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2009/01/29

そもそもGWGによるクリスタル買収は、林オーナーの意向を受けた格闘家が、格闘技団体代表に相談して始まった。

暴かれるか「コリンシアンパートナーズ」の闇(上)
東京レポート2009年1月28日 16:17
「コリンシアンパートナーズ」がいよいよ事件化しそうである。
 2006年10月にグッドウィル・グループ(GWG、08年10月ラディアホールディングスに商号変更)が人材派遣最大手クリスタルを買収する際に舞台となったのがコリンシアンパートナーズという投資ファンド。
 コリンシアンパートナーズが運営するコリンシアンファンドにはGWGが組成した投資ファンドが883億円(約75%)、他の投資家が303億円(約25%)を出資した。その資金でクリスタルを買収したが、クリスタルのオーナーに渡った買収資金は500億円。差額の680億円は「他の投資家」の手に渡った。出資分を差し引くと383億円の儲け。濡れ手に粟の巨利を手にした。
 383億円はどこへ消えたのか。この投資ファンドに群がった投資家グループ、そして投資ファンドに出資した闇の勢力に捜査のメスが入ろうとしている。


国税がまず切り込む

 深い闇がつきまとう、GWGによるクリスタルの買収劇に、まず切り込んだのが東京国税局。08年7月23日の新聞各紙は、GWGがクリスタルの買収を巡り、東京国税局から約10億円の所得隠しを指摘されていたと報じた。クリスタルのオーナーに支払った「退職慰労金」のうち約10億円について、創業者への「口止め料」で、経費とは認められないと判断されたという。

 クリスタルのオーナー、林純一氏が、売却の際につけた条件が「同業者には売らないこと」。GWGは、クリスタルのオーナーに分からないように、2つの投資ファンドを使ってクリスタルを買収した。同業者のGWGが真の買収者だと知った林オーナーは激怒。それを鎮めるために、GWGは07年に林オーナーに「退職慰労金」名目で約30億円を支払うことで和解。東京国税局は約30億円は退職慰労金としては高額過ぎ、うち約10億円は林オーナーへの口止め料であると判断した。

 正々堂々としたM&Aであれば、口止め料を払う必要はない。退職慰労金名目で、口止め料を支払ったことは、GWGの折口雅博・前会長(47)自身が、クリスタル買収に疚しさを感じていたからだ。GWGの所得隠しは、国税がまず「口止め料」を突破口に、クリスタル買収の不透明な資金の流れに切り込んだことを意味している。

 続いて、08年10月17日、日本経済新聞は、買収に関与した公認会計士が脱税した疑いが強まったとし、東京国税局が所得税法違反(脱税)容疑で強制捜査(査察)に乗り出したと報じた。(つづく)

http://www.data-max.co.jp/2009/01/post_4386.html





暴かれるか「コリンシアンパートナーズ」の闇(下)
東京レポート2009年1月29日 08:54
仕組んだ公認会計士の周辺

 日経記事には、この公認会計士の名前は伏されているが、この人物は投資ファンド「コリンシアンパートナーズ」(07年7月に解散)の元代表取締役の中澤秀夫氏(51)である。中澤氏は大阪に公認会計士事務所を置き、東京でもファンド関連事務所をもち、業績不振企業の資金調達に関わる会計士として知られている。

 同ファンドの、もう1人の代表取締役が鬼頭和孝氏(34)。慶應大学卒業後、大手監査法人に就職。鬼頭氏が中澤氏と知り合ったのは、鬼頭氏が大手監査法人を辞め、中澤氏が籍を置いている監査法人に転職した時とされている。

 M&A(合併・買収)に精通した中澤・鬼頭の両氏が、クリスタル買収のスキームを描くわけだが、もう1人、重要な人物がいる。格闘家である。若い頃、戦後最大の経済事件と呼ばれたイトマン事件で暗躍した許永中・受刑者のボディーカードを務めていた

 この格闘家は、広島県呉市出身。20歳のころから港湾荷役などの人材派遣をやっていた。そのさばきのうまさと度胸のよさが気に入れられてクリスタルの林オーナーに可愛がられて、関西で仕事をするようになった。

 そもそもGWGによるクリスタル買収は、林オーナーの意向を受けた格闘家が、格闘技団体代表に相談して始まった。売却の意向を聞きつけた中澤・鬼頭両氏が、専門知識を生かして買収のスキームを立案。買収の受け皿としたのが、コリンシアンパートナーズ。格闘技団体代表を通じてGWGの折口雅博会長に買収話が持ち込まれた。GWGは格闘技団体が主催する選手権の協賛企業として親交があった。

 クリスタル買収で、コリンシアンファンドに出資した「他の投資家」は383億円ボロ儲けした。このうちの約180億円を運営したコリンシアンパートナーズが受け取り、約200億円を格闘家・格闘技団体らが分け合った。

 彼らが単独で出資したわけではない。303億円を出資した複数の投資家がいる。出資者には闇の勢力の名が取り沙汰されている。闇に消えたカネを巡って、国税と東京地検は大掛かりな脱税やマネーロンダリングを想定しているのである。


トランスデジタル事件に登場

 ファンドを運営した中澤・鬼頭両氏は、出資者から受け取った報酬で懐具合は潤った。鬼頭氏は、TD投資事業組合を自前で運営するようになる。この投資事業組合が買収したのが、08年9月1日に民事再生法を申請したジャスダック上場のシステム開発会社、トランスデジタル(東京・千代田区)。資金調達直後に倒産したため、調達したはずの31億円はどこへ消えたのかとの疑惑を招いた。
 TD投資事業組合が約20億円の資金を投じてトランス社の筆頭株主として登場するのは08年3月。TD投資事業組合は、取締役と執行役員を派遣して経営権を掌握。小切手を乱発し、その乱発した小切手の決済のために、MSワラントを発行。調達した31億円は、高利資金の返済に消えた。一般投資家から資金を巻き上げて荒稼ぎする。そのシナリオを描いたのが、TD投資事業組合の鬼頭氏だ。
 TD投資事業組合には、名うての事件師たちが出資した。こうした魑魅魍魎が群がり、食い潰された結果がトランス社の倒産劇であった。
 彼らが手がけたのは、クリスタルやトランス社だけではない。大証2部上場の住宅会社、千年の杜(現・東邦グローバルアソシエイツ、東京・港区)や大証ヘラクレス上場の青果卸会社、ビービネット(大阪市)などの上場企業の資金調達や経営に関与している。
 こうしたグレー人種が勢揃いしたのがコリンシアンパートナーズであった。捜査当局は、その出資者にまで切り込んでいくのか。これが最大の焦点だ。

【日下淳】

 http://www.data-max.co.jp/2009/01/post_4387.html