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2012/04/08

宮城県牡鹿半島沖で巨大地震で積もったと考えられるタービダイト(乱泥流堆積物)を4層確認=日独の共同研究チーム

日本海溝:巨大4地震の痕跡 日独チームが1万年分調査
 毎日新聞 2012年04月08日 10時27分(最終更新 04月08日 10時50分)

東日本大震災の震源域で海底調査をしていた日独の共同研究チームが、日本海溝の海底から過去1万年分とみられる堆積(たいせき)物を採取し、4回の巨大地震の痕跡と考えられる層を発見した。独側責任者のブレーメン大のジェラルド・ウェファー教授らが7日、毎日新聞の取材に明らかにした。日本を襲った複数の巨大地震の痕跡が海底で確認されたのは初めてという。




研究チームは東日本大震災の発生メカニズムを解明するため、ドイツ側の呼びかけを受け、ドイツの海洋調査船「ゾンネ号」で調査をした。
ウェファー教授によると、太平洋プレートが北米プレートの下に潜り込む日本海溝沿いで、地震による海底の地形変化などを調べるため堆積物を採取した。水深約7700メートルの海底15カ所で長さ10メートルの円柱状の機器を打ち込み、過去約1万年とみられる深さ10メートル分を引き上げた。
このうち宮城県牡鹿半島沖の南北65キロの間で採取した3本で、巨大地震で積もったと考えられるタービダイト(乱泥流堆積物)を4層確認。最上部が東日本大震災のものとみられ、2番目の層は火山灰層のすぐ上にあった。ウェファー教授とともに取材に答えたチューリヒ大学のミヒャエル・ストラッサー教授は「2番目のタービダイトは1000年ほど前の堆積で、文献などから(東北沿岸に大津波を起こした)貞観(じょうがん)地震(869年)のものとの仮説が立てられる」と語る。【福井聡】


【ことば】タービダイト
大地震などにより海底の斜面が崩落し、海底がかく乱するなどして砂や泥と海水が混合した「乱泥流」によりできた密度の高い層。








産業技術総合研究所 地質調査総合センター


堆積岩のでき方



1) 粒子の運搬と堆積
堆積岩のもととなるのは、一般には砂や泥などの砕屑粒子です。これら砕屑粒子の起源は、特に標高の高い山岳地域で多く生産・供給されます。 
よく地球は水の惑星と言われますが、砕屑粒子の多くも水によって運ばれます。河川の運搬できる砕屑粒子のサイズは、流れの強さで決まります。 山岳地域の速い流れは礫や砂を十分運べますし、平地の緩やかな流れは通常は細粒な砂や泥しか運べません。 
このため、供給源からの距離と堆積物中の粒子のサイズにははっきりした関係があります。近い山麓にできる扇状地の堆積物は粗粒な礫や砂などからなり、河川や海岸では砂や泥の割合が増え、大陸棚から深海平坦面にかけて更に細粒な泥の量が多くなります。








2) タービダイト
日本のように雨の多い地域では年に数回程度、洪水が発生します。洪水のときにできるような濁った、すなわち土砂を多量に含んだ流れを混濁流 (乱泥流) と呼び、普通の流れよりも大きなエネルギーを持っています。これによって一度堆積した粒子も再び巻き上げられ、川から海へ、更に浅い海から深海へと運ばれます。そして混濁流から堆積した堆積物を タービダイト と呼びます。混濁流は土砂を巻き上げ、細粒な粒子ほどゆっくり沈むために、タービダイトは普通下部ほど粗粒、上部ほど細粒になります。 
タービダイトが海溝に達すると、その先は比高数1000mの登り斜面になっているため、運ばれた堆積物は大洋底側へはほとんど届かず、海溝に沿って流れるだけとなります。こうして、陸からの堆積物は海溝を埋め続けることになります。