ページ

2011/02/09

【岡本ホテル事件】 二次被害に注意。 預託金を返還させるとうたって出資した会員に接近する業者がある

2次被害注意呼びかけ 岡本ホテル事件で原告側弁護士 静岡
2011.2.8 16:59



 静岡県熱海市の老舗旅館「岡本ホテル」などの会員制温泉ホテルグループを舞台にした詐欺事件で、グループの運営会社を相手取り民事訴訟を起こした原告の代理人を務める藤森克美弁護士が8日、静岡市内で会見し、預託金を返還させるとうたって出資した会員に接近する業者があることを明らかにした。藤森弁護士は「2次被害に遭う恐れがある」として、会員に注意を呼びかけている。

 藤森弁護士によれば、同グループの運営会社、オー・エム・シー(OMC、東京)の破産手続きの進行に合わせ、「会員権購入金額80%返金、弁護士費用15%、手数料5%」などとうたう業者が出てきたという。この業者は名古屋市内の会社で、「1月末までに全額を返金する約束だったにも関わらず、2月に入って連絡が取れなくなった」という。

 このほか、ホテル側が一部費用を負担しているとみられる「岡本倶楽部の会員の権利を守る会」と名乗る組織も存在し、「会員の権利を残し、今後もホテルを使用できるようにする」とうたい、会員に入会申込書を送りつけるなどしているという。

 藤森弁護士によれば、「守る会」には約1700人が会員になっているとされ、「破産管財人によりOMCの資産は債権者に公平に配当されるもので、特定の関係者に同社を売却するとは考えられない。2次被害に遭う可能性が高い」などと注意を呼びかけている。

 一方、藤森弁護士は、3月中旬に東京で「第1回債権者集会」が開催されることを明かした。弁護団は、昨年2、3月にOMCを相手取り損害賠償などを求めた民事訴訟を静岡地裁に起こした県内の4人を含む740人分の元会員から委任を受け、「債権届」を出す準備を進めているという。

 藤森弁護士は、「どこまで被害金額を取り戻せるかは不透明。資産の名義が変わっている可能性は高いが、オーナーらの隠し財産を調べてくれれば、被害回復につながる」との期待感を述べた。OMCの平成20年、21年9月期決算報告書には長期貸付金名目で、計26億円が元実質的オーナーに支払われている記載があるという。







本ホテル巨額詐欺:元会員ら「少しでも弁済を…」 事件解明に期待 /静岡
 熱海市の老舗温泉旅館「岡本ホテル」グループをめぐり、元オーナーらが組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで逮捕された。会員制温泉クラブの預託金をだまし取られたとして、県内でも元会員が元オーナーらを相手取り、損害賠償などを求める訴訟を起こしている。蓄えを失った元会員は「事件化したことで訴訟も有利に進むのではないか」と期待をつなぐが、どこまで弁済されるのか、不安も漏らした。【鈴木道弘、竹地広憲】

 「全額は無理かもしれないと思う。しかし預けたお金をとにかく早く戻してほしい」

 今回の事件に絡み、グループ会員権の販売・管理会社「オー・エム・シー」(東京都)に金を払ったという県中部に住む男性が8日、毎日新聞の取材に応じた。この男性は50代。約2000万円もの金を預けたという。

 男性は会員になった07年以降、グループのホテルを会員の「特典」として利用してきた。ところが、風呂の湯が満足に出ないなど、施設の質が年々、悪くなった。このためグループ側に預託金を返すよう求めたが、戻ってきたのは約160万円だけだという。

 男性は「ホテルなどの不動産を処分した金で、少しでも多く返金してほしいが、どうなるか……」と、不安を口にした。

 「岡本倶楽部被害対策弁護団」の藤森克美弁護士(静岡市葵区)によると、静岡地裁では県内の男女4人が同社などに、計約5000万円の損害賠償などを求めて係争中。東京地裁では昨年6月、都内の出資者ら4人に約5500万円を支払うよう同社に命ずる判決が出た(同社側が控訴し高裁で審理中)。

 藤森弁護士によると、民事訴訟は同社側が「書面の準備が間に合わない」などとして思うように進んでいない。藤森弁護士は「訴訟では旧経営陣の個人責任も問題にしている。刑事事件の公判資料は訴訟に使えるので、金の流れや責任の所在などを捜査で明らかにしてほしい」と話した。

 藤森弁護士は、同社の資産について「建物などの不動産しかないかもしれない」と指摘。「訴訟に勝っても(債権者全体を含めた)被害金回収の見通しが立っていない。弁済率は2割に届けばいい方ではないか」との厳しい見方を示した。



 ◇説明会に会員100人 再建可能性探る--会員の権利を守る友の会
 熱海市の岡本ホテルでは8日、前夜に続き一部の会員組織「岡本倶楽部会員の権利を守る友の会」(会員約2500人)の説明会が開かれ、約100人が出席した。同会ではホテルの再建の可能性を探っており、担当弁護士は「全容の解明に期待している」と話している。

 説明会に出た東京都の70代男性らは「友の会の幹部から『たくさん会員が残れば、ホテル売却後、新しい経営者が会員を安く泊めるようになる』と説明された」という。

 同会などによると、現在営業が続く岡本ホテルは、逮捕された旧経営陣から独立しているという。ただ、送迎バスなどが差し押さえられているほか、出入りの業者らに多額の負債を抱えているという。同ホテルは昨年12月、「迷惑はかけられない」として熱海温泉ホテル旅館協同組合を退会している。

 「友の会」の谷村正人弁護士は「旧幹部の逮捕は喜ばしい。ホテル存続を目指し、今後の動きを見守っていく」と話している。

毎日新聞 2011年2月9日 地方版