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2012/08/29

南海トラフ巨大地震 最大で32万3000人が死亡 内閣府推計

死者、最大32.3万人=従来想定の13倍に-南海トラフ巨大地震・内閣府推計



 内閣府は29日、南海トラフ巨大地震による人的被害の推計を公表した。東日本大震災と同じマグニチュード9クラスで、これまで想定していた東海、東南海、南海地震の3連動地震より規模が大きな地震が発生した場合、津波に巻き込まれるなどして、最大で32万3000人が死亡するとした。政府の中央防災会議が2003年にまとめた推計では、3連動地震のケースで死者数は最大2万4700人と予想しており、大震災を教訓に最大クラスの地震を想定した結果、推計死者数は従来の13倍に拡大した。

 最悪の死者数が出るとみられるのは、(1)冬の深夜で多くの人が寝静まっている(2)秒速8メートルの風が吹いている(3)東海地方を中心に被害を及ぼすタイプの地震が発生する-などの条件が重なった場合。津波で23万人、建物倒壊で8万2000人、火災で1万人が亡くなる。仮に堤防や水門が地震によって機能しない場合を試算すると、津波による犠牲者はさらに2万3000人増える恐れがある。

 ただ、全員が地震後すぐに避難を開始したり、建物の耐震化率を100%にしたりといった最大限の対策を講じれば、犠牲者は6万1000人にまで抑えられるという。

 家事などで火を使っていることが多い冬の夕方に地震が発生するケースでは、迅速な避難が難しい深夜より死者数は少なくなるが、揺れや火災により最大で238万6000棟が全壊または焼失する。堤防や水門が機能しないと、さらに1万9000棟の被害が増える。(2012/08/29-17:14)

    http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012082900766


南海トラフ地震、死者32万人全壊238万棟か

 東海、東南海、南海地震などが同時発生するマグニチュード(M)9級の「南海トラフ巨大地震」について、国の二つの有識者会議は29日、被害想定などを公表した。

 死者数は最大で32万3000人。そのうち津波による死者は全体の7割の23万人に達する。有識者会議では、迅速な避難により津波の死者は8割減らせるとして、国や自治体に対し避難施設や避難路の確保を図るよう求めている。

 有識者会議は3月に震度分布や津波の高さを公表したが、今回はより精度良く計算し、浸水域も求めた。津波や地震の揺れのパターンを組み合わせ、季節・時間別の被害を想定した。

 死者32万3000人となるのは、在宅者の多い冬の深夜に発生し、東海地方の被害が大きいケース。死者数は東日本大震災の死者・行方不明者(約1万8800人)の17倍で、国の中央防災会議による2003年の三連動地震想定の死者2万5000人の13倍。負傷者は62万3000人、救助が必要になる人は31万1000人と推定された。

 死者数が最も少ないのは、在宅率の低い夏の正午に、四国や九州で被害が大きい地震が起きた場合で、3万2000人。

 一方、建物被害が大きくなるのは火気使用の多い冬の午後6時のケース。最大で238万6000棟が全壊・焼失する。


 有識者会議は、防災対策による軽減効果も試算した。深夜に発生した地震の10分後に7割の人が避難を始め、津波避難ビルに逃げ込めれば、津波による死者数は最大で8割減らせるとしている。住宅の耐震化率が2008年現在の8割から9割に向上すれば、建物倒壊数は約4割減少する。

 浸水域は最大で1015平方キロ・メートルと東日本大震災の1・8倍。津波高は3月の発表と大きく変わらず、最も高いのは高知県土佐清水市、黒潮町の34メートル。

 有識者会議では今秋にも電力や上下水道、交通への影響を含めた経済被害の想定を公表し、冬には対策の全体像をまとめる予定。

 中川防災相は29日の記者会見で、南海トラフ巨大地震対策を進めるための特別措置法の制定を目指す考えを示した。

 今回の発表の詳細な資料は、内閣府防災情報のホームページで閲覧できる。




 ◆南海トラフ巨大地震=静岡県沖から四国、九州沖にかけての浅い海溝(トラフ)沿いで発生する地震の中で、想定されうる最大規模(M9・0~9・1)のもの。国の中央防災会議が2003年に公表した三連動地震(M8・7)に比べて、震源域は2倍。
(2012年8月29日23時11分  読売新聞)




