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2013/06/13

【元CIA職員 情報活動暴露】 「香港にとどまり米政府と法廷で争う」「自分の運命は香港の裁判所や市民に決めてもらう」

「米国が中国にハッキング」 元CIA職員が暴露 

2013/6/13 11:08
 米国の情報機関が市民の通話記録などをひそかに収集していた問題をメディアに暴露した米中央情報局(CIA)の元職員、エドワード・スノーデン氏は、米国が2009年以降、中国と香港のコンピューターシステムをハッキングの対象としていることを明らかにした。同氏は今後も香港にとどまり、米政府と争う姿勢を示した。


 13日付の香港英字紙、サウス・チャイナ・モーニング・ポストがスノーデン氏に12日に実施した単独インタビューとして伝えた。同紙は本人の希望により、インタビューがどのように行われたかは明らかにできないとしている。

 スノーデン氏は、米国家安全保障局(NSA)が世界に6万1000カ所を超えるハッキングの拠点を持ち、多くが香港と中国本土を標的にしているという。香港では香港中文大学や公務員、企業、学生を対象にしているというが、中国の人民解放軍のシステムが対象になったとの証拠はないとしている。

 「個別のコンピューターをハッキングしなくて済むよう、巨大なルーターのような、ネットワークの基幹となる部分を攻撃する」と具体的な方法についても明かした。

 米国の情報収集活動を暴露したことで、自らの安全については「全く安心できない」と不安な心情も明かした。一方で「香港の司法を信頼しているので、ここにとどまり米国政府と法廷で争う」とも語った。

 今後は香港政府が米政府との間で交わしている犯罪人の身柄引き渡し協定の適用が大きな焦点となる。同氏は「米国政府は私を強制送還するよう香港政府を責めている」と信頼できる情報筋から12日に聞いたとしている。

 香港政府トップの梁振英(C・Y・リョン)行政長官は訪問先のニューヨークで11日午後(日本時間12日)に開いた記者会見で、米政府からのスノーデン氏引き渡しの打診の有無を含め「個別の案件にはコメントできない」との立場を繰り返した。(香港=川瀬憲司)






香港行政長官:スノーデン氏引き渡し問題は法律に基づき対処 

6月13日(ブルームバーグ):香港の梁振英行政長官は、米政府による個人情報の秘密監視プログラムを暴露したエドワード・スノーデン氏の引き渡しを米当局が要請する場合には、香港の法律制度に基づいて対処する考えを明らかにした。スノーデン氏は国家安全保障局(NSA)の請負業者の社員として働いていた。

梁長官は12日にニューヨークでブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、「個々のケースについてコメントできない」と述べ、「われわれの法律に従って対処する」と語った。

米司法省が訴追の可能性を探る中、スノーデン氏は香港から引き渡し要請と闘う考えを表明している。12日付の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに掲載されたインタビューで、同氏は犯罪行為には一切関与していないと言明し、「私は裏切り者でもヒーローでもない。1人の米国人だ」と語った。同紙によると、スノーデン氏は香港のホテルを今月10日にチェックアウトした後に秘密の場所でインタビューに応じた。

スノーデン氏が訴追される場合、米国は香港当局に相当な理由を提示する必要がある。1996年の条約の一環として米国務省はその後、香港当局に正式な引き渡し要請を行い、香港当局がその是非を判断する。






CIA元職員の個人情報収集暴露で米 中国側との接点に関心

2013年6月14日(金)08:14
 【ワシントン=佐々木類】米国家安全保障局(NSA)が通話記録や電子メールなどの情報を収集していた問題で、告発した米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏(29)は中国・香港に滞在していた。問題が表面化したのは7、8日の米中首脳会談の直前で、元職員は会談終了翌日に突然、告発者としてメディアの前に現れた。米政府が中国など世界でコンピューターをハッキングしているとも述べており、中国側との接点をめぐり米国内で関心を呼んでいる。

 13日付の香港紙、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)によると、スノーデン氏は同紙に、米政府が2009年から中国本土や香港でハッキングしていると述べた。NSAは世界中で6万1千件以上のハッキング作戦を行い、数百件は中国本土や香港が対象だとしている。

 米政府当局者は12日、司法省がスノーデン氏の刑事訴追準備を進めていると明かした。米国と香港の間には犯罪人引き渡し協定があり、身柄を香港から戻す手続きなどを急いでいるもようだ。

