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2013/07/09

【福島第1原発汚染水】観測用井戸の地下水から検出された放射性セシウム濃度が急上昇

福島第1原発、地下水のセシウム濃度が急上昇 

3日で90倍 2013/7/9付



 東京電力は9日、福島第1原子力発電所の原子炉建屋の海側に掘った観測用の井戸で8日に採取した地下水から放射性セシウム137が1リットル当たり1万8千ベクレル検出されたと発表した。同じ場所で5日に採取したときの約90倍の濃度に達した。井戸で確認された放射性セシウムの値としては過去最高。付近の地下水からは6月以降、高濃度の放射性物質が相次ぎ検出されており、海への流出が心配されている。

 今回、放射性セシウムが見つかったのは、原子炉2号機の隣にあるタービン建屋の海側で、岸壁から25メートルの地点に掘った井戸。別の放射性物質であるセシウム134も1リットル当たり9千ベクレル検出され、セシウム137同様5日に比べ濃度は約90倍に上昇していた。

 同じ井戸では5日、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質の濃度が1リットル当たり90万ベクレル検出されており、付近の地下は高濃度に汚染されているとみられる。

 井戸の近くには事故直後の2011年4月、高濃度の汚染水が海に流出するもととなった作業用の穴がある。このときに地中に漏れ出た汚染水が周囲に残っていると東電はみており、観測用の井戸を掘って広がりを調べていた。

 井戸付近では海に向かって地下水が流れている。東電は放射性物質の海への流出を防ぐため海側の護岸沿いに薬液を染み込ませて固め、地下に壁をつくる作業を始めている。作業は今月末には終わる予定だ。









http://mainichi.jp/graph/2013/07/11/20130711k0000m040055000c/001.html







井戸のセシウム 3日で90倍

7月9日 18時16分

東京電力福島第一原子力発電所で、観測用に掘られた井戸の地下水から検出された放射性物質のセシウムの濃度が、3日間でおよそ90倍に増えていることが分かりました。
セシウムは土に吸着されやすく、東京電力は、これまで地下水へは流れにくいと説明しており、濃度が上昇した原因を調べることにしています。

福島第一原発では、ことし5月以降、海に近い観測用の井戸の水から高い濃度の放射性物質が検出され、監視を強めるため、2号機の海側に新たに掘られた井戸で、8日採取した水で放射性セシウムの濃度が3日前に比べて、およそ90倍に増えていることが分かりました。

この井戸は、事故直後のおととし4月に、海に汚染水が漏れ出した場所から近く、東京電力は、その際にしみこんだ水に含まれていた放射性物質が検出された可能性があるとしています。

これまでは同時に測っていた土に吸着しやすい性質がある放射性セシウムの濃度が低く、当時の汚染水が地中を移動する間にセシウムが土に吸着したと考えられるということです。

その放射性セシウムの濃度が上昇したことについて、東京電力は「原因は分からない」として、測定した地下水にセシウムを含む井戸の周辺の泥などが混じった可能性も考えられるとして再び井戸の水を測定して、原因を調べることにしています。

一方、海への流出については、「海水の放射性セシウムの濃度に大きな変化がない」としていますが、「現時点では判断できない」としています。

東京電力は、流出を防ぐため、きのうから井戸に近い護岸に薬剤を入れて固める工事を始めるとともに、観測用の井戸を増やして、監視を強化することにしています。

【5月から井戸の水に変化】
2号機の海側にある観測用の井戸の水に変化が現れたのは、ことし5月です。

地下水の動きを監視するため、海から25メートルの所に掘られたこの井戸の水で、放射性物質のストロンチウムとトリチウムの濃度が5月以降、高くなっていたのです。

これまでの最大の値は、トリチウムが1リットル当たり50万ベクレル。

ストロンチウムが1リットル当たり1000ベクレル。

国の海への排出基準に比べて、トリチウムがおよそ8倍、ストロンチウムがおよそ30倍に当たる値でした。

これについて東京電力は、事故直後のおととし4月、2号機の海側で高濃度の汚染水が海に流れ出しており、そのとき土にしみ込んだ水に含まれていた放射性物質である可能性が高いと説明しました。同時に測っていた土に吸着しやすい性質がある放射性セシウムの濃度が低かったことなどが理由でした。

汚染水が地中を移動する間にセシウムが土に吸着し、濃度が下がったと考えれば、つじつまが合うというのです。

データの変化は、原発の専用港で採取した海水にも現れました。

1号機の海側にある取水口付近で5月以降、トリチウムの濃度が上昇したのです。

ことし4月までの1年ほどは、1リットル当たり100ベクレル程度で推移していたのが、その後上昇に転じ、今月3日には1リットル当たり2300ベクレルと、4月の20倍以上になりました。

東京電力は監視を強化するため、この井戸を取り巻くように東西南北、4つの井戸を新たに掘り、原発専用の港で行っている海水調査のポイントも増やしました。

今回放射性セシウムの濃度が、3日間でおよそ90倍上昇したのは、新たに掘られた井戸の1つで、おととし汚染水が海に流出した場所の最も近くにあります。

土に吸着されやすいため、検出されにくくなったと考えていたセシウムの濃度の上昇は、当時の汚染水流出だけでは説明がつかず、東京電力は原因は特定できないとしています。
また、近くの海水の放射性セシウムの濃度に大きな変化がないことから、海への影響は判断できないとしています。


専門家「何重にも対策をとるべきだ」

地下水に詳しい産業技術総合研究所の丸井敦尚総括研究主幹は、これまでの東京電力の説明などから2つの原因を指摘しました。

1つは、周辺の土などに付着している放射性セシウムが井戸に混入し、地下水のセシウム濃度が上昇した可能性です。

もう1つは、原子炉建屋などから新たに汚染水が漏れ出している可能性です。

丸井総括研究主幹は新たに汚染水が漏れ出している可能性について、「地下水と共に移動しやすいトリチウムなどに続いて、今回、土に吸着しやすいセシウムが検出されていることは、原子炉建屋などから漏れ出した汚染水が地下水の流れの影響で海側に向かって流れ出している可能性を示している」と指摘し「安全側に立って両方の可能性を考えて対策を立てるべきだと」話しています。

そのうえで、東京電力が行っている海側の護岸の地盤を薬剤で固めて海に漏れ出すのを防ぐ対策について、「護岸の地盤だけでなく、原子炉を囲むように海側に鋼鉄製の仕切り板を打ち込み、さらにその隙間に水を通しにくい粘土などを入れるなどして、何重にも対策をとるべきだ」と述べました。
また、東京電力は、高い濃度の放射性物質が検出された井戸の周辺にさらに追加で観測用の井戸を掘って調査を進めていますが、丸井さんは「地下水は横だけでなく、上下にも動くのでさらに敷地内の広い範囲に観測用の井戸を設けるほか、沿岸の海底で地下水が湧き出している場所の調査も行い、敷地周辺の地下水の全体的な流れを把握したうえで、抜本的な対策を立てるべきだ」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130709/k10015924543000.html