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2011/12/16

日本政府の「冷温停止状態」宣言に海外メディアは懐疑的

冷温停止宣言:海外メディアは厳しい見方
 東京電力福島第1原発の原子炉が「冷温停止状態」になったと日本政府が宣言したことについて、国際原子力機関(IAEA)や米国などは評価する声明を発表した。その一方、海外メディアは「原発の安全が確保されたわけではない」などと宣言を疑問視し、日本の原発事故対応に厳しい目を向けた。


 IAEAは16日、宣言を受け、事故収束に向けた工程表のステップ2を日本政府と東電が「計画通り年内に終えた」と評価した。

 来日中のナイズ米国務副長官(総務担当)も「復興へのステップの一つ。非常に喜ばしい」と歓迎し、次の課題となる周辺地域の除染に米国企業が参加を望んでいると述べた。

 これに対して、英BBC、米CNNが野田佳彦首相の会見を生中継するなど関心の高さを示した海外メディアでは、懐疑的な見方が主流となった。

 AFP通信は冷温停止状態について「安全が確保されたという意味ではない」と解説し、ルモンド紙(電子版)は「原子炉の解体、環境の回復には相当の時間を要する」と長期的な取り組みの必要性を強調した。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)も宣言について「年末までに冷却システムを回復させるとの日本政府の約束を反映させたにすぎず、原子炉が依然として抱える危険から注意をそらせる恐れがある」と指摘した。

 福島第1原発事故を受けて「脱原発」を決めたドイツでは、DPA通信が「フクシマの原発の廃虚が制御された」と速報したが、「まだ安全な状態には程遠い。これで冷温停止を宣言するのは意図的なウソと紙一重。日本政府は国民の判断を誤らせている」と批判するオーストリアの専門家の見方も紹介した。

 韓国の聯合ニュースは「事故の収拾作業が峠を越えたことを内外に示す意図がある」と分析した。

毎日新聞 2011年12月16日 23時36分








「冷温停止状態」宣言に厳しい論調も

 16日に政府が発表した福島第一原発の原子炉の「冷温停止状態」、「事故収束」の宣言について、一部の海外メディアは厳しい論調で伝えています。

 「脱原発」を決めているドイツ。公共放送のZDFはメインニュースで、「“冷温停止”の発表は日本政府のプロパガンダだ」とする専門家のコメントを引用するなどして、溶けた核燃料が今も「高温」を保ち、不安定な状況にある可能性を指摘しています。

 また、東京の記者は「土壌も食糧も汚染され、福島の悲劇は終わっていない」と締めくくるなど、日本政府の発表を批判的に伝えています。

 また、ドイツの最も権威ある雑誌「シュピーゲル」のオンライン版は、「溶けた核燃料は高温を保っているはずで、安全な状況とは言い難い」との原子力専門家のコメントを引用し、冷温停止は「ごまかし」で「意図的なウソ」であると厳しく批判しています。

 アメリカの新聞、ニューヨーク・タイムズは、「冷温停止状態では全くない。収束に向かっていると印象づけるために言っているだけだ」という専門家のコメントを引用。安定状態だという政府の発表を多くの専門家は疑っており、事故に対する世論の怒りをなだめるために勝利宣言をしたのではないかと懸念しているとしています。

 また、現在でも多くの住民が避難していることを踏まえ、「福島の住民にとって、危機の終わりにはほど遠い」と指摘。「原発はブラックボックスのようで、中で何が起こっているか実際には分からない」という地元住民の不安の声を掲載しています。

 ワシントンポストも「問題の切迫性が小さくなっただけ」とした上で、「いまだに放射性物質が海に流出することもあり、一時しのぎの冷却装置は地震に脆弱だ」と厳しい論評となっています。

 フランス公共ラジオは、「発電所の事故そのものは収束に至った」との野田総理の言葉を引用した上で、「しかし、何も終わってはいない。周辺地域の除染作業には40年かかるとの専門家の予測もあり、原子炉6基の解体にも最大500億ドル(およそ3兆9千億円)の費用がかかる可能性がある」と今後の課題を強調しました。

 イギリスBBCは、福島第一原発で今月4日に汚染水が海に流出したことを例にあげ、「事故後の修理は一時しのぎのもので、予兆なく破綻する可能性がある」との専門家の声を伝える一方で、「当初の惨状からすれば、過去数か月間の進展は目覚ましいものがある」と一定の評価を与える専門家の見方も紹介しています。(17日05:33)




「原発事故収束」、福島・海外から批判



 16日に政府が行った東京電力・福島第一原発の「事故収束」宣言。しかし、地元・福島からは強い疑問の声が。海外メディアも厳しい論調で伝えています。

 16日に政府が行った東京電力・福島第一原発の「事故収束」宣言。

 「原子炉が冷温停止状態に達し、発電所の事故そのものは収束に至った」(野田佳彦総理大臣 16日)

