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2012/03/03

大きな災害や悲劇の後の幽霊話はいたって一般的で、社会的な「癒しのプロセス」の一形態だという

東日本大震災から1年、石巻で語られる「幽霊」の噂
2012年03月03日 12:49 発信地:石巻/宮城
【3月3日 AFP】東日本大震災による大津波からまもなく1年。大きな悲劇を乗り越えようと懸命な宮城県石巻市で「幽霊」が出るという噂が飛び交っている。


 前年3月に亡くなった人たちのさまよう霊が不幸をもたらすことを恐れて、修復工事が中断してしまったという現場がある。半分だけ修復されたスーパーマーケットを指して、あべ・さとしさん(64)は語る。「工事の人が具合悪くなったって聞いたよ。そこらへん中で死んでんだもの。そういう話は一杯あるよ」

 石巻の一部では、漁港としてにぎわっていた震災前の活気を取り戻しつつある場所もある。住宅が再建され、商売が再開され、子どもたちが学校へ戻って来ている。しかし東北で犠牲となった約1万9000人のうち、およそ5分の1は石巻の住民だった。元通りになると思っている人はほとんどいない。

 ささき・しんいちさんは3月11日の記憶は決して消えず、その消えることのない記憶が「亡霊」を生んでいると語る。「あの日のことはふと何度も思い出すんです。まして、どこで誰が亡くなっているか知っていれば、突然なことなんで、まだうろうろさ迷っているって思うこともあるかもね。自分は幽霊なんて信じるほうではないんだけど、こういう風に噂がでるのは分かる」

 あるタクシーの運転手は、大津波ですべてが流されてしまったところには止まりたくないとAFPの取材に語った。乗り込んできた客が幽霊だったら・・・と思うからだという。石巻に住むある女性は「幽霊の列」の噂を聞いたことがある。生きていた最後の瞬間の不毛な努力をなぞるかのように、幽霊たちは丘へ向かって殺到し、津波から何度も何度も逃げようとするのだという。

 カウンセラーや学者たちは、大きな災害や悲劇の後の幽霊話はいたって一般的で、社会的な「癒しのプロセス」の一形態だという。

 文化人類学者の船曳建夫(Takeo Funabiki)氏は、こういった類の話が流布するのは「当然だ」と考える。
「人間は本来『死』を受け入れられないものなのです。まして突然の、異常な形での死――年をとってベッドの上で死ぬという形でない死――は昔から人間にとって最も受け入れがたい。その社会で納得できなくてたまっているものがどう表現されるかというと、噂話であったり、まつりの中で供養するなどということになります。社会的に共有できるものに変えるということがポイントです」

 最愛の人を失った人々の一部は、魂を慰めるために神職を招いたり、お盆に霊を迎える準備などをした。

 しかし、信心によっても喪失を乗り越えがたい人もいる。日本カウンセラー学院(Academy of Counselors Japan)の心理カウンセラー、池田宏治(Koji Ikeda)氏は「被災地の人は恐怖、不安、悲しみ、帰ってきて欲しいという気持ちなど色々な感情をもっている。心の中で処理しきれない非常に多くの感情が霊の投影という形で現れたと考えることができます」と語る。「(被災後の)色々な感情は溜め込んでいられなく、表現していかないといけない。現実に適応していくために、前に進むために必要だから、起きていることでしょう」

 石巻で実際に幽霊を見たと表だって話す人はほとんどいないが、荒涼とした道をさまよう幽霊を受け入れる気持ちがある人は多い。すぎもと・ゆうこさんは、自分は特別迷信深いわけではないし、幽霊を見たこともないという。けれど「普通に生活してた人が突然亡くなったので、受け入れたくないと思っているんでしょう。出ない方がおかしいと思います」と語った。

(c)AFP/Miwa Suzuki






被災地で幽霊騒動 ゼネコン社員「彼らは冗談で言っていない」
NEWS ポストセブン 2011年12月24日(土)7時5分配信

3・11から9ヶ月以上が経ち、東北地方は本格的な冬を迎えようとしている。そんな中、復旧作業にあたる作業員たちの一部で「背筋の凍る」噂が広がっている。

「夜になると、出るんですよ、幽霊が」。こう囁くのは岩手県沿岸部でがれき撤去に従事する作業員の男性。この男性によると、深夜から未明にかけて海沿いを歩く複数の人間の姿が見られるという。作業時間は過ぎているし、現場はがれきだけで人らしきものは一切ない。また、別の作業員も同様の証言をする。

「最初は『窃盗団か何かが悪事を働きにきたのだろう』と仲間と一緒にその姿を追ったのですが、海岸に着くと誰もいない。恐くなってすぐ宿舎に戻りましたよ」

このため「早く帰りたい」といった声もあがり、現場の士気に影響を与えているという。  岩手県災害対策本部資料(12月9日現在)によると、東日本大震災での死者は計4665人、行方不明者は計1385人。陸前高田市や大槌町など、沿岸部に被害が集中している。ウワサが広がっているのは、主に沿岸部である。

現場で指揮を執っているゼネコン社員は「最初は、冗談にしても程があると怒りましたが、かなりの人間が目撃したと話していることから、彼らは冗談で言っているのではないと分かりました。ご存知の通り、ただでさえ復旧が遅れているのに、幽霊騒動で作業員の士気が低下しているのであれば何か手を打たないといけない」と頭を抱える。

あくまでウワサであり、真偽のほどは定かではない。ただ、一定の数の作業員たちが「幽霊騒動」に巻き込まれていたのでは、復旧へ与える影響が懸念される。