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2012/01/14

捜査幹部は「指紋は少なすぎ、不自然な点がある」と話す。 捜査当局は既に斎藤以外の支援者グループの存在を掴んでいる?

オウム事件:平田容疑者、居室に指紋数個のみ
 元オウム真理教幹部の平田信(まこと)容疑者(46)をかくまったとして逮捕された元信者、斎藤明美容疑者(49)の東大阪市の自宅マンションから、平田容疑者の指紋が数個しか採取されなかったことが捜査関係者への取材で分かった。警視庁は出頭前に指紋を拭き取った可能性もあるとみている。

 ◇出頭前に拭き取りか
 捜査関係者によると、2人が住んでいたのは、斎藤容疑者の勤務先の整骨院が借り上げた1Kの部屋。警視庁が斎藤容疑者を逮捕した直後の10日夜に家宅捜索すると、室内は片付けられていた。採取した指紋のうち、平田容疑者のものと確認できたのは数個だけだったという。

 斎藤容疑者は「平田容疑者はほとんど家にいた」と供述しているという。捜査幹部は「指紋は少なすぎ、不自然な点がある」と話す。斎藤容疑者の弁護人の滝本太郎弁護士は、斎藤容疑者が「マンションのオーナーに迷惑をかけてしまうから」と部屋を片付けたことを明らかにしているが、掃除機を使っただけで拭き掃除はしておらず、指紋は拭き取っていないとしている。【内橋寿明、小泉大士、喜浦遊】

毎日新聞 2012年1月14日 15時01分(最終更新 1月14日 15時43分)






殺人集団オウム逃亡犯「男と女の話」にしてしまったワイドショー
2012/1/14 12:00
<今週のワイドショー通信簿>オウムの特別手配犯・平田信の出頭が「逃亡生活疲れ」からでないことは明らかだろう。17年間の逃亡の間にオウムの獄中幹部や残党との連絡はなかったのか、一連の殺人やサリン事件、警察庁長官狙撃にどこまで関わっていたのか、ロシアでの射撃訓練は何を目的としたものだったのかなど、解明されなければならない謎は多い。平田の出頭はその手がかりの1つになるはずだ。

ところが、平田と逃げ続けていた元信徒の斎藤明美が自首した途端、ワイドショーの興味は「男と女の愛の逃避行」のような様相になってしまった。「逃亡17年支えは命令?愛情?」(テレビ朝日系「モーニングバード」)、「オウム2人厳しかった逃亡生活」(フジテレビ系「とくダネ!」)、「だめんずに引っかかったかわいそうな女?」(TBS系「朝ズバッ!」)、「毎日カラコロ弁当かノリ弁『逃亡オウム2人』異様生活」(日本テレビ系「スッキリ!!」)という具合だ。コメンテーターたちの興味も、もっぱら2人の暮らしぶりに移ってしまった。

しかし、平田と斎藤の出頭・自首は周到に計画されたものだ。警察庁長官狙撃事件の時効成立を待ち、目黒公証役場事務長・仮谷清志さん拉致では「車を運転しただけ」と殺害への関わりを否定、麻原彰晃を非難することでオウムとの断絶=反省を主張する。しかし、自分が出頭することで麻原の死刑執行が先延ばしされることは承知しているはずである。

また、斎藤も平田の出頭後、外部との接触の痕跡を消すかのように身辺整理をした。捜査当局に任意提出した800万円の現金を「被害弁済にあててほしい」としているのも、裁判での情状を計算してのことだろう。平田が髪を染め、眉まで剃ってなぜ昨年中に警視庁・大崎署に出頭しようと焦ったのか。出頭するなら潜伏先近くの警察署でも良かったはずである。そこにもナゾがある。

平田も斎藤も、オウムがサリン製造・ばらまきなどの無差別殺人に走り出した時に教団内にいた「共犯者」だ。出頭や自首でさら葬り去ろうとしている闇は何なのか。あれこれ「憶測」交えて取り上げるのが、ワイドショーの役目ではないのか。(テレビウォッチ編集部)







平田信容疑者の逃亡支援者 逮捕された斎藤明美以外にも存在
2012.01.14 07:00
2011年12月31日に出頭し、16年間以上の逃亡生活にピリオドを打った元オウム真理教の幹部・平田信容疑者(46)。また、平田をかくまった元信者の斎藤明美容疑者(49)も1月10日に犯人秘匿容疑で逮捕された。

斎藤は平田を支えていたのは自分だけだと供述しているが、捜査当局は既に斎藤以外の支援者グループの存在を掴んでいる。

「不眠症に陥り、精神状態が不安定だった平田に睡眠導入剤や抗鬱剤を渡したのは奈良県に住む40代の独身女性だと見られる。彼女は現役の看護師なので、そういった薬を簡単に手に入れられる。関西には、彼女を中心に平田の逃亡生活を支援するグループが存在していた。斎藤はそのグループのメンバーの一人にすぎない」(捜査関係者)

グループの拠点が奈良にあったことを考えれば、斎藤が「私の知る限り、平田はほとんど部屋を出なかった」と供述しているにもかかわらず、平田の目撃情報が奈良県で複数、寄せられていることも不思議ではなくなる。平田が「他の人に迷惑がかかる」と頑なにこの17年間の逃亡の詳細を語らないのもまた、グループを守るためではないのか。

さらにその看護師は、精神的に参った平田のために、“金魚療法”をしたこともあったという。前出・捜査関係者が続ける。

「彼女は金魚の名産地に住んでいたこともあり、平田のケアのために、潜伏先の部屋にわざわざ水槽と金魚を数匹持ち込んだことがあった。『水槽を泳ぐ金魚を眺めたり、餌をやって世話でもさせれば、少しは心が癒やされて気も鎮まるだろう』と、支援者たちが事前に相談した上での“治療”だったようだ」

捜査当局は現在、このグループの全容解明に力を入れているというが、どんな集団だと見られているのか。

「逮捕される危険も顧みずに特別手配の平田を支援する可能性など、教団関係者以外にはありえない。彼らは表面上はオウムを脱会したものの、心中では麻原への信仰・忠誠を捨てていない『はぐれ残党』だろう。狂信的な信者ほど、結束は非常に強い。彼らの麻原への信奉は、事件後もなお健在というより、むしろ神格化が進んで強固になってきている」(別の捜査関係者)

残る特別手配犯の高橋克也、菊地直子の両容疑者は、いまだ姿を現わさない。彼らが身を潜めるに十分なほど、いまだ「はぐれ残党」たちの絆は強いのか。

※週刊ポスト2012年1月27日号