毎日新聞 2010年12月2日
ロシア:MD合意へ譲歩せず メドベージェフ大統領「進展なければ軍拡」
【モスクワ大前仁】ロシアのメドベージェフ大統領は30日に行った年次教書演説で、北大西洋条約機構(NATO)との間でミサイル防衛(MD)システムの共用問題で合意できなければ「新たな軍拡を招く」と警告した。対欧米協調路線を強調したが、MD問題で容易に譲歩しない考えを鮮明にした。
大統領は先月20日、NATOとの首脳会議で、MDシステムの共用を検討することで合意したことについて「前向きの進展」と評価。一方、今後10年間で具体的な進展がない場合「新たな攻撃手段の配置を決めなければならない」と言明した。
1日付の独立新聞は「攻撃手段」が短距離ミサイル「イスカンデルM」を指すと報じた。大統領は08年の年次教書で、当時のブッシュ米政権が進めたMD欧州配備計画に対抗、同ミサイル配備に言及した経緯がある。
大統領発言の背景には、MD共用システムに対する認識の開きがある。NATOは双方が異なったシステムを開発したうえで、ミサイル発射などの情報共用を想定する一方、ロシアは「対等な立場」を前提に統一システムの開発を求めている。
露軍事誌「国防」のコロチェンコ主幹によると、ロシアはNATOがMD開発の中枢に据えるSM3ミサイルと同水準の技術を持たないため、別々に開発した場合、後れを取ることが確実という。
毎日新聞 2010年12月2日
東京新聞
2010年12月1日 朝刊
「対等でなければ軍拡」 ロ大統領がNATOけん制
【モスクワ=酒井和人】ロシアのメドベージェフ大統領は三十日、クレムリンで連邦議会に対する年次教書演説を行い、北大西洋条約機構(NATO)との連携を模索する欧州でのミサイル防衛(MD)構想について、NATOと対等な関係が構築できなければ「新たな攻撃手段を設置しなければならない」と強くけん制した。
大統領は「協力する用意がある」とNATOとのMD連携については前向きの考えを示た。そのうえで、MDシステムへの同等の関与や、欧州安保にかかわる情報共有が不可避とし、NATOが拒否した場合の選択肢として「軍拡競争が始まる」と述べた。
大統領は十一月二十日、リスボンでのNATO・ロシア理事会でもMDでの協力に大枠合意する一方、直後の会見で「欧州MDとは具体的にはどんなものなんだ」と、不信感をのぞかせている。
MDを通じて、欧州安保で主導権を握る思惑があるほか、冷戦期以降のNATOアレルギーが根強い国内保守層に配慮した可能性もある。
一方、大統領は近代化政策の指針として、日本や中国を名指しし、経済外交を重視する考えを表明。特に対中関係が諸外国との関係をけん引するとの認識を示した。日本との北方領土問題や、北朝鮮問題には言及しなかった。内政面では現行の第二子を出産した母親への一時金支給に加え、第三子への支援拡大など少子化対策への注力を確約した。