のトイレ内で、上下の服と靴を替え、ニット帽をかぶったと供述。これらの替えはボストンバッグに詰めて用意してきたと説明しているという。

 木村容疑者は当日朝、自宅近くのバス停から高速バスに乗り、東京駅に到着。電車を乗り継いで午後4時ごろ、中目黒駅に降りたとみられる。ただ、「途中の経路がよくわからなくて時間がかかった」との趣旨の説明もしているという。

 また、現場周辺や沿線の駅の防犯カメラに姿をとらえられており、カメラを避けた形跡はない。高速バスの予約では本名と自宅の電話番号を伝えており、場当たり的な側面も見える。

 木村容疑者は動機を「金目的」と供述しているという。「高級住宅地と言えば目黒か田園調布というイメージがあったが、田園調布は行き方がわからなかった。目黒には大臣や政治家もたくさん住んでいるし、金持ちが多いと思った」と説明。大原さん方を選んだのは「たまたま目についたから」と言う。

 老舗の大手百貨店からの来訪を装ったことを認め、「都内でも有数のデパートだから、目黒ならそう言えばドアを開けてくれると思った」と話しているという。

 犯人は大原さんに馬乗りになり、腹や胸を執拗(しつよう)に刃物で刺した一方、妻の瑠璃子さん(81)や助けに入った近所の人たちには積極的な攻撃を加えていない。大原さん一人に対する恨みも垣間見える行動だ。「金を出せ」などと要求したとの証言も出ていない。金目当てで200キロ近く離れた知らない家を襲ったとの説明は「にわかには信じ難い」と話す捜査幹部もいる。

 供述には不自然な点が少なくない。

 「下見はしていない。初めて来た」と話しているが、木村容疑者に似た男が現場そばで事件直前、大原さんが日課にしていた買い物から戻るのを待つように立っていた姿が目撃されている。

 木村容疑者は中目黒駅からまっすぐ大原さん方に向かった可能性が高く、犯行後も住宅街の入り組んだ路地を迷わずに同駅へ向かっていた。

 木村容疑者は午後5時ごろ、中目黒駅のトイレで着替えた後、改札を出てタクシーで東京駅に行き、午後11時前後のバスに乗ったと供述。この空白について「トイレに数時間隠れていた」と説明するが、それ以上詳しく話さないという。事件前には恵比寿駅周辺で約3時間滞在しているが、この間の詳しい行動も不明だ。

 また、田園調布は「行き方がわからなかった」としているが、中目黒と田園調布は同じ東急東横線の沿線にある









木村容疑者海外逃亡計画か 空港付近で任意同行
 東京都目黒区上目黒の元会社役員大原道夫さん(87)夫妻が殺傷された事件で、警視庁目黒署捜査本部が殺人容疑などで逮捕した福島県いわき市の木村義昭容疑者(65)に福島空港付近で任意同行を求めていたことが12日、分かった。捜査本部は木村容疑者がソウルか上海に出国し、逃走を図ろうとしていた可能性があるとみて調べを進めている。

 警視庁目黒署捜査本部によると、今月初旬に捜査線上に木村容疑者が浮上。捜査員が行動確認をしていた。

 捜査関係者によれば、海外への出国準備をしている疑いが出てきた中、大きめの荷物を持った木村容疑者が福島空港に向かったことから、海外へ“高飛び”する可能性があると判断。空港付近で任意同行を求め、逮捕につながったという。福島空港から海外へはソウル便と上海便があり、木村容疑者は韓国か中国への逃亡を計画していた可能性があるとみて捜査本部では調べている。

 一方、事件の謎についても少しずつ明らかになってきた。

 大手百貨店の配送を装って大原さん宅に押し入ったことについて、木村容疑者は「三越」を名乗っていたことが判明。理由について「そうすれば玄関を開けてくれると思った」と供述した。

 また、凶器のナイフについても、都内で購入した形跡はなく、福島県から現場に持ち込んだ可能性が高いことが分かった。持っていたボストンバッグには、ニット帽やジャンパーなど着替えを詰めて持ち込むなどしており、強盗目的で周到な計画を練っていたと捜査本部ではみている。

 また、目黒の住宅街を狙ったことについても「初めて行った。東京の高級住宅地は目黒と田園調布というイメージだったが、田園調布への行き方が分からなかった」と説明。しかし、現場の最寄り駅である中目黒駅と田園調布駅は東急東横線1本で結ばれており、不自然な点は残されたまま。木村容疑者が現場付近の入り組んだ路地で迷った様子がないことから、捜査本部は土地勘が本当になかったか調べるとともに動機を詳しく調べる。
[ 2011年2月13日 06:00 ]