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2012/04/03

福島第一原発2号機、「抑制室が地震で損傷していると仮定すれば、抑制室の線量が下がった理由を説明できる」=元日本原子力研究開発機構上級研究主席


東日本大震災:福島第1原発事故 2号機の格納容器は地震で損傷?

  東京電力福島第1原発事故をめぐり、2号機の原子炉格納容器が地震で壊れたかどうかが論争になっている。2号機からは事故5日目の昨年3月15日朝に大量の放射性物質が放出され、福島県飯舘村などに落ちて土壌汚染が広がった可能性が高い。原因解明は再発防止に欠かせない。先月に福井市で開かれた日本原子力学会での議論を紹介する。


 ◇原子力学会で議論

  原子炉は、原子炉圧力容器を収めた格納容器と、その下部のドーナツ状で水が蓄えられた「圧力抑制室」で構成される。高圧になった格納容器や圧力容器の内部の蒸気を抑制室に逃がして冷やし、圧力を下げる。
東電は事故当初、燃料が空だきのために900度以上になって溶融し、水素が発生。水素爆発によって抑制室が損傷したとみていた。昨年3月15日午前6時過ぎ、付近で爆発音が聞こえ、抑制室の圧力計は0気圧を計測。直後から敷地周辺の放射線量が急に上昇したからだ。

 ◇東電が見解を修正

  しかし、東電は昨年12月、地震計データから損傷時に伴う揺れは4号機の水素爆発に由来すると修正。抑制室の圧力計は「故障の可能性が高い」と判断した。高温に弱い格納容器上部の一部が溶けて損傷し、放射性物質が漏れたと推測した。実際、3月15日午前7時20分に7.3気圧だった格納容器内の圧力は約4時間で1.5気圧に降下。敷地周辺の放射線量も上昇していた。

  これに対し、元日本原子力研究開発機構上級研究主席の田辺文也さん(66)は「格納容器上部の接続部の溶融だけでは説明できない現象がある」と主張。その象徴が、炉心溶融後の15日午前1時過ぎからの5時間で、圧力容器から格納容器に溶け落ちた燃料の影響で、放射線量が2.1倍に上昇した一方で、抑制室では逆に線量は4割下がっていることだ。

  そこで、田辺さんは「抑制室が地震で損傷していると仮定すれば、抑制室の線量が下がった理由を説明できる」と解説する。抑制室には水が蓄えられているので、格納容器のようには高温になりにくく溶融による損傷は考えにくいという。

  東電は、抑制室の状況について、「軽微な損傷はあるかもしれないが、大規模に壊れていたら、15日朝まで7.3気圧を保てない」としている。【岡田英、奥山智己】