南海トラフ巨大地震被害想定 死者最大32万人超

 東海・東南海・南海地震が連動して起きる、いわゆる「南海トラフ巨大地震」について、国の中央防災会議の対策検討ワーキングチームは8月29日、同地震の被害想定を公表した。建物被害のうち揺れによる全壊数は、最大で震源域が陸側に寄ったケースの134万6000棟。液状化による全壊数は陸側ケースで約13万4000棟。人的被害は最も被害が大きくなる冬・深夜の東海地方が大きく被災するケースで約32万3000人といずれも甚大だ。ワーキングチームはあわせて、防災対策による被害軽減効果も公表。今回の公表を受け、国・自治体などが連携して対策を強化していく。

 南海トラフ巨大地震は、震度7が想定される地域だけでも約0.4万km2、10県151市町村(前回3月31日公表よりも2減)にわたり、震度6弱以上が想定される地域まで広げると約7.1万km2、21府県292市町村にわたる。津波の被害も広範囲で、津波高の平均値が5m以上と想定される市町村数は124市町村、13都県にも及ぶ。

 今回の被害想定の地震動は、モデル検討会で検討された5つの地震動のパターンのうち、「基本ケース」と、揺れによる被害が最大と想定される「陸側ケース」について実施。加えて津波について、同検討会で検討された11ケースのうち、東海・近畿・四国・九州の各地方でそれぞれ大きな被害が想定される4つのケースを組み合わせて被害想定を実施した。
 被害想定は以下のとおり。

東海地方が大きく被災するケース
 全壊・焼失棟数:95万4000~238万2000棟
 死者数:8万~32万3000人

近畿地方が大きく被災するケース
 全壊・焼失棟数:95万1000~237万1000棟
 死者数:5万~27万5000人

四国地方が大きく被災するケース
 全壊・焼失棟数:94万~236万4000棟
 死者数:3万2000~22万6000人

九州地方が大きく被災するケース
 全壊・焼失棟数:96万5000~238万6000棟
 死者数:3万2000~22万9000人

 このほかに、都府県別の被害も公表されている。いずれのケースも死者数は数万人から30万人を超える規模を想定。自然災害による被害としては、とてつもなく甚大なものとなっている。

 死亡の要因で最も大きいとされているのは、津波によるものだが、建物の倒壊による死者数も、最も少ないケースで1万7000人、最も多いケースでは8万2000人と推計されている。

 今回の被害想定の公表では、あわせて防災対策による軽減効果も具体的に示された。例えば、建物の耐震化の推進により、現状79%の耐震化率を100%まで高めると、揺れによる全壊棟数は約62万7000棟(地震動基本ケース・冬・深夜)から約11万8000棟に減り、死者数は約3万8000人(冬・深夜)から約5800人と6分の1にすることができるという。また、家具の転倒や落下防止対策だけでも、実施率を100%まで引き上げることで、現状約3000人(地震動基本ケース・冬・深夜)の死者数を、約900人まで減らすことができるとしている。




冬の深夜・強風下、南海トラフ地震の死者最大32万人に
東海地方の被害が大きいケース



2012/8/29 17:54
 東海沖から日向灘にかけての「南海トラフ」を震源とする巨大地震で、死者が最大32万人に達するとの推計が29日公表された。東日本大震災を大きく上回るとされる被害想定は、「千年に一度」の最大級地震が起きた場合の数字で、次に発生する地震・津波の被害がこうなるというものではない。推計結果を正確に理解したうえで、防災対策を着実に進めることが重要だ。

 被害想定で内閣府は(1)東海、近畿、四国、九州の4地方のいずれの被害が大きい地震か(2)発生場所は陸に近いか遠いか(3)発生時刻(冬の夕方、深夜、夏の正午)(4)風速(平均風速、風速秒速8メートル)(5)早期避難率の高低――で場合分けした96ケースを推計。死者は最も多い場合で32万3千人から最少3万2千人まで大きく変動するが、最少でも東日本大震災を大きく上回るとしている。

