食品に含まれる放射性セシウムの暫定規制値(一キログラム当たり五〇〇ベクレル)が四月一日から同一〇〇ベクレルの新基準に厳格化されるのに合わせ、県と茨城沿海地区漁業協同組合連合会(漁連)は、同五〇ベクレル以上を検出した魚種も出荷・販売を自粛する全国初の取り組みを始めた。本県では当面、ヒラメなど十八種が自粛対象になる。自粛発表から半月のうちに対象が十二種追加されるなど先行きは不透明で、東京電力福島第一原発事故から一年たった今も漁業者の苦境は変わらない。 (永山陽平)
三月に入って同一〇〇ベクレルを超えたのは三十日現在、スズキなど十種で、県の要請により県内全域の海域で出荷・販売を自粛する。
五〇~一〇〇ベクレルは八種。この八種については、五〇ベクレル以上を採取した海域(北部、県央部、南部で三区分)のみ自粛する。一カ月で最低三度検査し、いずれも数値を下回ったら自粛解除する。
漁連が自粛措置を発表した十五日時点では五〇ベクレル以上を検出したのは六魚種だけだった。しかし、新たな検査でマコガレイなど十二種が追加された。このうち、出荷額が全国四位(二〇一〇年)の高級魚で「県の魚」であるヒラメからは二十二日、一三七ベクレルが検出されて、大津漁協(北茨城市)の村山譲専務理事は「茨城を代表する魚だけに痛い」と唇をかむ。
ヒラメやマコガレイは放射性物質の蓄積が指摘される海底に潜む「底魚」。海面近くを泳ぐ「浮魚」より値が高い傾向にある。イカ、タコ、エビ、カニ類は放射性物質を取り込みにくいことが国際原子力機関(IAEA)の調査で分かっており、同漁協は現在、ヤリイカを多く水揚げする。村山専務理事は「捕る魚がないのなら、こうしたものを狙うしかない」と力説する。
身内の漁師から反対も出た中で乗り出した漁連の自粛措置。漁連の小野勲会長は「こうした取り組みを続ければ、安全だと消費者に分かってもらえるはず」と願いを込める。