 同氏は「犯罪を暴くために香港にとどまり、米政府と闘う。自分の運命は香港の裁判所や市民に決めてもらう」と語っていた。

 元CIA高官のボブ・ベアー氏は米CNNに、「スノーデン氏の滞在先が中国情報機関が牛耳る香港である点が問題だ」と指摘し、「この問題が発覚したことで、オバマ政権は大恥をかかされた」と語った。大統領が中国のサイバー攻撃を批判しても、「米国も同じことをしている」と反論される懸念があるからだ。

 アレグザンダーNSA局長は12日、米上院歳出委員会公聴会で、「数十件のテロ攻撃を防ぐのに役立った」と情報収集の正当性を強調。スノーデン氏の告発により、米国の対テロ能力が大きく損なわれたと非難した。

【用語解説】NSAの情報収集問題

 NSAなどがテロ捜査のため、通話履歴のほか、米インターネット大手9社のサーバーに接続して電子メールや利用履歴などの個人情報を収集していた問題。米中首脳会談直前の6日に米紙ワシントン・ポスト(電子版)と英紙ガーディアン(同)が報道。両紙は9日、CIAの元職員、エドワード・スノーデン氏が情報提供者だと伝えた。







勇気ある告発者の暗い未来 ネット監視暴露元CIA、身柄引き渡し必至

配信元:
2013/06/11 06:13更新

米国家安全保障局(NSA)がテロ対策として通話記録やネット上の個人情報を大量に収集しているとスクープした英紙ガーディアンと米紙ワシントン・ポストは6月9日、情報源が米中央情報局(CIA)の元職員でコンピューター技術者のエドワード・スノーデン氏(29)であると明かした。本人の要請に応じて実名報道に踏み切った。香港のホテルに滞在中のスノーデン氏は「自由の破壊が許せなかった」と、告発理由を説明。アイスランドへの亡命を希望している。だが、米司法省は重大な機密漏洩(ろうえい)事件として捜査に乗り出しており、身柄が米国に引き渡され、厳罰を科される可能性がある。

 ■人権破壊と政府批判

 「大規模な監視システムを極秘裏に構築し、世界中の人々のプライバシーやネットの自由、そして基本的人権を破壊するのが許せなかった」

 スノーデン氏はガーディアンが公開したインタビュー映像で米政府を激しく批判した。

 暴露されたのは暗号名で「PRISM(プリズム)」と呼ばれる監視システム。アップルやフェイスブックなどIT9社のサーバーから個人情報を直接入手していたとされる。

 「放置すれば世界中の人々のすべての会話や行動の把握に乗り出すだろう」と危機感を持ったスノーデン氏は、勤務していたハワイのNSA施設から関連資料をコピーして持ち出し、先月(5月)20日に香港へと渡った。「一般大衆に対して何が行われているかを知ってもらいたかった」という。

 報道によると、スノーデン氏は南部ノースカロライナ州の出身で、東部メリーランド州の高校でコンピューターを学んだが、成績が悪く卒業できなかった。2003年に米陸軍に入隊し特殊部隊参加の訓練を受けたが、その理由について、「私には人々を抑圧から開放する義務がある。だからイラク戦争で戦いたかったんだ」と話している。

 その後、NSAの警備員などを経て、07年にコンピューターに関する知識を見込まれてCIAに採用され、スイスのジュネーブで技術アシスタントを務めた。09年にCIAを離れたが、民間企業からの出向職員としてNSA関連施設で働いていた。

 ■「不正開示」事件で捜査

 今後について、「表現の自由を信じる国に政治亡命を求めたい」と語っている。

 これに対し、米司法省は声明で、「機密情報へのアクセス権を持つ個人による情報の不正開示」事件として捜査に入ったと表明。これに先立ち、PRISMを管轄するジェームズ・クラッパー国家情報長官は、米NBCニュースに、「わが国の安全保障に甚大な損害を与えた人物は突き止めるべきだ」と、激怒し捜査を求めていた。

 米政府が中国に対し身柄の引き渡しを要求するのは確実。AP通信によると、香港は過去にも身柄引き渡しに応じた前例があり、アイスランドへの亡命は困難との見方を示している。

 米政府は機密漏洩に厳罰で臨む姿勢を強めている。内部告発サイト「ウィキリークス」にアフガン戦争の機密を漏らしたブラッドリー・マニング米陸軍上等兵は、最長154年の禁錮刑が科されるかもしれない裁判にかけられている。サイトの創設者であるジュリアン・アサーンジ容疑者も昨年6月、反米国家エクアドルのロンドン大使館に亡命を求めて逃げ込んだが、そこから出られないまま。

 “勇気ある告発者”に未来はあるのだろうか。