ページ

2012/02/12

福島第1原発2号機、90度近くまで上昇 東電=「温度計が故障している可能性もある」

2号機、一時90度近くに=東電「再臨界ない」、注水増-温度計故障か・福島第1
 東京電力は12日、福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部に3カ所ある温度計のうち、突出して高い数字を示している温度計が同日午後、新保安規定の運転制限基準の80度を超えて上昇したと発表した。昨年12月に政府と東電が「冷温停止状態」を宣言して以降初めて。11日夜に冷却水の注入量を毎時1トン増やしたのに、この温度計は70度台から90度近くまで変動が激しくなっており、東電は故障の可能性が高いとみている。残りの温度計は35度程度で安定している。

 東電は12日未明に原子炉内のガスを分析。キセノン135が検出限界未満であることから、溶融燃料で核分裂が連鎖する再臨界が起きていないと判断したが、念のため再臨界を防ぐホウ酸水を注入した。冷却水は毎時3.3トン増やし、過去最大レベルの同17.4トンにした。(2012/02/12-19:36)

 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012021200066




2号機 温度計の1つ80度超示す
2月12日 21時24分






2号機 温度計の1つ80度超示す



 東京電力福島第一原子力発電所2号機で、原子炉の一部の温度計の値が上昇している問題で、12日午後2時すぎ、東京電力が定めた規定の80度を初めて超えました。
80度は冷温停止状態を維持できているかどうか判断する保安上の目安の温度で、東京電力は、国に報告する一方、温度計が故障している可能性もあるとして、注水量を増やしながら、慎重に監視を続けるとしています。

 福島第一原発2号機では、先月下旬から原子炉の底にある温度計の1つの値が上昇し、今月7日に原子炉への注水量を増やした結果、一時低下傾向を示しましたが、11日、再び上昇しました。

このため東京電力は、11日午後11時前に、注水量を1時間当たりおよそ1トン増やし、14.6トンにしましたが、その後も温度の上昇傾向は続き、午後2時20分ごろ、初めて80度を超え、82度になりました。

政府と東京電力では、去年12月、原子炉の温度が100度以下に下がったとして、「冷温停止状態」を宣言したあと、新たな規定を設け、温度計の誤差が最大で20度あることを考慮して、原子炉の温度を80度以下に維持することを定めています。

80度は、冷温停止状態を維持できているかどうか判断する保安上の目安の温度で、東京電力は「運転上の制限を逸脱した」として、国の原子力安全・保安院に報告しました。

一方で、ほかの2つの温度計の値が35度程度まで下がっていることや、原子炉周辺の気体の調査から、核分裂が連続して起きる臨界が起きていないことなどから、東京電力は、冷温停止状態を維持できているとするとともに、上昇傾向を示している温度計が故障している可能性があるという見方を示しました。

東京電力では、注水量を1時間当たり17.4トンに増やして、慎重に監視を続けることにしていますが、原子炉の内部の様子を十分把握できていない状態が続いています。

これについて、国の原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監は、「80度を示した温度計は大きく変動を繰り返していて、異常があると考えられる。原子炉そのものは、ほかの場所でも複数の温度計で測っていて、温度は高くなく、今の段階で『冷温停止状態』に問題ないと考えている」と話しています。

原子力安全・保安院は、東京電力に対し、原子炉の温度を把握する方法について、80度を超える数値を示した温度計を監視の対象から外すことも含めて検討し、報告するよう指示したほか、専門家からも意見を聞くことにしています。

一方、福島県は、東京電力が定めた規定の80度を超えたことを受けて、東京電力に12日午後、しばらくの間1時間ごとに原子炉の温度に関する情報を速やかに提供するよう申し入れました。

そのうえで、原子炉内の状況を把握し、外部へ影響が起きないように全力で取り組むことや、今後発生するおそれのあるリスクについて、県民に迅速で分かりやすい情報提供を行うことを求めました。

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120212/t10015966221000.html





炉内の実態なおつかめず 福島2号機一時80度超
東電は説明不足
 2012/2/12 21:16
 東京電力福島第1原子力発電所2号機の原子炉圧力容器の底部温度が12日午後にセ氏80度を超えたことは、原子炉内の実態が把握できないまま、何とか温度を保とうとしてきた不安定な現状を改めて浮き彫りにした。東電は「温度計が故障した可能性もある」と示唆するが、詳細な根拠は示していない。昨年11月に原子炉内で再臨界が起きたのではないかと疑わせた「再臨界騒動」の時と同じく説明不足の印象は否めない。

 昨年末に冷温停止状態を宣言した際の条件は、圧力容器底部温度が100度以下で、新たな放射性物質の外部放出も抑えられている安定状態であることだった。東電は温度計の誤差を20度とみて、80度以下で管理する計画を国に報告していた。

 東電は80度以上に温度が上がったことで「運転上の制限を逸脱した」と経済産業省原子力安全・保安院に報告した。冷温停止状態の100度以下という条件は、誤差を考えると満たしていない可能性もある。

 ただ東電の危機感は薄いようにみえる。12日の記者会見で松本純一原子力・立地本部長代理は「温度計の故障の可能性がある」と言明したが、故障の詳しい証拠は示さなかった。温度計の故障とわかれば「運転上の制限の逸脱」から元に戻す可能性も示唆した。

 圧力容器底部の温度計は「熱電対」と呼ぶ金属製のセンサーで温度を測っている。近くに取り付けた2つの温度計は35度程度で大きな変動はなく、高い値を示しているのは今回の温度計だけだ。

 東電は12日午後に原子炉への注水量を増やし毎時17.4トンにしたが、大きな低下にはつながっていない。このため消去法で温度計の故障を疑っているようだ。保安院の森山善範・原子力災害対策監も12日の記者会見で「温度計に異常がある可能性は高い」と認め、「安定な状態は維持されている」と話した。

 ただ東電の説明不足は否めない。これまで温度計の値を原子炉の安定の目安としてきたにもかかわらず、温度が80度を超えると急に温度計の故障の可能性を主張するのは唐突な印象を受ける。

 昨年11月に2号機の原子炉内から放射性キセノンが検出された際にも、東電は事前に検出を予想しておらず、再臨界の有無を判断するキセノン濃度の基準を試算していなかった。このため東電は急な検出に戸惑い、午前3時半すぎに「核分裂反応が発生している可能性が否定できない」と公表。臨界を防ぐホウ酸水を原子炉に急きょ注入したが、翌日には再臨界の可能性を否定する結果になった。

 当時と変わらず、原子炉圧力容器の内部はブラックボックスのまま。放射線量が高くてロボットも近づけず、溶け落ちた核燃料がどこにあるかも分かっていない。

 保安院は12日、原子炉の状態把握のあり方を至急検討するよう東電に指示した。異常が起きてから検討を始めるのではなく、リスクを踏まえて計画を立てておくべきだが、まだその状態には至っていないようだ。

(科学技術部 川合智之)






東京電力
福島第一原子力発電所の状況について




福島第一原子力発電所2号機 原子炉圧力容器下部(底部ヘッド上部)温度(参考値)平成24年2月13日
ファイル : 2u_temp2.pdf