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2012/01/03

内閣府原子力安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員だった89人のうち、24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていた。

班目委員長らに寄付金 就任前 原子力業界が数百万円
2012年1月3日 朝刊

 原発の設置許可申請などについて、安全審査のダブルチェックとして二次審査を担当する原子力安全委員会の五人の委員のうち、班目(まだらめ)春樹委員長と代谷(しろや)誠治委員が、就任前の三~四年間に、原子力関連企業や業界団体から三百十万~四百万円の寄付を受けていたことが二日、分かった。

 安全委の下部組織の専門審査会で、非常勤で審査を担当する複数の委員も、審査対象企業などから寄付を受けていた。いずれも審査の中立性への影響はないとしている。

 班目氏は二〇一〇年四月に東京大教授から安全委の委員長になった。同氏によると、〇九年までの四年間に三菱重工業から計四百万円の寄付を受けた。代谷氏によると、同氏は京都大教授だった〇九年までの三年間に、電力会社などでつくる「日本原子力産業協会」の支部から計三百十万円を受け取った。

 いずれも研究奨励を目的に寄付する「奨学寄付金」。研究費や海外出張の旅費などに使ったという。

 一方、核燃料製造の安全性などを審議する専門審査会の複数の委員も、取材に対し、同じ支部や審査対象の燃料加工会社から、年五十万~百万円近くを数年間受け取っていたと説明。審査会には数十人の委員がおり、寄付を受け取った場合は、その企業の申請に関する審査には加わらない仕組みという。

 班目氏は「審査に影響ないと考えている。議事録なども全て公開し、納得できるかは国民の判断に委ねたい」と話した。






2012年1月1日3時1分
原子力業界が安全委24人に寄付 計8500万円
 東京電力福島第一原子力発電所の事故時、中立的な立場で国や電力事業者を指導する権限を持つ内閣府原子力安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員だった89人のうち、班目(まだらめ)春樹委員長を含む3割近くの24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていた。朝日新聞の調べで分かった。

 うち11人は原発メーカーや、審査対象となる電力会社・核燃料製造会社からも受け取っていた。

 原子力業界では企業と研究者の間で共同・受託研究も多く、資金面で様々なつながりがあるとされる。中でも寄付は使途の報告義務がなく、研究者が扱いやすい金銭支援だ。安全委の委員へのその詳細が明らかになるのは初めて。委員らは影響を否定している。









 朝日新聞は1面のトップで「安全委24人に8500万円 06~10年度寄付 原子力業界から」という見出しで、原子力安全委員会の委員が原子力業界から寄付を受けていた事実を報じた。

 同委員会は、福島第一原発の事故後、組織のあり方が問われてきたが、内閣府に所属し本来は中立的立ち場で行政機関や電力事業者を指導する役割を担う。

 記事は朝日新聞の独自調査の結果として、この安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員89人のうち、班目春樹委員長を含む24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受け、このうち11人は原発メーカーや審査対象となる電力会社などからも受け取っていたことを明らかにしている。

 寄付をした企業、業界団体を見ると、安全委員会の審査対象企業としては北海道電力ほか数社、原発メーカーでは三菱重工業や日立GEニュークリア・エナジー、このほか社団法人日本原子力産業協会や電力会社、原発メーカーの関連企業などとなっている。

 寄付は研究助成の名目で行われるが使途についての報告義務はない。寄付する側は、寄付による委員への影響力を否定、また安全委員会事務局では、「審査する事業者と直接的な関係のある委員は審査メンバーにならないようにしてきた」と説明している。

 一方寄付を受けた委員も寄付の審査への影響を否定しているが、取材に対して「多忙につき答えられない」など、事の重要性を理解していないと思われても仕方のない委員もいる。

 こうした事実について、記事は「原発審査 曇る中立性」(社会面)と書いているが、同じような疑念を抱く人は少なくないはずだ。個々の原発審査とは関係がなくても原発計画そのものについての議論と個々の事例は切り離すことはできない点からも関連ありと考えられるのは言うまでもない。