2010.11.17 00:30
尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などを受け、菅直人首相の求心力が急速に低下する中、「政治とカネ」の問題で鳴りを潜めていた民主党の小沢一郎元代表が再び動き出した。16日夜は鳩山由紀夫前首相側近らの会合に顔を出し、若手議員を激励した。小沢氏側近らは次々に議員連盟を設立し、党内基盤強化に余念がない。来年1月にも予定される強制起訴を前に一気に“勝負”をかけるつもりなのか。(坂井広志、山本雄史)
16日夜、小沢氏は東京・赤坂の中華料理店で鳩山氏側近の松野頼久前官房副長官と衆院1回生約10人の会合に顔を出した。先の党代表選で小沢、鳩山両グループの架け橋となった松野氏は小沢氏の事務所に頻繁に出入りするなど信任は厚い。小沢氏は上機嫌で1時間半ほど語らったが、福岡市長選で民主推薦の現職が大敗したことに強い危機感を示し、「まず自分たちの足元を固めろよ」と若手を励ましたという。
小沢氏は、検察審査会の2度目の議決で強制起訴が決まると蟄居(ちっきょ)を決め込んだが、衝突事件での政権混乱に乗じるように活動を活発化。ビデオ映像流出事件翌日の5日にも小沢系の副大臣、政務官と東京・赤坂の中華料理店で会合を開いた。
同じころから小沢氏側近は議連設立に精を出し始めた。
最初に注目されたのは「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を慎重に考える会」。山田正彦前農水相らを中心にTPP推進の動きにブレーキをかけ、その力を見せつけた。
11月30日には山岡賢次副代表が「食料とエネルギーの自給率向上と成長産業としての環境政策を推進する議連」を結成する。発起人には鳩山氏、輿石東参院議員会長、原口一博前総務相、田中真紀子元外相ら小沢シンパがずらりと並ぶ。
18日には小沢系中堅の「一新会」事務局長の岡島一正衆院議員らが「日本の海運を考える議連」を設立。衆院1回生議員グループの「一新会倶楽部」の石井章氏も「石油・エネルギー政策研究議連」を発足予定。一新会倶楽部は近く名称を改め、再出発する運びとなっている。
議連設立の目的は2つ。1つは業界団体とのパイプ作り。もう一つは政策を餌に非小沢系を仲間に引き入れる狙いがある。
このような動きに反小沢系の若手は「小沢氏の戦略に違いない。議連を使い影響力を行使しようとするのはこれまでになかった動きだ」といぶかしがる。
ただ、小沢氏の国会招致問題は宙に浮いたまま。岡田克也幹事長は16日、衆院本会議場で小沢氏に近づき2分ほど話し込んだ。小沢氏は笑顔で応じたが、一触即発の神経戦は続く。