2012年1月12日 夕刊
オウム真理教元幹部平田信容疑者(46)=目黒公証役場事務長監禁致死事件で逮捕=をかくまっていたとして逮捕された教団元信者斎藤明美容疑者(49)が、勤務先の大阪府東大阪市の整骨院に偽名の履歴書を提出して採用されていたことが、捜査関係者への取材で分かった。
警視庁などによると、斎藤容疑者は、整骨院で名乗っていた「吉川祥子」名義の健康保険証を持っていた。整骨院は、斎藤容疑者の採用時や健康保険証を申請する際に、住民票や運転免許証などで斎藤容疑者の身元を確認しなかったという。全国健康保険協会が二〇〇〇年に発行した。
申請書を審査する日本年金機構によると、「保険料の支払い能力があるかなど事業主については調査するが、虚偽申告の場合は罰則があるので、加入者の詳しい書類を求めていない」という。斎藤容疑者は保険証を携帯電話の購入やレンタルビデオ店の会員登録、通院に使っていた。斎藤容疑者は、滝本太郎弁護士に「驚いたことに、もらえちゃったんです」と話したという。
警視庁や滝本弁護士によると、一九九五年三月の地下鉄サリン事件後、教団に強制捜査が入ると、平田容疑者が斎藤容疑者に「二人で出よう」と逃走を持ち掛けたという。大阪を潜伏先に選んだことについて「都会の雑踏に紛れた方がいい」と平田容疑者から提案があった。斎藤容疑者は自首する直前、福島県の実家の両親に「長い間迷惑をかけてごめんなさい」と謝罪の電話を入れたという。
自首前の勤務先、オウムと知らず 東大阪市の整骨院
オウム真理教元幹部平田信容疑者(46)をかくまったとして逮捕された元信者斎藤明美容疑者(49)が自首直前まで勤務していた大阪府東大阪市の整骨院の院長が12日午前、報道陣の取材に応じ「(斎藤容疑者が)オウムの(元)信者とは知らなかった」と話した。
院長の男性によると、斎藤容疑者はアルバイトとして働き始めた。「吉川祥子」名義の健康保険証については「普通に用紙に書いて申請した。手続き上の問題はないんじゃないか」と話した。保険証の取得日は「2000年8月」と記載されている。
支給される昼食代の金額内で、斎藤容疑者は2人分の弁当を購入していた。
2012/01/12 11:22 【共同通信】
平田・斎藤容疑者 潜伏先は整骨院の寮
2012年1月11日 夕刊
オウム真理教元幹部平田信容疑者(46)=目黒公証役場事務長監禁致死事件で逮捕=をかくまったとして、犯人蔵匿容疑で逮捕された教団元信者斎藤明美容疑者(49)が、自首する直前まで二人で潜伏していた大阪府東大阪市内の賃貸マンションは、斎藤容疑者が勤める整骨院の寮であることが、捜査関係者への取材で分かった。
二人が約十五年前、東北地方から大阪府に移った当時も、斎藤容疑者が同府内で別の寮付きの仕事に就いていたことも判明。警視庁は、斎藤容疑者が住宅契約で身元が発覚するのを恐れ、本人確認の緩やかな住み込みの仕事を選び、平田容疑者の逃亡生活を支えたとみている。
平田容疑者の弁護人の滝本太郎弁護士によると、東北地方での逃亡生活で斎藤容疑者は料亭や旅館、飲食店などで働いていた。警視庁はこれらも偽名で住み込みの仕事だったとみている。
斎藤容疑者らが暮らした東大阪市内のビデオ店の男性従業員によると、斎藤容疑者は昨年十一月、偽名の「吉川祥子」名義の健康保険証を示し、店の会員になっていた。整骨院の職員の保険証で、実年齢よりも六歳若い誕生日が記されていた。申込書には携帯電話や自宅の電話番号も記入してあった。最後の来店は先月十日で、これまでにDVD二十八本を借りたという。
警視庁は十日夜、斎藤容疑者の自宅と職場を家宅捜索した。自宅に布団は一組しかなく、平田容疑者が使っていたとみられる靴や服など男性用の持ち物はなく、自首する前に処分したとみている。
日本年金機構「改めて身分証の提示は求めない」
大阪では斎藤が「吉川祥子」の偽名で勤めはじめた接骨院が借りていた1Kのマンションに住み、保証人の必要もなかった。また、整骨院の院長が手続きをして吉川祥子名義の健康保険証もできた。偽名健康保険証について、整骨院の院長は「法人として普通の申請手続きをし、問題はなかった」という。日本年金機構でも「事業主が本人確認を行ったうえで申請しているので、改めて身分証の提示は求めない」という。
この保険証でレンタルビデオ店の会員登録をしたり、ネット料金などの引き落としのための銀行口座をつくり、出頭時には数万円の残高があったという。「真面目でしたね。不審な行動もあまりなかった。整骨院が昼食代を支給していたので、領収書をもらってきてと言ってあったが、そんなに高い額でなかったので1人分と思いあまり気にしていなかった」(院長)
用意周到すぎる出頭・自首
斎藤は平田が出頭する昨年(2011年)の大みそか直前に、平田の太い眉毛を細く剃り落とした。警視庁に出頭する前に他の警察に捕まらないようにするためだったらしい。
斎藤は平田を見送った後、身の回りの片づけを始める。段ボール箱やスーツケースに入れた2人の衣類など615点、マンションに保管していたすべて新札の現金800万円を警視庁に任意提出している。整骨院には「親元に帰る」ことを告げ、9日夕に担当の弁護士に会い、10日午前3時ごろ弁護士の車に同乗して自首した。車の中で、弁護士の携帯電話を借りて両親に電話をかけた。留守電だったため、「長い間申し訳ありません。これから自首します」と吹き込んだという。
司会の加藤浩次はあまりの用意周到さに「でき過ぎていない!?」
キャスターのテリ―伊藤「固まっていますね」
元裁判官の八代英輝(国際弁護士)は、偽名でも取得可能な健康保険証について次のような疑問を呈した。
「結局、会社ぐるみで偽の健康保険証という、本人確認書類ができてしまうということですよね。運転免許証と同じ効力を健康保険証に認めるのはどうかということですね」