2010/12/11 2:04 日本経済新聞
COP16、新枠組み先送りへ 排出大国の米中取り込めず 「京都」延長も
第16回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)は温暖化ガス排出削減の新しい国際枠組みづくりへ合意形成できない見通しが強まった。日本は大量排出国の米国や中国を取り込めないどころか、温暖化対策に消極的と批判されている。このまま閉幕すれば、来年の交渉へ向け京都議定書を2012年の期限後も延長する案が現実味を増す。
日本の松本龍環境相は各国代表と会談し、京都議定書への延長反対とポスト京都の新しい枠組みに支持を求めた。しかし逆に日本に妥協を求める声が強まっている。日本時間の10日夜には打開策を探る英国のキャメロン首相が、菅直人首相と電話会談した。
これまでの交渉でポスト京都の合意が遠のいた最大の原因は温暖化ガスの二大排出国、中国と米国の同意を得られていないことにある。中国は国内の削減目標はあるが、自主目標だとして外部による検証は拒否。米国も中間選挙で温暖化対策を推進する民主党が敗北し、削減義務を伴う新枠組みは受け入れにくい。
新興・途上国はこれからも先進国が削減義務を負うよう要請。「京都議定書の延長を目指すべきだ」(中国の解振華・国家発展改革委員会副主任)との主張を繰り返した。日本などが延長を受け入れるなら、自らにも緩やかな規制の網がかかる新たな枠組みを受け入れる姿勢を示し揺さぶりをかける。
EUも延長容認に傾く。現行議定書の約束期間後に「空白期間」が生じ、削減義務の重しがとれると力を入れている排出量取引のインセンティブが薄れ炭素市場の混乱を招くとみるからだ。日本に同調するのはカナダとロシアくらい。インドのラメシュ環境相は「議定書延長を日本が認めないことが交渉の進展を妨げている」と言い切る。
日本が議定書延長に反対なのは米中などが参加せず、温暖化ガス削減効果が薄く公平性も欠くと考えるからだ。削減義務を負う国の二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体の27%。中国の排出量は米国を抜きトップで、削減義務国の比率は今後さらに低下する。
新日本製鉄の三村明夫会長は「(日本など)一部の先進国が過重な負担をするのはおかしい。今の制度は一度ストップしないといけない」と延長反対を堅持する政府を評価する。ただ、規制の枠組みが不透明になることには不安の声もある。省エネ家電や太陽電池を生産する電機大手の幹部は「製品販売上は各国に削減義務を課す枠組みがあった方がいいのは確か」と話す。
議定書の延長や空白期間は結果的に世界の温暖化ガス排出を増やし、災害の増加や農業生産の低下など経済損失の拡大をもたらす恐れがある。日本に譲歩を求める声は多いが、本当にそれが排出を最も効果的に減らせる仕組みにつながるのか冷静に考える必要がある。