岡本ホテルグループが運営する会員制リゾートクラブ「岡本倶楽部(くらぶ)」を巡る組織的詐欺事件で、逮捕されたグループの元オーナー、大東正博容疑者(59)が、指定暴力団山口組系の複数の組織とトラブルになっていたことが捜査関係者への取材で分かった。ホテル内で山口組組長の出身母体・弘道会系組員らによる騒動が起きたり、トラブルの仲裁役に暴力団組織が介在したこともあった。警視庁などの合同捜査本部は大東容疑者らが集めた二百数十億円を狙い、複数の暴力団組織が介入してきたとみている。
捜査関係者によると、静岡県熱海市の老舗・岡本ホテルで09年3月ごろ、「20人くらいの暴力団員風の男たちがロビーで騒いでいる」との110番通報が静岡県警にあった。警察官が現場に駆け付けたところ、現場にいた一人が弘道会系の組員だった。騒動の理由は不明だが、大東容疑者が弘道会系組織と何らかのトラブルを抱えていた可能性もある。
捜査本部によると、大東容疑者は元山口組系組員で、お年寄りらから集めた預託金二百数十億円のうち数億円を弘道会とは別の山口組系3次団体に送金していた。数年前には別の山口組系3次団体とトラブルになり、上部団体の組長らが仲裁に入った。大東容疑者はこの後、この組長らに金品をプレゼントするようになったという。
弘道会は山口組6代目組長、篠田建市(通称・司忍)受刑者(69)=銃刀法違反罪で服役中=の出身母体。山口組の中核組織でもあり、警察庁は全国の都道府県警に取り締まり強化を指示している。
毎日新聞 2011年2月10日 15時00分
暴力団組長に定期的に入金 岡本倶楽部詐欺
2011年2月10日 10:18
静岡・熱海市の老舗旅館「岡本ホテル」を舞台にした詐欺事件で、逮捕された元オーナー側から山口組系暴力団の組長に定期的に金が振り込まれていたことが新たにわかった。
岡本ホテルを中心とした会員制リゾートクラブ「岡本倶楽部」の元オーナー・大東正博容疑者(59)らは、会員から約3億円をだまし取った疑いが持たれている。その後の警視庁への取材で、岡本倶楽部の口座から、直接、山口組系暴力団組長の口座に定期的に金が振り込まれていたことがわかった。振り込みは、大東容疑者らが会員から金を集め始めた05年の春から始まり、総額で数億円に上るという。
警視庁は、暴力団への上納金の疑いがあるとみて調べている。
「用心棒代」などで金支出 オーナーから暴力団組長に '11/2/10
会員制温泉リゾートクラブへの預託金名目での組織的詐欺事件で、岡本ホテルグループの実質的オーナー大東正博おおひがし・まさひろ容疑者(59)から、指定暴力団山口組系組長らに渡った金は、「トラブル解決料」や「用心棒代」などの名目だったことが10日、捜査関係者への取材で分かった。
一方、グループが管理していた口座からは、山口組系の組が関係する口座に数億円が送金されていたという。
大東容疑者から山口組系組長らには、グループが集めた二百数十億円のうち数億円が流れたことが判明しており、警視庁などの合同捜査本部は、自身も山口組系の元組長だった大東容疑者と、暴力団組織との関係を詳しく調べている。
捜査関係者によると、大東容疑者は2005年4月にリゾートクラブ「岡本倶楽部」の運営を開始し、預託金を集めるビジネスを始めた。
大東容疑者は、岡本倶楽部の運営などをめぐって別の暴力団組長らとの間で複数のトラブルを抱えており、金を渡した相手は、こうした問題への対応を相談していた山口組系の組長らだったとみられる。
金を渡す際の名目は、用心棒代などのほか「従業員紹介料」「盆や暮れのあいさつ」などとしていたという。
一方、大東容疑者は、岡本倶楽部の運営開始後、周囲に「クラブは5年でつぶして別のことをする」などと話していた。合同捜査本部は、当初から預託金返還の意思がなかった疑いがあるとみて経緯を調べている。
多額負債、水道など5千万円滞納 ホテル組織的詐欺
02/10 07:42
熱海市の熱海岡本ホテルなどを舞台にした組織的詐欺事件で、同ホテルの水道料金、下水道使用料、温泉料金の合計滞納額が約5千万円に上ることが9日、関係者への取材で分かった。市税も滞納し、2009年11月に市と静岡地方税滞納整理機構が差し押さえの立ち入り調査を行ったことも判明。同ホテルグループが「岡本倶楽部」会員から出資金二百数十億円を集めた一方で、ホテルの経営は多額の負債に苦しんでいたとみられる。
10年11月末現在の同ホテルの滞納額は水道が2293万円、下水道が2450万円、温泉が366万円。市が匿名で公表している3会計の大口滞納者リストによれば、ワースト2位の滞納者(計512万円)に比べて突出して多い。
関係者によると、滞納金は創業家が経営していた当時の負債が主だが、逮捕されたグループの元オーナーの男(59)が00年ごろにホテル経営に携わり、岡本倶楽部が会員権の販売を始めた後も、支払われないままだったという。
料金・使用料の滞納を3カ月続けると、市は給水・給湯を停止するが、同ホテルもこの処分をたびたび受けているとみられる。ホテル関係者は「支払日に料金150万円くらいが払えず、大抵毎月初めに水道が止まる。売り上げで工面して分納している状態」と明かす。
市と滞納整理機構の調査は、週末の売上金を見込んで週明けに実施したが、差し押さえ対象の現金や動産は見つからなかった。市の担当者によると、調査を機に市とホテル側が分納協議を行うなど、多少の進展はあったが「現在は(協議が)頓挫している」という。
マザーズ上場第1号のリキッドオーディオ・ジャパンのオーナーとして一世を風靡した黒木だが、今や、暴力団周辺の金融ブローカーと目されている。
その黒木が、上場企業の増資を利用したファンドマジックで約20億円を調達、知人の鬼頭和孝(グッドウィルグループの増資に絡む脱税事件で公判中)が運営するファンド経由でトランスデジタルに流し込んだ。その資金を同社は、サリアジャパン(東京都港区)という不動産会社を経由する形で岡本倶楽部に投資した。
前出の捜査関係者によれば、トランスデジタルの人脈と岡本倶楽部の人脈は複雑に絡み合うという。
「キーワードは山口組。熱海はもともと稲川会のシマだが、山口組系の組織が話をつけて岡本ホテルグループの預託金商法を、熱海・伊豆で始め、全国展開していった。そこにカネを入れ込み、あるいは運用を任せていた暴力団周辺者は、トランスデジタル事件にも登場していた」(同)