 しかし、地元・福島ではこの「事故収束宣言」に強い疑問の声が上がっています。

 「収束はしていないでしょう。まだまだこれからですよね」
 「冷温停止状態で第2ステップだなんて言ったって、現実に、なんでじゃあ放射能下がらないの」(仮設住宅に避難している人)

【福島市では】

 「忘れられてしまいますよね。これからもずっと子どもたちのためにも福島のためにも続けてほしいことなので、ここで終わったとは言ってほしくない」

 「残念ながら、1号機から4号機まで、炉心、燃料、燃料プールの問題が完全にコントロールされていると言えるのかどうか。完全に収束したと宣言するのはまだまだ早計ではないか」(一部が警戒区域に入っている南相馬市 桜井勝延市長)

 また、海外のメディアも今回の「事故収束宣言」について厳しい論調で伝えています。ドイツの公共放送「ZDF」は「冷温停止の発表は日本政府のプロパガンダだ」とする専門家のコメントを紹介し、「溶けた核燃料が今も高い温度を保ち、不安定な状態にある可能性がある」と指摘しています。また、アメリカの新聞「ニューヨーク・タイムズ」は「安定状態だという日本政府の発表を多くの専門家は疑っており、世論の怒りをなだめるために勝利宣言をしたのではないかと懸念している」と伝えました。

 「なんとか年内の冷温停止状態の達成、そして事故の収束を達成することができたことは、極めて厳しい状況の中で日本が瀬戸際で踏みとどまったという意味で、きょう(16日)は大きな日ではないかと感じている」(細野豪志原発担当大臣)

 細野大臣は17日、福島第一原発を視察しましたが、東京電力によりますと、15日、復旧にあたっている作業員52人がおう吐や発熱、下痢などの症状を訴え、一部の患者からはノロウイルスが検出されたということです。この影響で、高濃度汚染水を処理する際に出る廃棄物を貯蔵するためのタンクの建設が中断しています。(17日17:32)








炉内安定には疑問 宣言時期、政治的思惑も
2011/12/16 23:28
 政府の原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)は16日、東京電力福島第1原子力発電所1~3号機が「冷温停止状態」になり事故が収束したと判断した。ただ通常時の原発では「冷温停止」が安定を意味しても、壊れた事故原発には当てはまらない。政府、東電は自ら決めた「冷温停止状態」の条件を満たしただけで、事故収束の宣言には政治的な思惑も見え隠れする。今後30~40年かかる廃炉作業への一里塚にすぎない。

 首相は記者会見で、除染対策で1兆円超の費用を用意すると強調した。除染対策は今年度第3次補正予算と、来年度予算案にまたがって関連費を計上する。予算案を決定する直前とのタイミングも踏まえ、菅政権時から決まっていた「1カ月前倒し」を印象づける狙いがあったとみられる。

 通常時の原発では、原子炉圧力容器の水温がセ氏100度を下回れば、安定した停止状態である冷温停止と判断する。ただ福島第1原発1~3号機では炉心溶融(メルトダウン)が起きて水が漏れ、この定義はそのまま使えない。

 そこで政府、東電は7月に「冷温停止状態」という新たな目標を立てて(1)圧力容器底部温度が100度以下(2)放射性物質の追加放出が年1ミリシーベルト以下――と定義し直した。あくまで原子炉がこれ以上深刻な事態に陥らないと考える目安だ。

 現状では1~3号機の圧力容器底部の温度は38~68度、核燃料が溶け落ちた格納容器の温度も40~68度に低下。放射性物質の放出も年0.1ミリシーベルトとなった。不測の事態に備える計画もまとめ、政府、東電は「冷温停止状態」を達成できたと評価した。

 ただ安定というには確証に乏しい。核燃料は圧力容器から大半が溶け落ちている。11月には放射性キセノンを検出し、核分裂が続く再臨界を疑う騒ぎが起きた。直後に否定したが、いまだ原子炉内の様子がつかめていないことが露呈した。東電の推定では1号機の燃料は全て格納容器に溶け落ちたが、実態解明は数年後とみられる。

 冷温停止状態を続ける設備の安定性も定かではない。大きな地震や津波が再び起きたら、施設や機器が壊れる恐れも残る。仮設防波堤は石を金網に入れて積み上げた簡単な造り。汚染水処理装置など仮設の設備や建屋の耐震性も低い。

 さらに廃炉作業は新たな技術を開発する必要がある。避難区域の見直しや除染も進めなければならない。事故が収束したと言っても「原発事故との闘いが終わったわけではない」(野田首相)というのが実情だ。