2012年 03月 6日 00:52 JST
[東京 5日 ロイター] 玄葉光一郎外相は、核開発を続けるイランに対する米国の制裁措
置に関して、イラン産原油の輸入削減を条件に、邦銀を米国防授権法の制裁対象から除外する方向で、今月中には合意できるのではないかとの認識を示した。5日、ロイターのインタビューに述べた。
イラン産原油輸入量の具体的な削減幅についての言及は避けたが、昨年上半期から下半期の減少幅は、過去5年間の平均削減幅を上回る16%減だったことを示し、これを念頭に米国と協議していることを示唆した。
米国防授権法は、核兵器開発疑惑が深まるイランへの圧力強化を狙い、2011年12月31日に成立した米国の国内法。イラン中央銀行と取引のある外国金融機関に対し、米金融機関との取引を禁じることを定めている。適用されれば、経済活動の中心である米市場での事業が大幅に制限されるため、日米間で協議が続いている。
一方、内政面では、野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁の極秘会談の事実について言及は避けたが、「第一党と第二党の党首が会って結論を出してゆく姿を国民に示すことこそ求められている」と語った。
インタビューの概要は以下の通り。
──イラン制裁をめぐる米国の国防授権法の関連で具体的な合意時期は。
「大詰めのところまできているが、まだ最終調整をしている段階だ」
──イラン産原油輸入量の2割減は可能か。具体的な削減幅は。
「イランに対しては、平和的・外交的に解決していかなければならない。その時に大事なのが国際協調。つまり対話と制裁だ。効果的に制裁が行われるための国際協調の観点から、削減していくことにしている。しかし、具体的な数字はマーケットへの影響があるので、日本としては公表しないほうがよいだろうと現時点では考えている」
──日米間で合意しても公表しないということか。
「そういうことも含めて(最終調整中だ)。クリントン米国務長官が(28日の上院で)言及したのは、多分、日量換算の輸入量が昨年上半期から下半期に16%減(上期の日量34万バレル、下期の日量28万7000バレル)となった傾向値を言っていると理解している。過去5年間は、年平均で11%減だった」
──16%減程度になるのか。
「数字は明確に言えない。市場に影響があるし、最終合意しても公表するかどうかもまだ決めていない」
──今月中には合意できるか。
「そういった見通しは立てれるのではないか」
──イランは米国の制裁に対抗してホルムズ海峡封鎖も辞さない構えを表明している。日本経済への影響は。
「日本の石油は約85%がホルムズ海峡を通過している。世界全体では2割だ。液化天然ガス(LNG)も日本全体の約2割がホルムズ海峡を通過する。その意味で、一般論として、仮にホルムズ海峡封鎖となれば、影響が全くないかと言われれば当然ある。ホルムズ海峡封鎖という事態はあってはならない、外交的・平和的に解決させなければならないし、あってはならないことだが、(封鎖は)まずイランにとって得策ではない。イラン経済にとって非常にマイナスだ。仮にそういう措置をとっても長期戦にはならないと思う」
──政府の対応は。
「日本の国内備蓄は約167日分。LNGも(民間在庫として)2週間分ある。万が一の事態があっても、日本経済への影響を最小限に食い止めるために、備蓄の放出も含め考えていくことになるだろう」
──日中国交正常化40周年にあたる今年誕生する習近平政権に対する期待と懸念は。
「互いにとって重要な隣国であり、互いにとって重要な二国間関係のひとつであることは間違いない。中国の発展は基本的にチャンスだと私はとらえている。そのために、戦略的互恵、WIN─WINの関係を深化させることが大切だと思う。ただ、懸念材料がないわけではない。国防費の対前年執行額に対する伸びは2ケタ台が続いている。しかも、内訳がよくわからない状況で、その点についてわれわれは留意しなくてはならない」
「他国の脅威にならない平和的発展をするとの理念そのものについては支持する。ただ、具体的行動、実際の行動がどのようになっていくかは注視をしなければならない。人的な信頼関係も含め、この40周年は、互いの関係を強化する機会になる」
──野田首相が昨年12月に訪中した際、早期のFTA協議で合意した。見通しは。
「まだ、FTA協議という状況になっているわけではない。その前に投資協定を結びたい。投資協定はFTA協定のさきがけになるものだと位置づけしている。日本の企業が中国に投資をするとき常に不安がつきまとうという側面がある。その懸念が払しょくされるような投資協定が結ばれ、その後FTAと思っている」
──協定締結の時期は。
「もう少しのところまで来ている。日中韓、そして日中の間でこうした投資環境に関する協定が結ばれることに関して悲観していない」
「今年中に作らなくてはいけない。今年のできるだけ早い段階に(作らなければいけない)」
──東日本大震災後、日本は内向きになり、物事が決められない状況が続いているとの批判がある。
「国内の今の最大の課題は、社会保障と税の一体改革。行政改革や政治改革と一体でできるかどうかということだとおもう。(そのためには)第一党と第二党が胸襟を開いて、話しあわないといけない。話し合って、議論して、結論得るという風にしないといけない」
「政治家は不人気なことであっても、将来世代、次世代に豊かさを引き継ぐためにやらなくてはならないことはやり抜くということが必要で、与党、野党を超えて結論出すということが今一番求められている」
──近い将来可能か。
「(野田首相と谷垣自民党総裁の)極秘会談について、2人は否定しているので、会ってないだろうと思っているが、会ったっていいと思う。第一党と第二党の党首が会って話し合いをしたらいい。話し合って、結論を出してゆく姿を国民に示すことこそ、求められていると私は思う」
──東日本大震災から1年が経とうとしている今、日本から世界に向けたメッセージは。
「2つ。ひとつは、復旧・復興はサプライチェーンが全面的に回復したこともあり、着実に進んでいる。とりわけ、この復興を日本の再生モデルにしたい。再生可能エネルギー、革新的な医療・介護ロボットの導入など、復興特区を活用し、日本再生の目に見えるモデル、その取り組みを世界に発信すること。もうひとつは、被災地が一番苦しんでいるのが風評被害。科学的な合理性、科学的な根拠で判断して、ビジネス、観光、輸入してもらいたい」
(ロイターニュース 吉川裕子 リンダ・シーグ 編集:伊賀大記)