ページ

2011/01/26

林原は1991年ごろから2001年まで300億円近い架空売り上げを計上し、損失を隠していた疑いがあるという

バイオの林原、私的整理申請 不正経理疑惑で支援難航も
2011/1/26 2:05



 バイオ企業の林原(岡山市、林原健社長)は25日、私的整理ADR(裁判外紛争解決)手続きを申請したことを明らかにした。借入金総額は約1400億円。中国銀行など約30の取引金融機関に支払期限の延長など金融支援を求める。ただ、同社には過去に不正経理があった疑いが浮上しており、調整は難航も予想される。

 林原は食品の甘味料に使う「トレハロース」の量産で知られ、インターフェロンなど医薬品の製造にも力を入れている。単体の2010年10月期の売上高は280億円、純利益は1億円だった。

 同社は25日までに経済産業省などが認証する事業再生実務家協会に事業再生ADR手続きを申請し、受理された。林原商事、林原生物化学研究所、太陽殖産の3社も対象で、2月上旬にも債権者集会を開き、取引金融機関に支援を要請する。返済猶予のほか一部融資の株式化による実質的な債権放棄を求めるもよう。

 取引金融機関への報告で、林原は過去に「不適切な会計処理」があったと認めている。過去に10年以上にわたって売上高を総額300億円近く水増しし、損失を隠してきた疑いがあるという。取引金融機関は財務の実態解明と経営責任の明確化を求めるとみられ、再建協議の行方は不透明だ。



林原再建、主力行に温度差 不正経理で支援に慎重
2011/1/27 2:01

 バイオ企業、林原(岡山市)の経営問題が表面化し、取引金融機関などに波紋が広がっている。私的整理のひとつ、事業再生ADR(裁判外紛争解決)を使った経営再建を目指す林原は2月2日、債権者集会を開き、銀行団に支援を要請する。ただ、不正経理の疑いが浮上、取引行の多くは事業再生計画を慎重に見極める構え。再建の行方は不透明だ。

 「融資をはじめとするご協力をいただけない場合、資金繰りに支障が生じる懸念がございます」――。林原が取引銀行に対し、支援取り付けの根回しを始めたのは昨年12月のこと。インターフェロンなど医薬品の開発・製造などで知られるバイオ企業の経営困難は過去の不正経理の発覚がきっかけだった。

 取引金融機関への報告によれば、林原は1991年ごろから2001年まで300億円近い架空売り上げを計上し、損失を隠していた疑いがあるという。

 中国銀行420億円、住友信託銀行280億円――。与信総額約1400億円、約30社に上る取引金融機関の反応は複雑だ。

 主力行の中国銀行の首脳は26日、「開発に軸足を置く林原の事業モデルは優れており、ADRが成立して事業を継続することを望む」と語った。一方、融資第2位の住友信託銀行は「事業再生計画の合理性を慎重に検討した上で、対応を検討する」と発表。別の取引行の幹部も「財務の実態がはっきりせず、現段階でいくら支援が必要なのか見えない」と語る。

 主力銀行の中国銀への責任論も、銀行間の温度差の一因。林原グループは中国銀の株式の10%超を保有する実質的な筆頭株主でもある。中国銀は林原の経営陣の責任を明確にして理解を得たい考えだが、銀行団の足並みがそろうか流動的だ。

 取引先の反応は今のところ冷静だ。

 「12年末まで持つ在庫がある。患者への安定供給に問題はない」。林原からインターフェロンの原料供給を受けてがん治療薬を製造・販売する大塚製薬幹部は言う。菓子の甘味料に林原のトレハロースを使っている森永製菓も「工場は稼働しており、現時点で調達に支障はない」としている。

 ただ「トレハロースの代替がきかない商品もある」(江崎グリコ)と先行きに懸念を示す声もある。再建交渉の行方を取引先も注視している。