 時間帯別で被害が大きくなるのは、冬の深夜に地震が起きた場合。在宅率が高い上、多くの人が就寝していて、避難に移るまでの時間が日中に比べて3倍の15分程度かかるためだ。冬場は気温が低いため、津波から逃れても低体温症などで死亡する人も増える。半面、在宅率の低い夏の昼間の被害は小さくなる。

 通常より強い秒速8メートルの風が吹くと、延焼が進み火災の死者が増える。地震のタイプ別では、人口が多い上、津波が短時間で到達する東海地方の被害が大きい地震で被害が拡大する。
 死者が最多の32万3千人になるのは、東海地方の被害が大きい地震が冬の深夜に発生し、強風のケース。内閣府は「津波などで堤防・水門が機能不全になると、さらに2万3千人増える可能性がある」としている。

 死因別では津波が23万人と最多で、全体の71%に達する。次いで建物倒壊が25%の8万2千人、火災は1万人と見込む。

 死者は関東から九州・沖縄まで30都府県で発生するとみられる。内閣府は地域別内訳は「マクロの被害を把握する目的のため」として都府県単位のみ公表し、市町村単位の数値は示していない。

 各都府県の死者が最大になる地震は、地方ごとに異なる。最も多くなるのは、東海地方が大きく被災する地震ケースの静岡県で、10万9千人の見込み。このうち87%の9万5千人が津波によるとしている。東京都内の死者は1500人と見込まれるが、いずれも島しょ部の津波によるという。

 これに次いで和歌山県は、近畿地方が大きく被災する地震で最大死者8万人に達する。

 このほか、それぞれ異なるケースの地震で、高知県は最大4万9千人、三重県は同4万3千人、宮崎県は同4万2千人の死者になるとした。

 四国の愛媛県や香川県は建物倒壊による死者が半数近くにのぼり、他の地方より高い。東海地方などに比べて建物の耐震化が遅れていることが一因とみられる。

 内閣府は、負傷者は最大62万3千人と推計。救助が必要な人は、建物に閉じ込められるなど揺れによる被害で最大31万1千人、津波被害で同3万6千人と試算している。津波による要救助者は海水浴客がいる夏の正午に最多となる県もある。

 建物の被害が大きくなるのは冬の夕方に地震が発生した場合。台所や暖房器具などで火を使っている家が多く、火災で焼失する建物が増えるためだ。死者数は深夜に発生した地震で最多となり、被害が最大になる地震の発生時間帯が異なる。

 陸に近い領域で地震が起き、強い風が吹いていると、被害はさらに拡大。最多になるのは九州地方が大きく被災する地震のケースで、全壊・焼失は238万6千棟に達する。次いで東海地方が大きく被災する地震の238万2千棟。堤防や水門が機能不全になると、さらに増える。建物の被害は福井県や鳥取県など日本海側にも及ぶ。

 倒壊原因別に被害が最多となるケースをみると、揺れによる全壊は134万6千棟と半数以上を占める。愛知県と静岡県で20万棟を超え、高知、三重、愛媛の各県も10万棟を大きく上回る。火災による焼失は75万棟前後で、家屋が密集する大阪府が26万棟で全国最多。

 津波の被害は最も多い場合で15万4千棟。都府県別の被害が最大になる地震はそれぞれ異なるが、高知県は最大4万9千棟、和歌山県は同4万8千棟が全壊すると見込まれる。このほか2万棟以上が全壊する可能性があるのは静岡、三重、大分、宮崎の各県だ。

 液状化によっても最大13万4千棟が全壊するとしている。神奈川県で1千100棟のほか、東京都1千棟、埼玉県700棟など関東地方でも被害が広がるとみられる。

 一方、強い地震の領域がより海側にあり、冬の深夜に発生する最も被害が少ないケースでは、いずれの地方が大きく被災する地震も全壊・焼失は95万棟前後としている。