ローマ法王がキューバ入り=14年ぶりの訪問
【サンパウロ時事】ローマ法王ベネディクト16世は26日、メキシコから次の訪問地の社会主義国キューバ入りした。法王のキューバ訪問は、1998年のヨハネ・パウロ2世(当時)以来14年ぶり。
東部サンティアゴデクーバの空港でラウル・カストロ国家評議会議長の出迎えを受けたベネディクト16世は、14年前の前法王の訪問について「キューバ人の魂に消すことのできない足跡を残した」と述懐。法王は今回のキューバ訪問を前に、「マルクス主義は現実に合わない」と同国に体制変革を促す発言をしており、27日に首都ハバナで行うラウル議長との会談で、人権問題などでどこまで踏み込んで言及するかが焦点。(2012/03/27-09:02)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012032700135
法王 14年ぶりキューバ訪問
3月27日 11時52分
ローマ法王ベネディクト16世は、社会主義国のキューバをローマ法王として14年ぶりに訪れ、訪問前に「マルクス主義は現実に対応していない」と述べた法王が、キューバの政治体制についてどのような発言をするか注目されます。
ローマ法王ベネディクト16世は、26日、キューバ東部の都市サンティアゴデクーバに到着し、空港でラウル・カストロ国家評議会議長らの出迎えを受けました。
ベネディクト16世がキューバを訪れるのは初めてで、ローマ法王としてはヨハネ・パウロ2世以来14年ぶりとなります。
到着後のあいさつで、ベネディクト16世は「どこに住んでいても、また受刑者でも、すべてのキューバ人の理にかなった希望と正当な欲求は理解できる」と述べました。
これは、キューバ革命後に国外に亡命したキューバ人との関係改善や、反体制活動を理由に収監されている人たちの釈放を進めるようキューバ政府に暗に求めたものとみられています。
法王はキューバ訪問の直前、「マルクス主義は現実に対応していない」と述べており、滞在中に予定されているラウル・カストロ氏との会談や首都ハバナでのミサなどで、キューバの政治体制についてどのような発言をするかに注目が集まっています。
ローマ法王:14年ぶりキューバ訪問 弾圧越え、進む「雪解け」 政治犯釈放、教会に仲介期待
【メキシコ市・國枝すみれ】世界約12億人のカトリック教徒の頂点に立つローマ法王ベネディクト16世(84)が26日、キューバ東部サンティアゴデクーバに到着し、3日間の訪問を開始した。法王のキューバ訪問は98年の前法王ヨハネ・パウロ2世以来、14年ぶり。
カトリック教会は59年のキューバ革命で反革命派を支持したことから、長く弾圧を受けてきたが、政府は前法王の訪問を機にクリスマスを「休日」と定めるなど、近年は「雪解け」が進んでいる。
ラウル・カストロ国家評議会議長らに出迎えられた法王は空港で「キューバ政府と教会の関係には、さらなる発展の余地がある」とあいさつ。教会の権利拡大のほか、在米の亡命キューバ人との和解や政治犯の釈放などを暗に求めた。議長は「キューバ憲法は信教の自由を保障している」と述べ、教会と対立してきたキューバの変化を印象づけた。
法王はキューバ入りに先立ち、経済改革を進めながらも社会主義体制を堅持するキューバを念頭に「マルクス主義が現実的でないことは明らか」と述べたが、キューバ到着後には「あるべき価値観を欠いた人間を作る」と資本主義も批判した。
キューバでは革命以前、人口の8割がカトリック教徒だったが、教会統計によると、90年には41・2%にまで低下。その後、回復傾向にあり、2010年には59・7%まで戻った。改革を進めるキューバ政府は最近、政治犯の釈放問題で教会の仲介を利用している。法王の訪問で信教の自由がさらに拡大すれば、教会の「隠れ信者」が立場を公にする可能性がある。
ハバナ在住のカトリック教徒の女性(35)は「母から『信者であることは秘密にするように』と言われて育った。今回の法王訪問では記者会見の様子がテレビで放映されるなど、98年の前回訪問時と比べて隔世の感がある」と驚きを口にした。
毎日新聞 2012年3月27日 東京夕刊
ローマ法王がキューバ訪問、開かれた社会の構築求める
2012年 3月 27日 17:20 JST
【サンティアゴデクーバ(キューバ)】ローマ法王ベネディクト16世は26日、訪問先のキューバで、同国が教会と新たな協力関係を築き、より開かれた社会を構築するよう訴えた。法王はメキシコ訪問を終え、当地に到着した。
ローマ法王によるキューバ訪問はこれで2回目。キューバ政府とローマ法王庁(バチカン)が数十年来の敵対関係にあった14年前、当時の法王ヨハネ・パウロ2世が同国を訪れフィデル・カストロ国家評議会議長(当時)と会談した。両者はその後、緊張緩和の時代に入る。
ベネディクト16世はラウル・カストロ議長に出迎えられた。同議長は2008年、健康上の問題で退任した兄のフィデル・カストロ前議長に代わり正式に議長に就任。以来、教会の役割拡大を認め、より多くの市民に小規模事業立ち上げを許可するなど、慎重に改革路線を進めてきた。
法王は国旗を振る市民などから温かい歓迎を受けたが、キューバの反体制派は式典出席を阻止されたと語った。週末に取り締まりが始まり、少なくとも50人が拘束されているという。
一方、キューバ政府の報道官は、政治的な理由による拘束はしていないと述べた。
バチカンは26日、拘束についてコメントしておらず、法王も言及していない。
法王はキューバ到着に際し、教会と国の関係改善に触れた上で、「さらに前進でき、前進しなくてはならない分野が多く残されたままだ。宗教が社会活動で求められている不可欠の公的な貢献については特にそうである」と付け加えた。
一方、ラウル・カストロ議長は当地の空港で歓迎の言葉を述べ、キューバが宗教の自由を尊重すると強調した。また、長期に及んでいる米国の経済制裁を非難した。