認めたのは「蓋然性」、流出詳細触れず…警視庁
インターネット上に個人情報が漏れ出してから約2か月。警視庁は流出した文書について、同庁公安部の内部資料の可能性が高いと公式に認めた。
ただ、「蓋然性が高い」との表現で、流出の経緯については詳細を語らなかった。個人情報が流出した被害者に対しても謝罪をしたものの、イスラム教徒らからは「一度流出した個人情報は元には戻らない」との声があがっている。
24日午前、東京・霞が関の警視庁本部で記者会見した同庁の桜沢健一・警務部参事官は、集まった100人以上の報道陣に一礼すると、硬い表情で約10分間にわたって用意した発表文を読み上げた。問題の文書が内部資料の「蓋然性が高い」とし、「極めて遺憾であり、申し訳なく思う」と述べると、深々と頭を下げた。
会見には、同庁公安部の近藤知尚・公安総務課長も同席。終始うつむき加減で、資料に目を落としていた。
(2010年12月24日16時21分 読売新聞)
2010年12月24日17時24分 読売新聞
消極姿勢2か月、広がった被害…警視庁流出事件
警視庁公安部の捜査対象者らの個人情報がインターネット上に流出した事件で、警視庁は24日、流出した文書には同庁公安部の内部資料が含まれている可能性が高いとする調査結果を発表した。
流出が発覚してから、今回、警視庁が流出文書を内部資料と認めるまでの約2か月間、対応を巡って警察内部は迷走を続けた。
流出した114点の文書には、米連邦捜査局(FBI)からの協力要請を記載した資料なども含まれており、警視庁はこれまで、「本物と認めると、他国との信頼関係が崩れ、今後の情報収集に大きな影響が出る」(同庁幹部)として、「内部資料かどうか調査中」との説明を繰り返してきた。
しかし、文書には捜査協力者の実名や住所など個人情報が含まれており、流出した情報は世界各国のパソコンにダウンロードされ、11月25日には文書をそのまま掲載した本まで出版されるなど、被害は瞬く間に拡大した。
警視庁は流出から約1か月後の12月3日、偽計業務妨害容疑で強制捜査に着手したが、この時点でも「内部資料と認めても、情報の拡散は止められない」(別の幹部)として方針を変えなかった。2007年に警視庁北沢署の巡査長の私物パソコンから、個人情報が含まれた約1万件の資料流出が判明した際も内部資料とは公式に認めなかったことから、幹部の1人は「前例を踏襲しようとした面はあった」と打ち明ける。
警察庁内部から「世論も厳しく、このままでは1月の通常国会が乗り切れない」との声が出始め、同庁は警視庁に「素直に内部資料と認めないと、取り返しがつかないことになる」と求めたが、警視庁は当初、「内部資料と認めると流出した個人情報にお墨付きを与えてしまう」と消極的な姿勢を変えなかった。
最終的には文書の詳細については言及せず、文書の一部について「内部資料の可能性が高い」とする方向で決着したが、警察庁幹部の1人は「対応が後手に回ってしまった」と悔やんだ。